グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第135話 プラン321


 ――2100年5月14日 12時00分 薬師岳要塞
 薬師岳要塞は国道122号のトンネル上にある要塞。 人員は公式では凡そ1万人が詰めていると言われている。 が、実際の所は日光要塞からニートの再教育の為に5万人以上がいる要塞である。
 現在、国道122号には三隻の船が鎮座している。 最新のG・Eジェネラル・エジソン製の強襲艦輸送艦【オオスミ】である。 エンジンは精神波動メンタルウェーブを使用し外装武器ペルソナで反重力を実現。 全長は180m、全幅は30m程の艦であり全通甲板にはヘリコプターを載せられる。 タワミの陸上部隊は330名の部隊と装備品を載せていた。
 グンマーに支配された足尾要塞を開放の為に、中禅寺湖要塞から離陸し杜山を通過。 杜山上空でグンマー校の航空部隊に襲撃を受け国道122号に不時着。 救出部隊とグンマー校からの部隊と戦闘に突入。 これを受けて南関東連合及び日光安全保障局N・S・Aが宣戦布告。
 国道122号は銃弾が飛び交う戦場となっている。
 大地が震え鉄条網が粉砕される。 薬師岳から出撃した隊員達は1週間で足尾市前の【わたらせ渓谷】までを占領した。
 イヤ、占領というのは正しくは無い。 もとは無人の空き地であり、ビーストに有らされた街並みが転がっているのだ。 一週間という時間が掛かったのは、グンマー校の航空隊の銃撃と砲撃によるもの。 マッハ3の速度で音も無く近寄ると部隊へ攻撃を開始し殲滅。
 一週間で死傷者数は3万人を既に越えている。 幸いにも日光要塞からは10万の応援のニート部隊が送られて来ている。
 「あと、もう少しで足尾要塞だ!」
 3個師団を預かる師団長が田元の十字路の傾いた信号を見ながら言う。 彼は装甲車に乗りながら見えて来た足尾要塞を眺める。
 (ふふ、5個師団五万での包囲すればこの要塞など落とすのは容易い)
 そう妄想していると部下が慌てて彼の元にやってきた。
 「師団長殿た、大変です」
 「何があった?」
 「薬師岳要塞から緊急報告で明智平要塞から敵部隊が襲来、迎撃中の事です」
 「なんだと!」
 師団長は部下が持ってきた報告書を奪い取る。 そこには、薬師岳要塞が明智平要塞から攻撃を受けている事。 敵の激しい攻撃に対して薬師岳要塞が全面攻勢に出ている為そちらに戦力を向けられない事。
 「も、もしこれが同時攻撃だったなら……やつらは」
 彼の予想は的中する……イヤ的中している。
 場所は高度32000フィート、黒に金字の線が入ったグンマー校所属An-225、ムリーヤが5機飛んでいる。  「弾装開け―」 「開きました」 「投下開始ー」 改造されたムリ―ヤから大量の黒い球体が投下される。 それはアッという間に下にいる彼らの元に落ちてくる。
 「敵の爆撃だ!全員退避」
 その声が早いかその黒い球体は上空で爆発し黒い弾を撒き散らす。 弾が刺さった隊員達は悲鳴を上げ、合成燃料タンクを貫かれた車両は爆炎を上げる。
 「以外にダメージが無かったな」
 飛び込んだ塹壕から出ながら彼は言っているとフト目の前に有る黒い物が目に入った。
 「なんだこれは?弾か種か?」
 榴散弾りゅうさんだんかと思った瞬間、それ発芽した。 あっという間に大地に根を張るとムクムクと起き上がり巨大な花を咲かす。 彼が呆然としていた時間もあったが僅か30秒の事であった。
 「向日葵ひまわり……まさか!ビースト化した植物か!」
 そうだと答えんばかりに向日葵が彼に向かう。 ガチンっと弾を込める様な音と共に向日葵から種が発射され、彼を貫き命を刈り取る。 倒れた彼の躰からは新たなに向日葵の命が生まれる。
 そんな阿鼻叫喚の地獄絵が広がり始める。 「うぁああ傷口から向日葵がー」 「しにたくなあぁあい」 そんな声を隊員達が上げる。
 それを上空から見ているのはAn-225、ムリーヤに乗っている少年少女達。 「浪漫部へこちら緑化委員、園芸部合同チーム。緑化運動に成功、帰投する」 「浪漫部、了解した」 この機に乗っていたのは緑化委員と園芸部である。
 彼らはビースト化した向日葵を打ちおろしていたのである。 国際法では生物バイオ化学ケミカル兵器を使う事は禁止されている。 そして、動物をビースト化し軍様に使用する事も禁止されている。 が、向日葵等の植物をビースト化する事は禁止されていない……というのにも裏が有る。
 そう未だに世界の警察を自称する米国さんが反対したのだ。 っというのも米国は遺伝子改良した小麦や食料を大量に生産している。 近年は植物をビースト化させ生産率を上げるといった開発・研究を行っている。 農業という国家利益を上げる為にこれらを禁止する事を拒否したのだ。
 現在最もこれらが発展しているのはグンマー校である。 米に麦にジャガイモ等の野菜のビースト化に成功。 食料自給率は150%と凄まじい跳ね上がりぷりである。
 そして、最もグンマー校が着目しているのが向日葵BDFである 向日葵を使ったバドル・デ・フィールドでは無い。 Bio Diesel Fuelの略で、日本語に訳すとバイオディーゼル燃料である。 これらの向日葵を植える事で他のエネルギー活用に役立てるのだ。
 このビースト向日葵の凄い所は、種に植えて30若で花までに成長する点である。 花に成長すると近くの獲物を捕食する為に種を飛ばす。 倒れた獲物から栄養を奪いながら自分の仲間を増やしていく。
 5万人の兵士達が文字通りに栄養に変わっていくのに時間は掛からなかった。 数時間後……国道122号は20万本の向日葵で覆われる事になった。
 さて、明智平要塞と向き合っている華厳の滝の連中は一体何をしているのだろうか?
 ■  ■  ■

 ――2100年5月14日 12時30分 米軍基地前
 照貴琉男できるお達は暇だった。 敵も攻撃してこないし、矢路一男やるかずお屋良凪男やらないおと昔話に花を咲かせていた。 そんな時に、無線を聞いていた隊員が血相を変えて報告をする。
 「デキルオ課長代理!大変です薬師岳要塞が攻撃を受けているとの事です」
 「なんだと!」
 「報告では明智平要塞からミサイル等の攻撃と敵航空隊の攻撃が行われいるそうです」
 「映像は有るか?」
 「は、はい薬師岳からの映像入ります」
 そこに映るは炎を吹きながら飛んでくるミサイルに銃撃を行っている航空隊。 陣地のアチコチからは煙と炎が上がっている。
 「ま、まさか兵力をこちらから引き抜いて薬師岳に向けたのか?」
 『その様だな!やられたよ』
 「秋山部長代理!」
 『薬師岳から応援要請が来ている我々は応援を求められいる』
 「くそったれ」
 『その通り糞ったれだ』
 秋山副部長は悪態を吐く。 米軍基地周囲に陣地を形成し敵の攻撃を受けずに力を温存する 彼らの作戦の根本がひっくり返ってしまったのだ。
 グンマー校の浪漫部の想定内で有りプラン123となっていた。 これに対抗する為に、プラン321が発動されたのだ。
 プラン321は明智平要塞から薬師岳要塞を攻撃。 適度に追いつめ日光または華厳の滝周囲に展開部隊を引っ張りだすのが目的。
 グンマー校の目的は上手くいった様だ。 さて、彼らはどの様に行動するのだろうか……。
 次回に続く。

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