継続は魔力なり《無能魔法が便利魔法に》

リッキー

シェリーの誕生パーティー

 今日はシェリーの誕生日だ

 今回の誕生パーティーには、帝国の全ての貴族と外国からの使者が数人来るそうだ。

 パーティーの主役の大変さを知っている俺としては、この多人数を相手していかなくてはいけないシェリーをあわれんでしまう。

 そして、今回のパーティーで俺が楽しめるかとかというとそうでもない。

 なぜなら、主役でなくても俺は公爵家の息子だ。
 だから、絶対にシェリーに相手してもらえないような貴族は俺に来る。

 あと、楽しめないのは暗殺の注意だ...
 結局、今日まで忍び屋は手を出してこなかった。

 だから、今回のパーティーではおじさんが聖女を守り、もしもの為に俺がリーナに付いていることになった。

 守るためとはいえ、パーティには武器の類は一切持ち込み禁止だ。
 だから、俺はアンナ(ゴーグル)だけを持って行くことにした。

 はぁ、憂鬱だな......

 ちなみに現在、馬車で王城に向かっている。
「こんなにゆったりと王城に向かうのは、初めてかも」
 俺はしみじみと独り言を言う。

「え? いつもどうやって行っているのですか?」
 俺の独り言を聞いたリーナが質問してきた。

「いつも? いつもはおじさんに猛スピードで連れてかれたり、自分で走って行ったりとか」

「さ、流石が勇者の家系ですね.....馬車より速く走れるなんて凄すぎますよ!」
 リーナは信じられないと言わんばかりの顔をした。

「そ、そうだね」

「私、たまにレオくんの年齢を疑います」
 え? 疑われてしまってるの!?

「えー 何で?」
 内心では動揺するが平穏を装う

「だって、考えることが大人みたいですし、ステータスがまったく子供ではないですよね」

「そ、そうかなー あ、着いたみたいだよ」
 タイミング良く着いてくれたので話しを逸らす。

「あ、本当ですね」
 そう言って、リーナは外を見た。
 ふぅ、どうやらリーナの気を逸らすことが出来たみたいだ....

 それから、俺たちはパーティーの会場に案内された。
 会場に入ってからは、ばあちゃんと聖女とは別々になった。

 何でも、パーティーの参加者が多くて全員をシェリーが相手出来ないため、直接挨拶が出来るのは同年代の子供だけになっているらしい
 それでも、シェリーは凄い人数の相手をしなくてはならないので大変だ

「広いですねー」
 会場に入るとリーナが立ち止まってそう言った。

「その分たくさんの人が来るんだよ」

「シェリーも大変ですね」

「大変だろうね」
 俺が同じ立場だったらと思うとゾッとする。

 そんな話しをしていると
「おいおい、女と話しているなんていい身分だな」
 ぽっちゃりとした俺と同じくらいの男が、背後に3人の仲間を引き連れて絡みに来た。
 うわ~ テンプレだ....

「ねえリーナ、もうそろそろ始まるかな?」

「そうですね。もうそろそろじゃないでしょうか?」

「おい!俺のことを無視するな!!」
 俺らがぽっちゃりを無視して話していると怒ってしまった。

「はぁ、あんた誰?」
 しょうがないので、俺はため息交じりに聞く

「お前、俺のことを知らないのか? よっぽどの田舎貴族なんだな」
 俺を見て嬉しそうに言う

「まあ、間違っては無いかな?」
 フォースター領は帝国の端にあるから田舎だ。

「なら教えてやろう。俺はあのフィリベール家の長男であるラッセル・フィリベールだ」

「お前も田舎貴族じゃん」
 フィリベール領も西の端にあるから田舎だな。

 そう思い、ぽっちゃりを見るとプルプルと震えていた。
「俺が田舎貴族だと? ふざけるな!」
 またぽっちゃりは怒りだしてしまった。

 めんどくさいなー

 俺が対応に困っていると横から声がした。
「今のはお前が悪いぞラッセル」
 声がする方向を見ると俺たちと同じくらいの歳の男がいた。
 あ、確か....名前はフランクだった気がする。
 俺の誕生日に来てくれたんだった。

「フランク、お前がなぜこんな奴をかばうんだ?」
 ああ、どうやらこのぽっちゃりと知り合いみたいだ....

「お前のためだよ。だって、お前が今絡んでるのはレオンス・フォースターだよ」
 フランクは憐れむように言った。

「はあ?誰だそいつ?」
 そう言いながらぽっちゃりは首を傾げた。

 これを聞いたフランクは
「はぁ、とりあえず問題になる前にどこかに連れて行った方がいいよ」
 と後ろの3人に言った。

 3人は焦って
「ラッセル様、行きましょう」
 と引っ張って行った

「おい、お前ら引っ張るな」

 それを見届けながら
「なんかありがとうね」
 俺はフランクに礼を言った。

「気にしなくていいよ。それより久しぶりだね。この前は少ししか話せなかったけど」

「ふたりはお知り合いですか?」
 リーナが不思議そうに聞いてきた

「ああ、母さんの弟の子供で、俺とは従兄弟だね」

「そうですか。初めまして私は聖女の孫のリアーナ・アベラールです」

「これはどうも、僕はフランク・ボードレールです」

「ボードレール家の方でしたか、私の国がお世話になっています」
 フランクの名前を聞いたリーナは、驚いた顔をしながらそう言った。 

 ちなみに、ボードレール家は代々、教国との貿易を管理しているらしい。

「いえいえ、僕はまだ何もしてないんで。それより、本当にラッセルは馬鹿だね」

「何で?」

「だって聖女のお孫さんに喧嘩を売るなんてことをしたんだよ。下手したら国際的な問題になるよ....」

「まあ、何も考えてないんだよ」

「そうだろうね。あ、姫様が来たよ」
 フランクに言われて入り口を見ると.....綺麗なドレスを着たシェリーが入って来ていた。

「わ~ シェリーのドレス姿がとても綺麗ですね」

「うん、そうだね」

「2人とも姫様と話したことあるの?」

「ありますよ。先週会いました」

「レオも?」

「俺は皇帝が視察に来た時から何回も会っているよ」

「え!? さ、流石フォースター家だ...」
 そう言いながら、俺を羨ましそうに見てきた。

「そうかな? あ、そろそろシェリーにおめでとうを言いに行かないと」
 ぽっちゃりがシェリーと話しているのを見て言う

「うん、そうだね。僕たちが行かないと他の人たちが行けないしね」
 3人でシェリーの所に向かう。

 シェリーの所に行ってみると
「姫様、私は素晴らしい男です。どうでしょう婚約をしてみませんか?」
 ぽっちゃりが恥ずかしいくらい馬鹿なことを言っている

「はぁ?」
 シェリーは聞き返した

「あまりの嬉しさに言葉が出ませんか? そうでしょう、なん「もうやめろよ。嫌がっているだろ」
 思わずムカついたので邪魔しちゃった。
 まあ、ここまで失礼なことを言っているんだから邪魔しても大丈夫だよね?

「お前はさっきの奴だな、なぜ俺の邪魔をするんだ」

「はいはい、すみませんでした。それじゃあ、またね」
 そう言いながら近くにいた係りの人にぽっちゃりを押し付ける。

 すると
「はい、終わった方はこちらです」
 そう言われて、ぽっちゃりは係りの人に連れてかれて行った。

「ふぅ」

「ありがとうね。レオ」

「どういたしまして、ああいう奴の相手もしなくちゃいけなくて大変だね」
 そう言いながら俺は憐みの目をした。

「本当よ。全然楽しくないわ」
 シェリーは、そう言って怒った顔をする。

「うんうん、そうだろうね」

「私はこういう体験はしたことは無いので、大変さはわかりませんが頑張ってください」
 リーナがそう言ってシェリーを励ます

「ありがとうリーナ」

「そうだ、僕の従兄弟のフランクの名前を覚えてあげて」
 俺の背後にいたフランクを紹介する。

「え、えっと、フランク・ボードレールです」
 フランクは慌ててお辞儀をした。

「フフ、これからもよろしくお願いします」
 笑いながらシェリーが答える。
 こういうところはお姫様って感じだな.....

「あ、肝心なことを言ってなかった」
 そう言いながら俺は、ある事を思い出した。

「何を言い忘れたの?」
 そう言って、シェリーが首を傾げる

「誕生日おめ『ドガーン』

「なんだ?」
 慌てて、爆音の方を見ると.....

 聖女の近くでおじさんと知らない男が戦っていた。


 SIDE:ダミアン
 現在アレンとお互い動かず、にらみ合いの状態である

 そんな中、アレンが話しかけてきた
「やっぱり隠れてると思ってたよダミアン」

「僕としては予想は当たったけど嬉しくないね」

「そんなこと言うなよ~ 久しぶりの再会なんだから」

「こんな再開は望んではいなかったんだけどね」

「そうなのか~ 俺は望み通りの再会だ」

「どうして...どうして君は...」

「どうして俺がこんなことをしているかだって? そんなことは簡単だよ。俺はお前と勝負がしたかったんだよ」

「何を言っているんだ? そんなことの為にわざわざ忍び屋に入ったのか?」

「そうだよ。お前は正義になるんだったら、俺は悪になろうと思ってな」

「なんで、俺に勝つことにこだわるんだ」

「俺は学生の頃からお前に勝つことだけしか考えてなかった。学生の頃はお前と毎日戦えたから凄く楽しかったよ。 けど、卒業して働くようになってからはお前と協力する仕事ばかりで本当に退屈だった。いつもお前と協力すると、何でも簡単に終わってしまうんだ。 そして、お前と塔のダンジョンを踏破した時に思ったんだ。 このままでは俺の人生は退屈なまま終わってしまうってな! だから俺は、そうなるくらいなら、お前と反対の悪の道を進もうと決めたんだ」

 アレンはそんなことを陰で思っていたのか.....
「そうなのか......なら、その決断を後悔するくらい僕が叩きのめしてあげるよ」

「おお、怖い怖い、だけど俺は1対1で勝負するなんて言ってないぞ」

「は?」

「これから本当のパーティーが始まるんだよ」
 アレンがそう言うと....ダン!とドアが突き破って大量の黒ずくめの集団が入って来た。
 しかし、会場を警備していたダミアンの部下が前に立ちはだかった。

「どこからこんな兵が?」
 外には、騎士団が警備をしていたはずじゃないのか?

「さあ、どうしてかな?」

「お前...」

「これからはこの会場にいる標的を守れたらお前の勝ち、守れなかったら俺の勝ちの楽しい勝負パーティーの始まりだ」
 アレンは嬉しそうに言った......

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