グンマー2100~群像の精器(マギウス)
第9話 少女の決断★
少女は夢を見ている。 楽しい夢では無く、苦痛に溢れた夢である。
燃えて壊れる街の風景、周りの人々は逃げ回っている。 そして、人々を襲っているのは熊型のビースト。
躰を動かそうとしても、動かない。 恐怖で躰が動かないのだ。
そんな、少女の前にビーストが現れる。 どうやら匂いで気がついた様だ。
「ヤラセはしない!」
迷彩服を着た自衛隊員らしき男の人が言う。 その人は、持っていた銃でビーストに発砲する。
「やっ……」
ピシャっと音がし、少女の目の前に頭が落ちる。 胴体からは、鮮血が噴水の様に吹き上がる。
倒れた死体をビーストは、ムシャムシャと食べ始める。 やがて、食べ終えたビーストは少女へ迫る。 少女は、隊員が持っていた銃を拾いビーストに撃った。
突如ビーストがバーンと大爆発し、少女は爆風で転がり崖から落ちる。
「イヤアアヤア!」
声を上げ、目を開けると見知らぬ天井が見えた。
「大丈夫?」
「貴方は、賢治首席!私は貴方に切られ」
思わず、自分の腕と脚を見る。 肢体には、異常が無く普通に動いている。
「そうだよ、君は僕に切られ死の淵を彷徨った」
「死にかけたの?」
「治療が終わるまで、心臓が10回程止まった」
賢治は、ベッドに手を付けると右手で、少女の胸を差す。
「どうして、戻したの?私みたいな劣等生、要らないじゃないの?」
「ウーン、僕は人を意味なく殺しはしない」
「だって、私なんて外装武器しか使えない、穀潰し。」
「そうかな?君は、面白い存在だよ?」
「適合者で無く、武器も無く姿も変わらない存在を?」
「何か誤解している様だけど、君は武器を持っているよ」
賢治は、少女の手に握られた銃を示す。
「え、何で、何で、銃を持っているの?」
「後、姿も変わった見たい」
手鏡を見せると、黒髪に黒い瞳の少女は無かった。 薄紫の髪、紫色の瞳に変わった少女の顔が有った。
<a href="//19656.mitemin.net/i234556/" target="_blank"><img src="//19656.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i234556/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a> <a href="//19656.mitemin.net/i234557/" target="_blank"><img src="//19656.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i234557/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
「何で、分からないよ!」
「理由を知りたい?」
「知りたいです」
「適合者が先天的に、生まれる条件は?」
「生まれる前に、マギウスが注入される事。親が適合者である事」
「その通り!では、後天的に生まれる条件とは?」
「後天的には、確認されて無いです。適合者は先天性」
「先程までは……では、君は適合者でも無く、外装武器しか使えない」
賢治は、少女の指差しながら言う。
「後天的に、適合者と成った?」
「その通り、君は後天的に、適合者に変わった」
「有り得るのですか?」
賢治は、少女にあるデータを見せる。 それは、治療のデータだった。
少女は、大量出血で死にかけていた。 だが、少女の血は、とても珍しい血液型。 輸血に使われたのは、この学園のある適合者の血。 半ば全部の血を入れ替える様な勢いで使われた。
その後、数回に渡り心臓が停止。 蘇生後、髪と瞳の色が変化し躰が超回復を始める。
提供者の名前は、不明。
「一体誰の血」
「目の前に、居るけどね」
「まさか」
「お陰で、また血を貯めるハメになったよー」
賢治は、左腕を見せる。
「さて、この様な形で適合者が、増えると分かると困る」
「どうするのですか?」
「君に死んでもらう」
笑顔で、賢治は答える。 少女は、怯えた顔で賢治から離れようとする。
「あ、そう意味じゃない」
賢治は、データを見せる。 其処には、少女の生まれた時からのデータが載っていた。 そして、ポチッと画面をスライドさせる。 少女の生まれた日付の横に、死亡日が表示される。
「ウン、君はデータ上で死んだ。簡単に、殺しはしない」
「えっつ、殺さないの?」
「だって、大切なサンプルでも有り、血液タンクじゃん」
「えっつ」
「僕は、君という人間に興味を持った。今日から首席秘書ね」
細い顎を右手で取り、顔を合わせる。 漆黒の瞳に、飲み込まれそうな感覚を覚え、目を逸らす。
「ちゃんと、対価を払う。君が望む、用意可能な物を3つ、給料も上げる」
「何か怖いです」
「だって、僕の愛玩具で有りタンクなんだから、裏切ったら」
少女の心臓付近を右手で撫でる。 胸が急に痛み、少女はベッドの上で悶絶する。 そんな、少女の顎を取り賢治は顔を向けさせる。
「さぁ、僕の気が変わらない内に、お願いしてね。明日からお仕事だ」
黒い瞳の中に、爛々と光る星が現れ少女は星に願いを掛ける。
「何だ、そんな事か?分かった叶えよう。さて」
彼は安心した少女をお姫様抱っこし抱える。
「何をするかって?秘書に、必要な教養を付けるんだよ」
「私、勉強苦手だし、秘書なんて」
「安心したまえ。この間、自己啓発部から貰った学習装置が有ってね」
賢治が抱えた先には、人が入れるサイズのカプセルが置かれている。 アタフタとする少女を入れ、蓋を締める。 ドンドンと蓋が、内側から叩かれる。 だが、開くことは無い。
「えっと、必要な項目を選択。全部でイイか」
ポチッとボタンを押す。 カプセルの中で、ドンドン叩いてた少女の両手両脚が、固定される。 そして、頭の所にヘッドギアが付けられ、少女は動きを止めた。
賢治は、見落としていた注意事項を見つめて首を傾げる。
「一気に入れると【感情を失った嶺上マシーン】化する。なにそれ?」
賢治は、ビクン、ビクンと痙攣する少女を暫く観察しすると部屋から出ていった。 彼は少女の3つの願いを願いを叶える為に、スマホで何処かに連絡した。
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