10年間修行した反動で好き勝手するけど何か問題ある?

慈桜

34

 いっそがしいわぁ、もうぅ。 やっとの事で海を見渡せる丘の上に辿り付いた。 そこには無残に転がるリャンシェンの兵達の姿だ。 それを守るように立つリャンシェン。 そんな生き様的なんはどーでもいいからこいつら助ける努力をしろ。 身が引き千切れてもがき苦しむ者や既に意識を失ってる者。 いかに魔導砲とやらが凄まじかったかを物語っている。
 内臓飛び出てる奴とか優先しようか。
「おい、お前戦えるなら人間になってもいいか?」
「ぁ…ぁぅ……」
 小さく頷いた。 多くは語れないのだろう。
 俺はこんな調子で50数名中41人を魔魂化した。 残り10数人は残念だが、すでにこときれてしまっていた。
 リャンシェンは助からなかった部下を前に胸に左手を添え右手を握りしめ地面に拳を叩きつけた。
「今は暫し休め」
 リャンシェンなりの葬送句なのだろう。 俺も手を合わせて冥福をお祈りした。
「リャンシェン、カルマは?どうせレーザーみたいなんで船爆破でもしたんだろ?」
「いえ…カルマ様は…あの船が欲しいと単独撃破に向かいました。」
「ええぇ?船ぐらい造ってやるのに。」
 海の方へ振り向くと、夕陽に照らされた地獄の処刑人の姿が目に映った。
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「ぎぃやあああああ!!!」
「キャハハハハハハ!!きさまら!!このカルマを楽しませてみろ!!」
 突如甲板に降り立った少女は目前の男の足を握り潰した直後、真上から頭部を踏みつけると車に轢かれたトマトのように男の頭はグチャッと潰れた。
「ははは!!弱いなぁ!!弱いぞぉ!!……弱い癖に我等の戦士を侮辱したツケは高くつくぞ?」
 ただ一方的な殺戮であった。 四肢を引き千切り海に投げ捨てを繰り返し凄惨な悲劇を五体不満足の状態でまざまざと見せつけられた後に周囲に湧き出たレッドシャークの群れの中に髪の毛を掴んだまま投げ入れる。
「ひぇぇぇぇ!!!悪魔だ!!悪魔だぁぁぁ!!!」
「ほう、よくわかったのう。汝には褒美を遣わそう。」
『死に勝る恐怖を永遠に味わうが良い』
 刹那、男の全身がブロックのような細切れにした多面体になる。 死ぬ事を許されない不自由な体、二度と戻る事の無い絶望感。
「心配するな、人に組み立てて貰えば元に戻る」
 ニヤリと笑った直後バラケタ体の頭部を蹴り飛ばし海に落とす。
「まぁ、部品パーツがあればと付け足すがな。」
 恐らく、男は死ぬ事を許されぬまま海の底で永遠に生きる事になるだろう。 それからも四隻の船の上では血の花が咲き乱れた。 ただ、一方的な虐殺。 だが簡単には終わらなかった。
 海賊船には、一隻につき1人の凄腕追跡者が搭乗していた。 カルマが殺した乗組員達も、それなりに追跡者はいたのだが、数的には軍人の方が多かったのだ。
「今回のルート別の裏ボスって女の子かよ!!」
「けどやっぱり強いには強いみたいだな!!雷々亭が領地開発する為のデマかとか思ったけど」
「まぁ、まぁ、ボス戦楽しもうよ」
「簡単に死んでくれるなよ?」
 四人の指揮系統についていた凄腕の追跡者達はファーストアタックを取る為に即座にスキルを発動する。
『武王・殺人流闘気開放』
『影術・宵鴉』
『召喚魔装・星喰蛇』
『竜殺しの長弓』
 殺戮を続ける金髪の少女カルマに怒涛の攻撃が押し寄せる。
 1人の男が金剛の拳を連撃で繰り出し、影より出でし無数の鴉が鋭い嘴を向け襲いかかる。 味方の体をすり抜けカルマにのみ襲いかかるのだ。 そして巨大な蛇と融合した少女が引き裂かんとかぶりつく。 そしてその連撃を掻き消さんばかりの巨大で真紅に染まる長弓から一撃必殺の矢が放たれ…カルマの体を貫いた。
 そう、確かに貫いたのだ。
「やったか?」
「ははは!それ言ったら駄目なやつじゃね?」
 金剛たる拳を一身に受け、無数の鴉に体を食い破られ、大蛇に身を引き裂かれ脳天に矢が突き抜けた。
 ゴポッゴポッと赤いゼリーのような物体が辛うじてカタチを残したカルマの体から溢れ出す。
 次第に体の容量を超える赤いゼリーが膨れ上がり一気に凝縮され、その姿を象る。
「ほう、やはり主君の元で研鑽を重ねた日々、無駄では無かったようだのう」
 首を二度捻り体の調子を確かめるソレは天を貫く程の邪気を開放した。
「お、おい邪悪なる大公イビルデュークって戦えるんだったか??」
「クランの合戦の敗北者の国を丸呑みするジャッジ的な役割だったよね?」
「やってみる?」
「魔界を統べる最上の悪魔より土地を与えられし大悪魔、勝てる道理はないのう。」
 直後、手を翳し握り込む動作のみで四人の追跡者達は粉塵に帰した。
 だが直後、カルマ女史に悲劇が襲う。
「あっれぇー?カルマちゃん?その気持ち悪い姿二度と見せるなって言ったよね?」
 カルマの主君による鉄拳制裁おしおきはこれより三日三晩休憩無しで行われた。
「だずげでぐだざいぃぃぃぃ」
「オラッ、こっち向けオラそこ座れ!座れコラ」
『ボマイェーーーー!!!』
 助走から繰り出される膝蹴りにカルマは涙を流した。




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