グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第152話 停滞する戦線 後編

 ――2100年5月25日10時00分 米国国防総省ペンタゴン 
 先日の汚い爆弾ダ―ディボンブを使われた国防総省ペンタゴンであるが通常業務を行われている。 なぜなら、米国は【テロに屈する事は無い】とアピールする必要があるからである。   っというのは建前であり機能はすでに地下10kmの所に移動されている。
 その地下で国防長官の椅子に座っている白人の若い男がいる。 男の名前はカスケード・ルメイである。 世界有数の民間軍事会社であるジャガー・ノートの元CEOである。 ジャガー・ノートは米軍退職者を雇い各国の紛争やビーストの戦いに介入し活躍する国際企業。 業界内では米軍に次ぐ戦力と言われていた●●●●●
 そう、過去形である。 現在において世界的戦力戦のトップは米軍であり、ニ位はグンマー校と言われている。 10年前から米軍とは殴りあいの喧嘩を中東に南米で行っている。 グンマー校は軍隊は存在せず通りすがりの一般人が行うアルバイトという体をしている。 そういう意味では、民間軍事会社と同じである。
 『グンマー校内において脆弱な部分はあったか?』
 「報告書に書いてある通りです」
 彼の目の前にいる部下はそう答える。
 『これによると特に不満といった不満は無く満足していると書かれている』
 「その通りです!それ以上でも以外でもありません」
 『それでは困るのだよ!』
 ダンとルメイは机を叩く。 世界の組織というものは何れも不満等を多数抱えている。 そういった所から火を付けて自由と平等の名の元に介入するのが彼らの仕事なのだ。 彼の目の前にいるのは、そういった事に長けている諜報員なのだ。
 「あえていえば、彼らの目標は首席を倒す事です」
 『ならば、我々と』
 「自分の手でです、我々の様によってたかって暗殺するのは彼らの信条に反します」
 『ふん、信条ポリシーなど役にたたんよ』
 そう言いながら報告書をグシャグシャと丸めるとゴミ箱に放り投げる。 彼とにしてみれば、信条ポリシーよりも自己実現の為の利益こそ重要なのだ。 つまりは、清濁併せ呑み自分の出すべき結果を出す事が重要と考えているのだ。
 「5年前の首席暗殺未遂により、彼らの討つべき対象は我々になりました」
 『ああ、【我が国とのテロとの戦い】だなアレにはまいったよ』
 「ええ、我々が我々をテロ組織と認定してしまいましたらね」
 首席暗殺未遂事件後の一年後、イスラエルの【ソロモンの盾】が崩壊した。 これにより、米国はイスラエル支援を行ったが同時に国内外で米国人を狙ったテロが多数発生した。 そのテロはやがて米国だけに留まらず各国へ飛び火する事になったのだ。 米国は国連において各国との協調を図る為に【テロとの戦い】の有志連合を募った。
 その時に日本政府とグンマー校を自国側に引き込む為に有志連合に参加を募った。 日本政府は米国のポチである為に直ぐに承諾したがグンマー校は条件付きで参加を認めた。 条件は【テロ組織はグンマー校及び国連が指定した組織】    【指定は最終的かつ不可逆的であるを入れる事】。 っという感じの物であった。
 米国はグンマー校がテロ組織を指定するという点について質問をした。 その時は【我が校は日本政府とは異なる主権を持っている為に主権を確認する為】であると解答された。 米国はグンマー校の【最終的かつ不可逆的であるを入れる事】を入れ無い変わりにそれを認めた。 グンマー校は【敵は最終的に殲滅する意味を持たせる為に必要】と主張した。 が、米国は【それは終わりなき戦いを意味する】と反論しグンマー校は此処のみは受け入れた。
 そして、これらの有志連合の相互参加の調印式が終わった時。 グンマー校の300人委員会により【テロ指定組織】可決された。 同時に世界はグーから殴られた様な衝撃を受けたのだ。
 テロ組織の一番目に【国防総省ペンタゴン、CIA,NSA、海軍、空軍、海兵隊】があったのだ。 理由としては、1年前に民間人をよってたかって襲ったという【人道に対する罪】である。 彼らが混乱している間に更なるボディブローが決まる。
 わずか100名でイタリア・スイスをビーストから解放し、教皇をヴァチカンに戻し独立させたのだ そこで終わる事無く、最後のマウントをばかりに地中海に展開していた第6艦隊を撃滅した。 【大量破壊兵器を持ったテロ指定組織を撃滅した】っと彼らは調印された書類を言いながら嘯く。
 米海軍は確かに【大量破壊兵器】を持つがテロ組織では無いという意見はある。 が、覚書には【主権を尊重しテロ組織を指定できる】と書いている。 そして、グンマー校においてテロ組織は指定されている。
 つまり、【グンマー校は適切に大量破壊兵器を持った組織】を破壊したのだ。 所謂アングロサクソンが大好きでやまない免罪符を使ったのだ。
 『で、我々は中東戦線に再び足を突っ込んだ為に抜けられなくなった』
 「ハイ、先日の中東アラブのテロも我々、イヤ国民の背中を押す結果になりました」
 『そうなのだ、我々は引けなくなった。これで得をするのは……』
 「軍産複合体ですか?彼らは十分利益を得ていますが……」
 『違う、グンマー校だ!奴らの目的は2000年代の中東に戻す気なのだ』
 部下は長官の言葉を聞き絶句する。 2000年代はアフガン侵攻にイラク戦争、あくなき戦争への幕開けである。 いずれも米国は散々な結果に終わり中東地域との亀裂が走った。
 ビーストの発生と世界の混乱により米国と中東は少しはわだかまりを払拭し始めた。 狂い始めたのはグンマー校が群馬県を開放した事から始まった。 開放された群馬を取り込もうとした日本政府・欧米勢力と戦い第六・七艦隊・有志連合を撃滅した。 そして、適合者フィッタ―の7歳程の少年少女達は国を創った。 この事実は、中東の民族運動を活性化させた。
 『奴らは、グンマーは世界の秩序を破壊する物だ!奴らから目を離しては成らないのだ!』
 ダンと再び机を叩いた時にドアがノックされ黒人の男が急ぎながら入ってくる。
 「閣下!グンマー校代表がカイロに入りました」
 『なんだと!どういう事だ』
 「現地の諜報員の報告では目的は不明だそうです」
 そう言いながら、送られ来たばかりのデータを見せる。 そこには灰色のショートヘアに蒼い瞳、小動物の様な可愛さの少女が映っている。 彼女こそ討論ディベート部、部長の藤岡言葉ふじおかことのはである。
 この時をもって米国、世界中の目が彼女の一挙一動を注視する事になる。

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