グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第163話 宗教部の介入


 ――2100年6月25日09時00分 中東イラク・バスラ
 2003年から始まったイラク戦争が終結後は米軍は2020年に撤退を開始した。 が、25年後の2045年に石油資源が枯渇し始め中東に再び内戦が勃発。 石油関係者を守り、米国の利権を守る為という自由と平等と正義の名の下に再び介入。
 10年間の内戦を終え2055年に新米政権が樹立。 その後は、2080年のビーストが米国本土で暴れる時まではその政権は続く事になった。
 そんな彼らに転機が訪れたのは世界史に残る【群馬独立戦争《グンマワ―》】。 米国第七艦隊及び、月面基地、起動上のコロニ―、情報衛星の消失。 全てが第二次世界大戦時に戻ったのだ。
 中東は基本は反米である。 彼らは米国の圧倒的な情報・軍事力に抑圧されて来た。 それが無くなった彼らは現在は、やりたい放題出来るようになったのだ。
 はずであった。 っという事は彼らはやりたい放題が出来てない無い。 何故なら、米国はイラクにおいては別格の維持管理をしている。
 本国から派遣された人材が統治し、軍や司法も独立している。 昔でいうなら治外法権の租界の様な物。
 「ふぅ、ジョン今日も忙しいな」
 「そうだなアダム」
 軽口を叩きながら兵士の彼らは陽気に機関銃を発射する。 機関銃が向けられているのは中東によくあるレンガと砂で造られた建物。
 ダダダダ。 パンパン。
 連続音と単発音が交差し砂埃が舞い上がる。 絶え間無い銃撃音がしていると突如としてブーンっと車の音がする。
 瓦礫を飛び越え廃車となった車を越えてくるのは日本製のピックアップトラック。 元は米国から現地政府に治安維持用に渡した物が反政府組織に鹵獲された物である。
 「カミカゼアタックだ!!RPG」 「後方確認、オーケー狙い撃つぜ」
 ズドンという音と共にRPGの先端のミサイルが飛んでいく。 吸い込まれる様にしてトラクターに突き刺さり爆炎が上がる。 ただの爆発では無く、積まれていた爆薬も一緒に優爆し大地にクレ―ターを造る。
 虎の子の自爆用トラックが敵に届く前に爆発し状況を変えられず、敵勢力は撤退を開始。 遠くの方からパンパンっと単発音が遠ざかって行く。
 「「やったぜー」」
 ハイタッチを交わしながらジョンとアダムはタバコに火を着け合う。 土埃が舞い散る中で彼らが吸うタバコは格別の旨さだ。
 はーっつと煙を吐きだしているとジョンは変な物を見つける。 白いフワフワした物が空から舞い降りて来たのだ。
 「なんだこれは」
 「鳥の羽か?さっきの爆発で鳥小屋でも吹き飛んだか?」
 そう言いながらアダムは白い羽を手のひらに乗せた瞬間かれは膝から崩れ落ちた。
 「アダム!だ、大丈夫か?」
 「痛い、痛い痛い痛い痛い言い%&'((()%$#」
 躰中を押さえながらアダムは歯を喰いしばる。 ジョンは急ぎアダムを引きずりながら羽に当たらない様に屋内に入る。
 「毒か?化学兵器なのか?オペレータ」
 「どうしたの?ジャック慌てて」
 「アダムが突然、痛みを訴えて倒れたんだ」
 「心拍、脈拍ともに異常ありね。急いで連れて帰って来て」
 「分かった」
 ジャックはアダムを担ぐと急いで置いてあった装甲車に乗り込む後方に移動を始めた。 彼らが去った後に残された所には、同じように躰を抑え蹲っている民兵達がいる。 民兵達は米兵と違い自主参加という形である為にサポートをする人間などいない。
 そんな痛みに喘ぐ彼らの瞳に映るは・・・。 薄緑ロングに翠色の瞳を持つ美少女。
 「天使・・・だと」
 『うーん、中々、痛風ペインウィンドは過疎地域では使いにくいかな?』
 首を傾げながら背中から生えている羽を撫でる。
 『じゃ、次は疾風シュトルム怒涛ウント‐ドラング
 「な、なにを」
 民兵が声を上げる前に少女の周りから巨大な風の竜巻が発生する。 その竜巻は辺りを巻き込む民兵達も吸いこまれていく。 レンガでできた建物も壊れ吸いこまれていく。
 しばらくして、バスラ全域が巨大な竜巻に呑みこまれていくのだった。

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