グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第83話 兎と亀 中編★

  ――2100年4月24日11時00分東京銀座
 東京銀座の高級店が立ち並ぶ中で、品物を選んでいる少女達がいる。
 <a href="//19656.mitemin.net/i236048/" target="_blank"><img src="//19656.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i236048/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a> <a href="//19656.mitemin.net/i236046/" target="_blank"><img src="//19656.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i236046/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
 銀髪に朱い瞳の少女は白虎乙姫びゃっこおとひめ首席。 赤茶髪に紅い瞳は、前橋宇佐美。
 『ねぇ、乙姫ちゃん兎と亀の話って知っている?』
 「ん?兎と亀?」
 宇佐美が、ハンカチ等の小物を見ながら尋ねる。 乙姫は、怪訝な顔をし宇佐美を見返す。
 「能力が低くても努力した者が、最後には勝つという物語だろう?」
 『そうだよ、努力した者こそ勝利を得るという物語』
 兎と亀の物語は、イソップ物語が海外から輸入された物。 明治時代には、【油断大敵】というタイトルで掲載されていた。
 ~~良くある兎と亀物語~~
 内容は、兎と亀が山の麓まで競争すると話し。 亀の姿が見えなくなった所で、居眠りを始める。 起きた頃には、亀は山の麓に到着し大喜びしている。
 ~~終了~~
 そこで、物語は終わる。
 能力が有っても、自意識過剰で思い上がると物事を逃す。 また、能力が低くても努力し、真っ直ぐ進む事の重要さを解いている。
 『それは、昔の話しなんだよ』
 「今でもそうだろう?』
 『私の考察では亀の正体は兎で、麻酔銃を使い眠らせた狡猾な奴』
 「なんと」
 ~~宇佐美的の新訳な兎と亀~~
 ある時代に兎が2匹いました。  両方共足は早く、何時も競争していました。 ある日、草むらで黒ずくめの男達の怪しげな取引を目撃し襲われ薬を飲まされました。 目が覚めると、亀に姿を変えていました。
 亀に成った兎は再び、ライバルの兎と戦いました。 そして、知り合いのフクロウから貰った麻酔銃を甲羅から発射、ライバルの首筋に打ち込むました。
 あら不思議、競争相手の兎は眠ってしまいました。 競争相手が目を覚ますと、亀に負けた事に気が付いたのです。
 競争相手は、亀に負けた事で努力の大切さを学びました。 めでたし、めでたし。
 ~~終了~~
 「なわけあるか!」
 『科学時代を取り入れた結果、脳学デカルチャー部はそう結論付けました』
 「よく首席は、そんな部に巨額の部費を出すな」
 『言ったでしょ、兎と亀。前提が違ければ見方が変わる』
 そう言っていると乙姫のスマホが鳴る。 スマホを見て、乙姫は映像を宇佐美に見せる。
 「そういう事か!っという事は」
 『頑張って、国連のSPさんに守って貰いましょうか?』
 宇佐美が悪い顔をすると同時に、外で喧騒が聞こえ始めた。
 ◆  ◆  ◆
 ――2100年4月24日11時00分東京新橋
 パラパラと飛んでいるのは、メディアのヘリ達。
 【現在、新橋駅で大規模な戦闘が起きている模様です』 【テロリストの仕業かと疑われています】 【あ、何て事だ建物が】
 バラバラと高層ビルの一部が切られ地面に落下する。
 『中々東京の建物は、強度が弱い』
 「ハッ!宇佐美!貴様が壊したんだろうが」
 鉄斎少年が、刀で横一文字に切る。 ウサミ耳少女はヒラリと躱す。
 『世の中は弱肉強食、弱い建物は食われて当然』
 「そんな事が、許されると思っているのか!」
 『貴方、それサバンナでも言えるの?』 
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 「……」
 無言で刀を振りながら、彼女に鉄斎少年は迫る。 そのたびに、紙一重で避けられる。
 「逃げて無いで戦え」
 『分かったわ!』
 クイッと糸を引くと上空のヘリが向かってくる。
 【操縦が不能】 【落ちるーーー】 【メーデーメーデー】
 『必殺!報道の力メディアアタック!』
 高速スピードで引っ張られた機体は、鉄斎少年に向かってくる。 このままでは、大地に機体が衝突し鉄斎少年ごと吹き飛ばしてしまう。
 「卑怯な!」
 『ヘリが落ちるのは、アフリカでは良くある事』
 「くっそ!」
 鉄斎少年は、ヘリが向かってくるビルから飛び出し逃げる。 適合者フィッターの常人ならぬ視力は、乗っている人間の顔が可視化する。 絶望・諦め・懺悔、様々な感情が見えた時。  ヘリがキシリっと音を立て、細切れにされる。
 ダーンっという爆発音と共に、鉄斎少年は吹き飛ばされた。 途切れゆく意識の中で、鉄斎少年は空を舞いながら彼女を見た。 爆風の中で彼女の姿がブレ、信じられない物が見えた。
 「どうして……君が……」
 鉄斎少年の背中に冷たい物と水を叩く音がし意識が落ちた。 落ちたのは、浜離宮恩賜庭園の池。 水柱の通報を受けた警察により、意識が無い彼は保護された。 一体彼は何を見たのだろう?

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