グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第84話 兎と亀 後編


 ――2100年4月24日13時00分東京銀座
 東京銀座、普段は人々が賑やかな高級商店街。 バン、バン、ダーン、ダーンと銃撃音が響く。 人々は逃げ惑い、怒号や悲鳴が聞こえる。
 「ゴーゴーファイアー」
 「撃て撃て」
 UNと描かれた国連の制服を着た男達と黒ずくめの男達が銃撃戦をしている。 実弾や外装武器ペルソナが飛び交い、路駐されていた車が爆発する。
 『アラアラ、国連軍と賞金稼ぎバウンティハンターさんですね』
 「全く、何をしているのか分から無い」
 宇佐美はウサ耳をピョコピョコさせながら、大量の荷物を持っている。 荷物を持っている乙姫は、不機嫌そうな顔をしている。
 『一応国連の監視対象だから何もしないけどさ』
 「まぁ、そうして下さい。貴女は余計な紡ぎをしないで下さい」
 言い合っていると迎えのヘリが屋上にやって来る。 国連軍所属のブラックホークである。 ダンっと鈍い音がしたと思いきやヘリの側面が炎に包まれる。
 『あ、この機体ってオスプレイに次ぐフラグ機』
 「紡いでいないでしょうね!」
 『う、うん、世の中には無意識の無我が有ってだね』
 「我々、第一世代の適合者フィッターには重要な要素だ」
 機体は煙を上げながら、市街地の方へ落下し爆炎を上げる。 落下した地域でも、大規模な銃撃戦が起きている。 まさに、映画で放送された様な状況である。
 『此処は膝を付いて、両手を上げればベトナム映画になる?』
 「まさかの東京でベトナム戦争へ、ってあるかー」
 宇佐美が膝を付け両手を上げ、【プラトーン】と叫ぶ。 乙姫にバシっと叩かれ、宇佐美が地面に頭をぶつける。 
 『で、どうするの?』
 「ウーン、私と貴女の力どちらが使っても最悪な結末だわ」
 『分かった!もう一人の私を呼べばイイんだ』
 「千年パズルを完成させたの?」
 宇佐美はポケットからスマホを取り出し、通話を始める。 暫くして、ヒュンと弾の音がし彼女が現れる。
 「まさかの三次元アイボー」
 「何を言っているのですか?死にます?ペチャパイさん」
 「お主は、秘書かっつ?」
 「……」
 『さて、亀さん頼んだよ』
 「ハイ」
 もう一人の彼女は、下の道路に飛び降りる。 下にいた、賞金稼ぎバウンティハンターがアッという間に血祭りに上げられる。
 『まぁ、アッチは非正規社員だから問題は無いでしょう』
 「国連側は正社員だものね」
 『グンマーは、全員が正社員なんだよね』
 宇佐美は少し、悲しそうな顔をする。 意外な顔に思わず、乙姫は驚く。
 「以外、宇佐美さんも優しいんですね」
 『ン?イヤ東京みたいに、簡単に臨床実験が出来ないという意味だよ』
 「私の感動を返せ、コンチクチョウ!」
 飛び膝蹴りが、宇佐美の脇腹に入る。 コロコロっと転がるが、顔は笑っている。
 「痛っつー!!」
 乙姫は声を上げ脚を抑える。 宇佐美は、立ち上がり腹の所を見せる。  腹には、糸が巻かれていた。
 『防弾的に用意した鉄の糸アイアンイァーン
 「卑怯な!」
 『私は、恨まれているからね』
 「まぁ、そうだろうね。でも、その結果が今のグンマー校」
 『あの時は、私も未熟だったのです』
 宇佐美は、10年前の群馬独立戦争グンマワーに関西で暴れた。 任務は、東京との戦いに参戦予定の関西勢力を攪乱かくらんする事。 途中までは、任務は成功していた。
 が、宇佐美はたった一つのミスをした。 関西、特に大阪において紡ぐ事に失敗。
 『親が居ない私には、血縁●●の連鎖は分からなかった』
 大阪に多い大陸・半島系の血縁社会で、傀儡マリオンに失敗。 縁を絡ませた結果、全員の理性を焼き切ってしまった。
 結果として、大阪で独立大暴動が起きた。 日本人・大陸・半島系の1000万人による三つ巴の争いに突入。
 『まぁ、全部で500万人が死ぬとは思わなかったですね』
 「随分、軽く言うわね」
 『貴女も私も適合者フィッターには、死という物が軽い』
 「確かに、私も隣の席だった奴が死んでも何とも思わなかった」
 『だけど、好きと愛いう感情がようやく分かった気がする』
 「そういう意味では、貴女は兎なのかもしれない」
 銀髪に兎の様に、紅い瞳を宇佐美に向ける。 首都圏首席の白虎乙姫びゃっこおとひめは、まだ恋を知らない。 周りが、山手誉やまのてほまれや女子の取り巻きしか居ないのだ。
 (まぁ、10年来、殺リアッテいる男はいるがアレは……)
 乙姫が思っていると、2機目の機体がホバリングしながらやって来た。 未亡人生産機こと、オスプレイである。
 『中の人達、結婚していたりして』
 「まーた、ロクでも無い事言ってー」
 着陸を始めた時に、火がついていた新車が爆発。 突然の爆風を浴び、オスプレイはバランスを崩し大地に激突。 爆炎と爆風が発生、国連側の護衛官と賞金稼ぎバウンティハンターが全員死亡。
 この場所で、2人以外に生きている者はいない。
 『あーあ、新車って爆発する物。ゲーム界では有名』
 「で、帰りはどうするの?」
 『歩けばいいと思うよ、その足は飾りかな?』
 宇佐美と乙姫は、爆炎で舐められ熱を帯びる大地に降りる。 常人なら、全身火傷で死んでしまう状態。  2人は、仲良く歩き始めた。

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