10年間修行した反動で好き勝手するけど何か問題ある?

慈桜

17

 まず、騎獣部隊はサンシェンを指揮官に北の家畜地帯から抜け西の森から見た右方、東の山岳地帯へ機動力を活かし移動を開始する。
 その間、こちらは防衛の為の陣形を一糸乱れぬ動作で組み立てて行く。
「やっとだね、主」
「あぁ、そうだなイーシェン。敵の大将が話しのわかる奴ならいいがな。」
 地響きにも似た揺れと共に大きな身体のゴブリンが声を荒げ特攻してくる。
「来たぞぉぉ!!構えろぉぉ!!!」
 リャンシェンの檄に槍部隊は応と答え槍を構える。 敵軍はこちらの情報を集めていたのか掘に丸太をかけ攻めたてる。
「引くな!!確実に刺し殺せ!!」
 90からの鋭い槍部隊の刺突になす術なく先陣は掘の中に転げ落ちていく。
 槍を引かれ巻き込まれる者もいるがこちらの圧勝と言ってもいいだろう。 だがまだまだ向こうは力を残している。
「まだまだ気を抜くな!!第二陣の後に本隊がくるぞ!!」
 俺も声を荒げる。
「主君、ゴリラ共は間に合うのでしょうか?」
「間に合えばこちらの勝利は揺るがん、だが、間に合わずとも勝ってみせる!!!」
 カルマもすぐに顔を引き締め自分の持ち場に戻り丸太の橋を投げ落とす。
『グギギャァァアアアア!!!』
 第二陣、これらは槍の投擲部隊と見ていいだろう。 こちらの数を確実に減らしておき、本隊と合流と言う算段か。
「怯むな!!槍の数は少ない!!乗り切れ!!」
 こちらも石などをなげて応戦するが、やはり勢いが違う。 こちらの兵もかなり削られ始めている。
 そこで本隊がそろそろ姿を表すはずだが……………。
 来ない。成功か??
 マッピングで確認すると東の山岳地帯から赤い点が味方の青い点に追いやられて敵本隊に突っ込んで行く。

「勝ったな………」
 安心も束の間、敵本隊は進軍速度を上げこちらに猛スピードで攻めたてる。
「来るぞ!!!敵本隊だ!!構えろぉぉぉ!!!!」
 東方山岳地帯の牙猪ファングボアにゴリライダー部隊をけしかけ本隊の横っ腹から突っ込ませてから蹂躙する作戦だった。
 だが………敵の総大将そして以下のホブゴブリン達は牙猪の背に跨り味方を轢き殺しながらこちらに猛進する。
『おもわぬ味方を手に入れたぜぇ!!!!!』
 獰猛に笑う敵の総大将が何を言わんとしているか長いゴブリン生活で即座に理解できた。
 最前線では本隊の歩兵隊とゴリライダー部隊の交戦が始まったようだ。
 下っぱ共は命を省みずに牙猪に乗ったまま掘へ突っ込み道を作ると敵将がこちらの槍部隊を轢き殺し攻めたてる。
 一際大きな刀鹿の角を牙猪の耳に尽きたて絶命させると身を翻し地に降り立つ。
『そこな白い同胞!!将と見受けられる!!いざ尋常に参る!!』
「いやいやいや、主殿は指揮官様では在らせられるが総大将は俺なんだよなぁ」
「いいよ、イーシェン。俺が行く」
「あるじぃ!!俺が行きますって!!」
 イーシェンと押し問答をしてるいると背後から声が響く。
「我が君に向かって刃を向けるとは面白い。命はいらぬと見受けられるが?」
 ランスを構えたカルマが不適に笑う。
『あぁ?メスの相手なんかしてられるか!!これは戦なんだよ!!しかもお前ら何喋ってっかわかんねぇわ』
 刹那。
 カルマのランスの一閃が敵将のゴブリンの顔を掠める。
「ほう、これをかわすか。」
『ッツウ、てめぇぇ!!!!犯してやる!!犯してやるぞてめぇ!!!!』
 二刀流の目にも止まらぬ速さの剣閃を危な気なくかわしランスを叩きつける、刀鹿の角はその衝撃に耐えきれず粉々に砕かれる。
 残す一本の角で更に攻めたてるが全てかわしていくが……最後にカルマの頬を掠り血が流れる。
 その様子にイーシェン、リャンシェンはガクガクと震え始める。
「きさま、ただで死ねるとおもうなよ?」
 だがこうなってしまってはこちらのペースだ。
「おいカルマ。殺すなよ?教育しろ」
 教育の言葉にカルマは口角を吊り上げランスを捨てる。
 グチャ。
 拳が鼻を潰す音が響くと、そこからはただ一方的な暴力が続いた。
 顔は原型を止めず腕や足は明後日の方向を向き余すところなく拳が振り抜かれて行き、終いには仮想体の拳にまとわりつく竜鱗が剥がれ落ちる。
「俺達の勝ちだ」
 静寂から勝利の雄叫びが上がるまでそう時間はかからなかった。


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