グンマー2100~群像の精器(マギウス)
第104話 羽田空港狂騒曲 (10)
――2100年4月28日15時00分羽田空港
ピピッツっとスマホが鳴り中居屋銃子は目を覚ます。 紫色の瞳が開かれ、猫が顔を撫でる様に頬を撫でる。 起き上がりながら、両肩から外れそうな下着の肩を抑える。
起き上がると、外線を使い食事を注文する。 暫くして、ノックがされ少女は食事を受け取る。 銀色の蓋が外され、中からはパンケーキが姿を見せる。
少女は、右手にフォークを持ちケーキを口の中に入れる。 口の中に入れたが、少女は口からパンを吐き出す。
『ウェーー不味いわ、食べれたものじゃないわ』
一体何が、原因なのだろう。
『あ、モード変えるの忘れていた』
スマホを出し、首にケーブルを差し込む。 画面には【モード:適合者】と書かれている。 ボタンを押すと【モード:一般人】に変わる。
再び、パンケーキを口の中に入れる。
『あー美味しいわ、良質な小麦を使っているわ』
先ほどとはうって違い、満足そうな笑みを浮かべる。 一体何があったのだろう?
適合者は、何でも食べれる。 これは、誰でも知っている事である。 だが、それが出来るのは、第二世以降っという事は知られていない。 何故なら第一世代の適合者の生き残りが、少ない為で有る。
第一世代は、有機物はビースト化した生物からしか食べれない。 それ以外の物を喰べると、先程の様に拒絶反応が出る。 少女的には、プラスチック製の安いスポンジを食べている様な感じ。
原因は不明だが、一部ではそれこそが人間で無い証明とも言われている。 現在は、グンマーの脳業部が開発したスマホアプリで対応している。 そんなんで解決するのかっと、突っ込みを入れたい所だが解決したので良しとしよう。
少女は、つい最近に第一世代の血で適合者となった。 勿論、彼女も普通の食事を取れる訳で無い。
『次は、蕩ける様なバターにシロップ』
暖かいパン生地の上をバターがスケート選手の様に滑る。 そして、更に専用の容器に入ったシロップを掛ける。 蓋を取り、スプーンでシロップを掬いパンケーキの上に乗せる。
程よく焼けたパンが、コーティングされキラキラと室内灯に反射する。 ナイフで切りつけると、ドロっとシロップが白い皿に落ちる。 切り取られたパンは銃子の口の中に入る。
『オイシー!甘いパンに甘いシロップを掛けるという背徳感がまたイイわ』
そう呟いていると銃子のスマホが鳴り、名前を確認し通話を始める。 スマホからは、立体映像が展開される。
現れたのは、赤茶髪に赤い瞳の宇佐美である。 寝っ転がっている様で、うつ伏せになっている。 枕にしているのは、別な人物の膝である。
「お疲れ、銃子ちゃん美味しそうね」
『宇佐美さんも、楽しそうですね』
「楽しいわ、だってデートしているのだから」
膝から立ち上がり、横の人物に抱きつく。 宇佐美が、猫の様に頬を擦っているのは黒髪黒目の少年。 宇佐美が抱きついているのは、グンマー校首席の至誠賢治である。
ナイスボディの美少女に抱きつかたら普通の男子は嬉しいはず。 であるが、賢治は普通である。 苦笑いも照れも無い、至って普通である。
「で、銃子ちゃん最後のトリは任せたよ」
『分かりました、首席様』
片手で猫を撫でる様に、首元を撫でながら言う。 宇佐美も嬉しそうな顔で撫でられる。 某英国の最大の悪役が白猫を片手に某諜報員と話をしている様である。 ただし、ちゃんと顔を見せている所は堂々としている。
「首都圏校は、私達との賭けに勝ちたいらしいわ」
『賭けですか?何を賭けているのです?』
「秘密」
ニヤリと宇佐美は、悪い笑みを浮かべる。 某英国諜報員と対立する悪役の猫が擬人化されたら、こうなるのだろう。
「銃子ちゃん頑張ってね」
『分かりました、首席殿』
スマホの映像が切れ、通信が終わる。
『どんなエゲツナイ、賭けをしたのでしょうか?』
首を傾げながら銃子は、残りのパンケーキを口に入れた。 残ったメープルシロップが、赤い血の様に光る。
銃子は皿をトレイに戻し、廊下に出す。 廊下に出て来たのは、厳つい暗殺者の顔をした男であった。 片手には、銀色のアタッシュケースを持っている。
さぁ、楽しいゲームが始まる。
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