10年間修行した反動で好き勝手するけど何か問題ある?
45
カルディアン帝国は侵攻の手を休めずに追跡者を次々と捕らえ、今では追跡者で構成された不死の兵団は4000を越す規模となっている。 ヨルムンガルド、アインシュタットを落とし地図を大きく塗り替えたが両国はただやられただけではなかったのだ。
隣接するヨルムンガルドを即座に叩き、これを武力併合した事によりヨルムンガルド王国の国民は命を省みずに昼夜問わず国外への逃亡を敢行し、処刑または拘束される者が後を立たない一種の混乱状態に陥っていた。
虐殺されたヨルムンガルド王族は王国らしからぬ民こそ至上の考えを元に、どうすれば民の暮らしが良くなるのかと、民の為に善政を敷く善王であった。 各国と比べると断然とスラムの規模が小さかったのが、その確たる証拠だろう。
その為、侵略行為による王族の虐殺は王国民に多大な影響を与えた。
貴族達はあまりに早すぎる王都陥落の一報に肩を落とし嘆くと共に王からの今際の際にしたためた書状を受けて行動に移る。
『領地は諦めよ、だが我が王国より預託した国宝に関しての所有権を貴族各位に譲渡する。直ちに編成した軍を率いて民をアイルセム教国、ノースウォール神聖国へ送り届けてくれ。これは王令だ、頼む。』
伝統のある誇り高きヨルムンガルド王国だからこそ、この書状を受け即座に動けたのであろう。 不幸中の幸いか、民の多くは最後まで民を愛した王と忠誠を誓った貴族によって避難する事に成功したのだ。
その一方で王都を陥落させた後にヨルムンガルドの玉座に腰掛け不機嫌そうに手を払う偉丈夫の姿がある。
全身鎧に身を包むカルディアン帝国皇帝イグニス・ブラド・カルディアンある。
「大国ヨルムンガルドが聞いて呆れる。予測されたグリムシリーズの数を大きく下回っているではないか!!無駄な徒労だったか…」
足蹴にする老人の亡骸はアルバート・セイル・ヨルムンガルドその人だった。
「続きまして報告いたします!海岸部ハーバータウンにて海賊を制圧致しました!!」
「ご苦労、ではいこうか。おいセナルアックス宝物庫の宝は全てお前が管理しろ。」
皇帝の言葉に隷従の首輪をはめた女性装備に身を包む双剣の青年が膝を折り頭を垂れる。
「イエス、マイロード」
イグニス・ブラド・カルディアンは戦力の強化がまず第一と考え玉座を後にする。 賢帝とまで呼ばれた男は、王国が有するグリムシリーズ等の国宝をまさか貴族に預託しているとは夢にも思っていなかったのだ。
そして、ヨルムンガルド陥落の報を受けたアインシュタット王国は自国も帝国に隣接する事を重く受け止め、世界融合によって新たに出現した広大なる土地を有する盟主との会談をこぎつける事に成功する。 これまでの世界情勢に知らぬ存ぜぬを通し、雲を突き抜けるかの如く聳え立つ広域に広がる城壁にその身を隠したサーバー最大クラン不動国の盟主、不動明王秋定氏との会談だ。
アインシュタット王自ら来られるなれば話を伺いたい。
その一報を受けたアインシュタット王国は直ちに不動国へ向かった。
アインシュタット王は開いた口が塞がらなかった。 まずは不動国の城壁だ。 果てが見えない程高く、そしてそれを可能にする壁の重厚。 その壁を越えた中には信じられない世界が広がっていた。 複数の小さな太陽のような光が上空に散りばめられ、明るく照らされた漠然と広がる広大な街並み、そして街々が放つ異様な輝き。 異常なまでに整えられた道にゴミ一つ無い街並み。
そして果てに聳える東方の龍が絡みつく和風の巨大な城。 アインシュタット王からすれば見た事の無い造形に目を見張っただろう。 そして、ここからあの城まで一体どれほどの日程を要するのかと目眩を覚えたが、それは杞憂に終わる。
それを待ち構えていたかのように黒塗りの高級車がアインシュタット王の前に立ち並んだのだ。 ダブルのスーツで身を固めた屈強な男たちが膝に手をつき頭を下げると一際長い黒塗りの車のドアをスキンヘッドの巨漢の男が開く。
そして中からは震災刈りで短く切り揃えられた頭髪に、全てを睨み殺すような三白眼に羽織袴を着た初老の男が現れる。
「お待たせしてもうたみたいでんな、ワシがここで盟主つとめさしてもろてます、秋定いいまんねん。ほなそこらで茶でもしばきましょか?」
「は、はい!!」
仮にも一国の、しかも大国の王が思わず幼子のような返事を返してしまう。 ひょうきんな喋り方に相反する武人にも放つ者はおらぬであろう異常なまでの威圧感にアインシュタット王は冷や汗が流れ落ちるのを止める事はできなかった。
「ほな、要件だけ先聞きましょか、ワシもこないなったら暇でねぇ、時間はゆっっくりありまっさかい心行くまで話したってください」
そしてアインシュタット王は事細かくに事情を説明していく。
「……と言うわけでして」
「いや、アインシュタット王さん。まどろっこしいんはやめにしましょうや。ワシが聞きたいんはどないしたいか、どないしてほしいか、そういった核心ですわ。」
「では…民の受け入れをお願いしたい……」
振り絞るアインシュタット王の言葉に不動明王秋定はカカカと笑う。
「みなまとめて越してきたらよろしいんちゃいまっか?態々プレイヤー相手に無駄死にするんもアホくさいでっしゃろ?」
「……で、ですが、おめおめと国を明け渡すなど……」
「いやいや、ほな人形劇でもして守ったふりでもしたらええんちゃいまっか?アインシュタット王とその兵隊さんらそっくりの人形さんに」
「……そんな事が可能なのですか?」
「カカカ!できまっせ?なんてったってワシの職業はプレミアでっからな。」
「ですが……秋定氏には何のメリットもござらぬのでは?」
「こんなとこに閉じ込められてシノギの為のRMTも出来んのであれば、組員諸共ダラけてまいますわ。ただの暇潰し…こない言うたら気ぃわるうするかもわかりませんけど、暇を潰せるだけでこちとらデカいメリットですねん」
ニカッと笑う秋定氏に恐る恐るとアインシュタット王を言葉を返す。
「ですが……いかに神に与えられし英雄が持つ天職であろうと、そんな不可能を可能にする職業は……」
秋定氏はタバコに火を付けると煙たそうに片眉を上げ、細めた目でアインシュタット王を一睨みする。
「ワシらが持っとる不動国、この外壁の高さが意味すんのは、堅気の皆さんとは隔絶された世界で生きる言う意味も込めてまんねや、売りもんになるアイテムを手に入れる為に、元々迷宮群生地帯やったこの土地を閉ざして国内には実に大小18の迷宮がありま。ここにわいら6000の構成員は篭り続けプレイヤーレベルを大きく上げ世界100万のユーザーにレアアイテムをRMTで売りさばく事を繰り返して来た。わか りまっか?ワシがなんもせんでも、この世界制圧すんのは赤子の手を捻るようなもんですねん。はじめは色々やる事もあった、せやけど飽いた。そこでワシは手を回して運営から裏情報を手に入れた。全戦闘職、全生産職を死滅にて新たにキャラクターエディットをする事によって現れる職。」
アインシュタット王と護衛の付き人は生唾を飲み込む。 そして不動明王秋定氏は目は笑わずままに煙りを吐き出し笑う。
「ワシ、錬金術師でんねん」
隣接するヨルムンガルドを即座に叩き、これを武力併合した事によりヨルムンガルド王国の国民は命を省みずに昼夜問わず国外への逃亡を敢行し、処刑または拘束される者が後を立たない一種の混乱状態に陥っていた。
虐殺されたヨルムンガルド王族は王国らしからぬ民こそ至上の考えを元に、どうすれば民の暮らしが良くなるのかと、民の為に善政を敷く善王であった。 各国と比べると断然とスラムの規模が小さかったのが、その確たる証拠だろう。
その為、侵略行為による王族の虐殺は王国民に多大な影響を与えた。
貴族達はあまりに早すぎる王都陥落の一報に肩を落とし嘆くと共に王からの今際の際にしたためた書状を受けて行動に移る。
『領地は諦めよ、だが我が王国より預託した国宝に関しての所有権を貴族各位に譲渡する。直ちに編成した軍を率いて民をアイルセム教国、ノースウォール神聖国へ送り届けてくれ。これは王令だ、頼む。』
伝統のある誇り高きヨルムンガルド王国だからこそ、この書状を受け即座に動けたのであろう。 不幸中の幸いか、民の多くは最後まで民を愛した王と忠誠を誓った貴族によって避難する事に成功したのだ。
その一方で王都を陥落させた後にヨルムンガルドの玉座に腰掛け不機嫌そうに手を払う偉丈夫の姿がある。
全身鎧に身を包むカルディアン帝国皇帝イグニス・ブラド・カルディアンある。
「大国ヨルムンガルドが聞いて呆れる。予測されたグリムシリーズの数を大きく下回っているではないか!!無駄な徒労だったか…」
足蹴にする老人の亡骸はアルバート・セイル・ヨルムンガルドその人だった。
「続きまして報告いたします!海岸部ハーバータウンにて海賊を制圧致しました!!」
「ご苦労、ではいこうか。おいセナルアックス宝物庫の宝は全てお前が管理しろ。」
皇帝の言葉に隷従の首輪をはめた女性装備に身を包む双剣の青年が膝を折り頭を垂れる。
「イエス、マイロード」
イグニス・ブラド・カルディアンは戦力の強化がまず第一と考え玉座を後にする。 賢帝とまで呼ばれた男は、王国が有するグリムシリーズ等の国宝をまさか貴族に預託しているとは夢にも思っていなかったのだ。
そして、ヨルムンガルド陥落の報を受けたアインシュタット王国は自国も帝国に隣接する事を重く受け止め、世界融合によって新たに出現した広大なる土地を有する盟主との会談をこぎつける事に成功する。 これまでの世界情勢に知らぬ存ぜぬを通し、雲を突き抜けるかの如く聳え立つ広域に広がる城壁にその身を隠したサーバー最大クラン不動国の盟主、不動明王秋定氏との会談だ。
アインシュタット王自ら来られるなれば話を伺いたい。
その一報を受けたアインシュタット王国は直ちに不動国へ向かった。
アインシュタット王は開いた口が塞がらなかった。 まずは不動国の城壁だ。 果てが見えない程高く、そしてそれを可能にする壁の重厚。 その壁を越えた中には信じられない世界が広がっていた。 複数の小さな太陽のような光が上空に散りばめられ、明るく照らされた漠然と広がる広大な街並み、そして街々が放つ異様な輝き。 異常なまでに整えられた道にゴミ一つ無い街並み。
そして果てに聳える東方の龍が絡みつく和風の巨大な城。 アインシュタット王からすれば見た事の無い造形に目を見張っただろう。 そして、ここからあの城まで一体どれほどの日程を要するのかと目眩を覚えたが、それは杞憂に終わる。
それを待ち構えていたかのように黒塗りの高級車がアインシュタット王の前に立ち並んだのだ。 ダブルのスーツで身を固めた屈強な男たちが膝に手をつき頭を下げると一際長い黒塗りの車のドアをスキンヘッドの巨漢の男が開く。
そして中からは震災刈りで短く切り揃えられた頭髪に、全てを睨み殺すような三白眼に羽織袴を着た初老の男が現れる。
「お待たせしてもうたみたいでんな、ワシがここで盟主つとめさしてもろてます、秋定いいまんねん。ほなそこらで茶でもしばきましょか?」
「は、はい!!」
仮にも一国の、しかも大国の王が思わず幼子のような返事を返してしまう。 ひょうきんな喋り方に相反する武人にも放つ者はおらぬであろう異常なまでの威圧感にアインシュタット王は冷や汗が流れ落ちるのを止める事はできなかった。
「ほな、要件だけ先聞きましょか、ワシもこないなったら暇でねぇ、時間はゆっっくりありまっさかい心行くまで話したってください」
そしてアインシュタット王は事細かくに事情を説明していく。
「……と言うわけでして」
「いや、アインシュタット王さん。まどろっこしいんはやめにしましょうや。ワシが聞きたいんはどないしたいか、どないしてほしいか、そういった核心ですわ。」
「では…民の受け入れをお願いしたい……」
振り絞るアインシュタット王の言葉に不動明王秋定はカカカと笑う。
「みなまとめて越してきたらよろしいんちゃいまっか?態々プレイヤー相手に無駄死にするんもアホくさいでっしゃろ?」
「……で、ですが、おめおめと国を明け渡すなど……」
「いやいや、ほな人形劇でもして守ったふりでもしたらええんちゃいまっか?アインシュタット王とその兵隊さんらそっくりの人形さんに」
「……そんな事が可能なのですか?」
「カカカ!できまっせ?なんてったってワシの職業はプレミアでっからな。」
「ですが……秋定氏には何のメリットもござらぬのでは?」
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ニカッと笑う秋定氏に恐る恐るとアインシュタット王を言葉を返す。
「ですが……いかに神に与えられし英雄が持つ天職であろうと、そんな不可能を可能にする職業は……」
秋定氏はタバコに火を付けると煙たそうに片眉を上げ、細めた目でアインシュタット王を一睨みする。
「ワシらが持っとる不動国、この外壁の高さが意味すんのは、堅気の皆さんとは隔絶された世界で生きる言う意味も込めてまんねや、売りもんになるアイテムを手に入れる為に、元々迷宮群生地帯やったこの土地を閉ざして国内には実に大小18の迷宮がありま。ここにわいら6000の構成員は篭り続けプレイヤーレベルを大きく上げ世界100万のユーザーにレアアイテムをRMTで売りさばく事を繰り返して来た。わか りまっか?ワシがなんもせんでも、この世界制圧すんのは赤子の手を捻るようなもんですねん。はじめは色々やる事もあった、せやけど飽いた。そこでワシは手を回して運営から裏情報を手に入れた。全戦闘職、全生産職を死滅にて新たにキャラクターエディットをする事によって現れる職。」
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