グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第162話 グンマーの介入

  ――2100年6月21日08時00分 グンマー校生徒会室
 朝から賢治首席は電子印をペタペタと押していく。 いずれの書類もグンマー校が倉庫から小麦を搬出する許可である。
 「おはよーお疲れー」
 金髪に金色の瞳の美少女、妙義凛が生徒会室に入ってくる。
 『おはよー、凛ちゃんのお陰で大変だよ』
 「でも、けんさま?在庫の良い処理になったでしょ?」
 『そうだね、9割方を吐きだす事に成功したよ』
 グンマー校は中東に台規模な食糧援助を行い実行した。 これにより、倉庫内に溜まっていた大量の小麦を処分する事に成功したのだ。
 『それにしても、凛ちゃん計画から準備まで完璧だね』
 「そうですわ、書記たる者は何時でも準備をしておく必要が有ります」
 嘘である。 凛は最初から中東に食料危機と内戦を起こすつもりでいた。
 何故なら、この頃の世界情勢が日本に向き過ぎている為である。 更にグンマーは魚の目、鷹の目で見られていたら色々とやりにくいのだ。
 一々、事業を展開するたびに特集を組まれる。 その事業に対して自称専門家達がアアデモないこうでも無いという。 それが非常にやっかいなのである。
 小麦が増えすぎている事など凛にとっては、些細なことである。
 全ての火種と感心を中東へ向ける。 それが凛の目的なのである。
 『でも、凛ちゃん。早く内戦終わって平和になると良いね』
 「そうですね、私も中東が平和で成る事を願っています」
 嘘である。 この女、嘘をついているがついては居ない。 この女がいう中東とは、中部・関東の事である。 決して砂漠の中東とは言っていない。
 「で、首席お願いがあります」
 そう言いながら机に腰掛けると賢治の首に両腕を回す。 賢治の頭をたわわに実った果実が挟み込む。
 『何かな?僕に君の心臓の音を聞かせたいとか?』
 「イイエ、我々も介入して宜しいでしょうか?」
 『イヤ、余計な事に首は突っ込まないよ。我々は開放した地域で忙しいのだから』
 「分かりました、首は突っ込まない様に致します」
 この女、また嘘をついている。 首は突っ込まないが足を突っ込む気でいる様だ。 
 「それにしても、中東って不思議ですね」
 『そうだねよ、何の為に戦っているのか分からないもんね』
 「我々の様に自分達の自由と権利を掲げて戦った訳では無いですからね」
 グンマー校は日本政府の行政代執行に抗議して内戦を起こした。 一方、中東は石油が枯渇し互いに残った石油をめぐって争っている。 まだ、互いに分け合えば中東の国民を豊かに出来る量が残っている。
 「人の欲とは切りが無い物です。けんさまは欲が無いから首席なのです」
 『そうかな?僕だって欲くらいあるさ』
 「どんな欲ですか?」
 凛はウキウキと嬉しそうな顔をしながら賢治首席を見つめる。
 『そうだね、みんなが笑顔で暮らせる温かい社会を願っているよ』
 「ハイ、そうですね。けんさまは何時もそういう人でしたものね」
 てっきり、自分が横に居てくれる事でも言うのかと思ったのか肩を落とす。 賢治首席はそういった欲とか配慮は無いのだ。
 「私もけんさまが願う社会の為に頑張ります」
 『ありがとう、宜しくね。おっと、これから経済界の人達と会議だ』
 そういうと賢治首席は椅子から立ち上がり部屋から出て行く。 仕事に出かける夫を笑顔で送る妻の様に凛は手を振る。
 賢治の姿が見えなくなると凛の顔が獰猛な笑みに変わる。
 「さて、宗教《ジ―サス》部さん準備は出来たかな?」
 スマホを取りだしながら声を上げる。 先ほどまでの会話は電話越しの相手に聞かれていた様だ。
 「勿論だとも、我々も我々グンマーが笑顔で暮らせる為に行動を開始するよ」
 「結果を楽しみにしてますよ、天使あんじぇちゃん」
 画面には薄緑ロングに翠色の瞳を持つ美少女が映る。 この時をもって、中東にグンマー校の介入が始まるのであった。

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