グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第8話 午後の演習にて


 午後の演習場、中等部が屋外で演習をしている。 その中で、一人の少年は暇そうに寝転がっている。
 「おーい、鉄斎やらないか?」
 「どうせ、やっても俺が勝つし、やらねー」
 「分かったー」
 退屈そうな顔で、鉄斎少年は言う。
 何時からだろう……自分のやる気が失せたのは……。 周りから、中等部最強と言われた時だろうか……。 学園大会の中等部で最年少優勝した時だろうか……。
 それとも、最強の言われるメンタルギアの刀を出した時か……。 鉄斎が物思いに耽っていると影が覆う。
 「鉄斎、またサボっているのか?」
 「先生、中等部最強の僕にどう頑張れと」
 「そんな、君に指導をしてくれる人を連れて来た」
 「先生ですか?この間、僕に負けたじゃないですか」
 「それは、あそこの人だよ」
 「ッツ!!」
 何か途轍も無い、何かを感じた。 鉄斎は寝転がった状態から立ち上がり、刀を展開する。 周りを見渡すと4人の男女が、歩いている。
 3人の女子生徒に囲まれた男子生徒が、教師に声を掛ける。
 「先生、遅れてすみません」
 「イヤ、丁度良かった」
 教師は、自分の方を指差す。 黒髪に黒目の少年は、鉄斎少年の方に来ると挨拶する。
 「こんにちは、首席の至誠賢治しせいけんじだよ!宜しく!」
 「アンタが、高等部最強の人なの?そう見えないけど?」
 「そうだよー、どっからでも掛かっておいで」
 「メンタルギアは?」
 「必要なのかな?」
 「何だと?」
 「君の攻撃には、必要そうに見えない」
 賢治は、首を傾ける。 鉄斎少年は、己をバカにされたと思いプルプルと震えている。
 「じゃ、行きます。首席さん」
 「おいでー」
 鉄斎少年は刀を抜き、電光石火の勢いで、賢治に斬りかかる。 武器も持たないで、適合者フィッターと戦う何て馬鹿。 っと思いながら、袈裟懸けに切りつける。
 周りから悲鳴が聞こえ、やったっと思った時。
 「フーン、此れが君のメンタルギアねー」
 自分の刃が、賢治に持たれていた。
 「どの位、強いのかな?」
 メシっと自分の刃がしなり、頭痛がする。 思わず、左手で頭を抑える。
 「以外に頑丈、もうちょっと、力を加えット」
 パキンっと音がし、刃にヒビが入り始める。
 「嘘だろ、嘘だろ」
 ズキンっと更に頭痛が酷くなる。
 「よし、此れで仕上げ、ホイ」
 パキンっと音がし、刃が宙を舞う。 刃に映るは自分の顔。 何て、恐怖に酷く歪んだ顔をしているのだろう。 っと鉄斎少年は思った。
 「さて、僕のターン。見せて上げる」
 賢治は、刃が折れ呆然とする鉄斎少年の前で、右手に柄を取る。 カチッと音と共に、鉄斎少年が吹き飛び、全身から血を吹き出す。 まるで、細かい何かに、引っ掻かれた様な傷をしている。
 「ウーン、以外に弱い?先生、勝者は私でOKかな?」
 「勝者、賢治首席!」
 中等部の生徒達は突然の事で、何かが起きたか分からない。 朱音と彩華、凛だけは拍手をしている。
 賢治が踵を返した時、鉄斎少年が折れた刀を血塗れで立ち上がる。
 「随分、強いね。それは、賞賛に値する」
 「まだ、終わってげHOGGGお」
 神速というべきか、賢治は鉄斎少年の目の前に立った。 そして、メシメシと刀の鞘が、鉄斎少年に喰い込む。
 「蛮勇と勇気は違う」
 ベキベキとイヤな音がし、鉄斎少年の躰が悲鳴を上げる。 轟と風音を立て、鉄斎少年は壁に激突し大きな穴を作る。
 口から血を履きながら、鉄斎少年は賢治を睨む。
 「以外!まだ余裕が有る?次は、手足を切ってみよう」
 賢治が右手に柄を掛けた時、人影が鉄斎の前に現れた。 1人の少女が、飛び出してきた。
 「もうやめて!」 
 「まて!君ッツ!」
 すでに、賢治は柄に手を付けていた。 ピュっと鉄斎少年の顔に、血が飛ぶ。
 自分の血では、無かった。 目の前に、女性特有の細く白い手足が転がっていた。
 「朱音、病院へ連絡。彩華、傷口と手脚の冷凍、凛は電気でAED」
 「「「ハイ」」」
 少女は、賢治の腕の中に有った。 パキンと音がし、転がっていた手足が氷に包まれる。
 「彼女は、大丈夫なのか?」
 少女に、近寄ろうとした。
 「うるさい馬鹿、電話中だ」
 朱音の回し蹴りを喰らい、鉄斎少年は意識を失った。    

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