10年間修行した反動で好き勝手するけど何か問題ある?

慈桜

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「って言う事があったんです」
「ほう、それ面白いな。丸ぺにさん、人魚達には避難して貰ったんだよな?あとどれぐらいかかる?」
浜辺で入力ボードを触る丸ぺにさんに問いかけると、首を数回ひねり時間を算出していく。
「うーん、今順調に海の数式は消えて行ってるけど、この後書き込めるだけコピーペーストでこのヤクザさんのMPの数式を打ち込むってなると一日仕事になりそうであります」
「充分だ。それで、その自販機とやらは丸ぺにさんが持ってるのか?」
「いや、それは全部竜刃氏に預けてあるのです。」
俺はすぐに横に控えるカルマに目線を送るとカルマはうんと頷く。
「その竜刃ってやつはあれだよな?新撰組みたいな格好のヤツだよな?」
「ご名答!」
「では呼んで参ります」
ステテテテとカルマが走り去ると、砂まみれのマサツグに向き直る。
「話しは簡単だマサツグ。お前はそのクソ兄貴にメッセージを送り、自販機と一緒に転移プレートを出す。そしてすぐにそこから退避しろ。後は俺に任せとけ」
「は、はい!!」
二星の客人って事で通力切ってなくて助かったな。これでやらかしてたらメッセージ送れませんとか笑い事だった。
「主君!連れて参りました!!」
新撰組の羽織袴に似た侍の格好をした竜刃は俺の前に立つと小さく腰を曲げたまま視線を上げた。
「お初にお目にかかります、竜刃と申します。この度は集落への受け入れ感謝致します。」
「そんな畏まらなくていいぞ、急に呼んで悪いな。話しってのがシエルクラティアの自販機を何個か渡して欲しいんだ。」
「いえいえ、そんな頼まれなくとも手土産にと思っていた物であります故、何点でも」
「それは感謝する。一先ずは罠にはめる分だけ必要なだけだからな5つぐらいあればいいんだ。」
「左様ですか、では此方に」
竜刃がアイテムボックスから取り出した自販機をそのままマサツグに預ける。マサツグは使命感を感じたのか俺を見やり力強く頷いた。
「あと、これが転移プレートだ。ちょうど集落に設置されてたから目立たない数だけとりあえず取ってきたとか言っとけよ」
「はい!じゃあ早速」
メニュー画面を開き急ぎメッセージを打ち込むマサツグは、数秒後に視界から消えた。



「はやかったな?」
「うん、戻ったら集落にいっぱいおいてあったから、集落からハズレにあった目立たない数だけとりあえず取ってきたんだ。五台だけだけど、次はもっととってくるからさ。」
「まぁ、良くやったと言っておいてやる。5台だけだと言うのにはやはりお前の愚図さが滲み出ているがな」
一つずつ取り出して、最後に転移プレートを取り出す。
「なんだその板は。」
「これは神域の自動販売機みたいなヤツだよ、こうやって乗ったらさ」
「こうやって違う人が出てくるんだよねぇーマサツグ、お疲れさん、帰って牛丼食え牛丼。」
「はい!!」
「貴様マサツグ!!!!裏切ったのかぁぁ!!!」
「はいはいはいはい、うっさいぞお前ぇ」
華奢でベタな王子様的な奴が目の前でテンション上げまくるもんだからとりあえず殴ってみた。
しかし大袈裟だ。軽く殴っただけなのに壁に刺さりやがった。
「ひっ、ひいいぃ!やめろ!くるな!こっちにくるな!!」
「いやぁ、最近色々ありすぎてイライライライラしてるんだわぁ。もうどれぐらいかって言うと、わざわざ英会話覚えてアメリカ行って大統領殴りたいぐらいにさ」
「お前は馬鹿か、そんなテロ行為がストレス発散で出来るわけが無いだろう」
ケツを擦りながら後退して行く空の王子様のごもっともな意見には納得だ。
「その通り、その通りだよなぁ?ツグナ君!そんな事してはいけないからこそ、こんな法律の無い世界でお前は俺に殴られるワケだ」
「そんなへりくごばっっ」
話しで聞いてれば相当雑魚そうに聞こえたけどそれなりにレベル保持してんだな。ほんのかるぅぅーーーく殴っただけなんだけども死んでない。じゃあ何処まで行けるか為してみようって言うのが俺の見解だ。
まぁ、俺が法律だとすれば、こいつは俺の財布を盗んだ罪として死刑。そしてストレス発散の為の私刑の判決を下させてもらうわけだが。
「ツグナ君、俺って前世・・でさぁ、週刊プロレスとか読んじゃうような奴だったわけ。」
「ひっ、ひぃ!!来るな来るなー!!」
「でもさ、プロレス技ってデカイ人形とかで練習して大体マスターするんだけど危なすぎて使える場面ないわけよ?」
「頼む!頼むから来ないでくれ頼む!!」
ガチガチガチガチと歯が高速で噛み合う音が心地いい。うん、決めた。
「わかった…そんなにビビらせてごめん。もうなんもしないから立ちなよ。」
そっと手を差し伸べるとツグナは震えながらに俺の手を掴んだ。
「でさ、もう人間やめてますーな膂力とさ、プロレスの技が合体したらどうなるのかなぁって、何回か試した事あるんだけどさ、全力では恐くてやった事無いわけよ?」
「やめろ!離してくれ!」
「後さぁ、知ってた?このさ、お前の頭に繋がる数字プログラミング言語って言うらしいぜ?これ引き抜いてさ?何処だっけ?多分この辺だ」
通力を引きちぎると目に見えてツグナのレベルが下がる。
「勘弁してくれええ!勘弁してくれぇぇ!謝るから!謝るから!!」
差し出された手を握り潰すと鮮血が弾ける。
「ひ、ひぎゃぁぁああああ!!!」
「まぁ、マサツグの事は正直あんまり関係ないんだなこれが」
そのまま胸ぐらを掴み高い天井に放り投げ真っ逆さまに落下する体をキャッチし頭を両膝に抱え込んだまま魔法を発動する。
重力加速度グラヴィティーションアクセラーション

八倍クアドラプル

「うえ、あ」

「ツームストーンパイルドライバー!!!!」
部屋一面が、陥没する脳天杭打ちである。重力加速度を上げたのは演出であると言っておこう。脳漿ぶちまけてお陀仏しましたと。
「楽に死ねてよかったな。」
そんな事よりシェルルを探せだな。








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