10年間修行した反動で好き勝手するけど何か問題ある?

慈桜

15

「こぉぉのクソ悪魔っ子がぁ!!!」
「ごめんなしゃいぃぃぃぃいたいぃぃぃぃ」
 今目の前で正座で号泣する悪魔幼女に説教と言う名の本気のビンタを炸裂させている。
「ケツ出せ!!オラっ!!ツルツルのケツしやがって!!」
「おしりはぁ!おしりはやめてくらはいぃ!!」
 うっさいだまれ!! 俺の遊びの邪魔しおってからに!
「俺は短剣と指輪を拾ってこいって言ったよな?」
「ふぁい、そのとおりでしゅ」
 頬を腫らす幼女の姿には胸が痛むがコイツの本体はぴぎゃーな上位悪魔だ。 甘やかしてたら大変な事になる。
 落し物を拾いに行って森を破壊して生き物を虐殺する小娘など説教以外に何があろうか? これがもし、人里で荒れくれ者の冒険者に絡まれた俺が波風立てないように謝り倒してごめんなさいをしたとする。 そしたらこいつは街の人間を壊滅に追いやるだろう。
 駄目だ。そんなの駄目だ。 ダメ、絶対!だ。 人間やめる前にこいつは元から、ただの悪魔だ。
「絶対服従なら言われた以上の事はするな!!わかったか!!」
「もうしわけごじゃいましぇんでひたー!!!」
 クソ。ベリーハードモードが一気にイージーモードに変わった気分だ。 西の森はもっと苦労して落としたかった。
 まぁ、過ぎた事は仕方ない。 次の強敵を求めて仮想体に戻るか。
「あのぉぉ、主君……」
「なんだ?」
「そのぉ、仮想体を…そのぉ……」
 こいつも来たいと言う事か? まぁ、いいだろう。 仮想体がいかに弱いか知ればすぐにもあきらめるだろう。
「仮想体ではかなり力を失うが……かまわないか?」
 うわぁぁ、めっちゃ目ぇキラキラさせてるわぁ。 うっとおしいわぁ。
「かまいませぬ!!主君の側にいられるのであらば!!」
「ワウぅぅぅぅ」
 ライが置いて行かれる事を察したのか角を擦り付けてくる。
「ライは留守番な!ごめんな、頼りにしてるから」
「ワン!!」
 任せて!!と尻尾を振りまわす姿にほっこりしてしまう。 その後無事に仮想体に戻れたワケだが、悪魔っ子の仮想体が女型に変化してるのが納得が行かないが気にしたら負けだろう。 早速集落へ急ぐ。
「主!!無事に戻られましたか!!」
「ああ、遅くなった、すまない。」
「何を仰いますやらってそちらの方は……?」
「件の悪魔っ子だ。」
「「ひぇぇぇぇ!!!」」
 イーシェンとリャンシェンは腰を抜かして後退りしてしまう。 絵的には面白いが、この先の戦いを考えると勘弁して貰いたいへたれっぷりだ。
「俺と同じく仮想体の身だ。そこまで突出した力は無いから安心しろ。そんな事よりおまえらは至急メスを孕まして西の森の守りを固めろ」
「御意に!!」
「任せてくだせぇ!!」
 これより数日間は食料の心配は無いだろう。 問題は北と東か……。
「おい悪魔っ子、狩りに行くがどうする?」
「我主君の刃となりて」
 次に目指すのは北だ。 北で食料を備蓄し、戦力の拡大と共に一気に北上。 石弓の小鬼共とぶつかる。 そこを押さえれば水源と食料には困らなくなる。 問題は黒豹か、俺と悪魔っ子で狩りとれればいいが。
「主君、刀のような角を持つ鹿の群れが見えます。」
「うん、刀鹿ソードディアだな。動きが速い上に角で刺されると厄介だ、遠距離が好ましいが……」
「では魔法で……??出ない!?」
「この身体は吸収した魔素を主に使うように設計してある。元々の内蔵する魔素じゃお前の高位魔法は使えん。」
 悔しそうに地団駄を踏むが仕方あるまい。そうでもしなければ即座に森ごと消滅しかねん。
「耐えろ。修行だと思えばいい。師匠が言うには戦略兵器でマジックキャンセラーと呼ばれる広範囲の魔素封じも存在すると言っていた。そうなれば今とあまり変わらん状態になる事もあるはずだ。力に溺れず出来る事を確実にこなす。大事な事だぞ」
 まぁ、人間様と戦争する気なんてないんですがね、一応ね。 この手のバトルジャンキーこう言う説明が響くんよね。
「ありがたきお言葉痛み入ります」
 さて、刀鹿だが。 戦力強化の為にもあの角は頂いておきたい。 これで歩兵の槍仕事は格段と増すだろう。
「よし、初手は俺が行く。悪魔っ子は右方より背後をつけ!!」
「承った!!」
 先手必勝って奴だろ。
『我が意に従い敵を穿て』
 まず三頭の刀鹿の首を落とすと条件反射で踵を返し逃げる群れ。
「まだイケる!!!!」
 更に麦を刈り取るように横薙ぎに脚を胴体から切り離す。
 そこに何処から取り出したのかランスを構えた悪魔幼女の仮想体が刀鹿を串刺しにして行く。
「甘い甘いあまぁぁぁい!!!」
 血塗れの悪魔幼女と俺の追い込みがバッチリと噛み合い刀鹿の群れを半壊まで追いやる事に成功した。
 指輪のアイテムボックスに収納しホクホク顔でさぁ帰ろうかという頃合い。
 そうは問屋がおろしませんよと、噂に名高い黒豹が現れるワケで………。
「デカイ!!」
「フギャャャアオ!!」
 漆黒の毛並みに豹とは考えつかぬ巨大な体躯。 射殺さんばかりの鋭い金色の瞳に外敵を食いちぎるのみに特化した禍々しくも鋭い牙。
「主君…ここは私めが……」
「しかし!!」
「お任せ下さい主君!!強敵を前にして血が踊らねば悪魔の名折れになりましょうぞ」
 くそ、それが、それが悪魔の業だとでも言うのか? ここで自分の命を優先すれば、この先仲間を捨てる事が増えるのでは無いか? しかし、甘えだけでは勝てん…。
「悪魔幼女……お前に名を授ける……お前の名はカルマだ。名に恥じぬ働きをしろ…」
「主君!!主君主君主君!!ありがたく!!ありがたく頂戴いたしまする!!この不肖カルマ!名に恥じぬ働きを!!!」
「フギャャャアオ!!!!!」
 食い千切らんとばかりに黒豹が牙を振り回しカルマに襲いかかるがギリギリの所でランスで弾く事に成功するのが離れた位置からでもわかる。 だが…そう長くは持たないだろう。
「そうだ主君!!…別に勝ってしまっても構わないのだろう?」
 そうカルマが笑顔で振り向いた刹那。
 カルマの上半身が吹き飛び血の花が咲いた。
「なにしてるんですかもぉぉ!!!!!」
 必死で走った先は黒豹の縄張りからは抜けていたようで追跡者は無かった。
「はぁ。また悪魔幼女、じゃなくてカルマの仮想体造ってやらなくちゃな……めんどくさ。」


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