俺チート能力で異世界楽しむわ

みこじゃ@小説家になろう(誤字脱字常習犯)

第130話 ガルの記憶

 ソウヤは倒れている勇者たちを見下ろしている。

(正直こいつらを殺してやりたいところだが、こいつを殺したところで俺に得はない。しかし、このまま放置してもまた俺たちに攻撃を仕掛けてくるだろうな。どうしたもんか)

 ソウヤは殺さずに勇者たちを追い返すというよりかはもうガルに攻撃をさせないようにするにはどうしたらいいのかと考えていた。

(マスター、ガルさんがよろしければなんですけどガルさんの記憶の断片を見せるのはどうでしょうか。そうすれば勇者たちもわかってくれるのではないでしょうか?)

 ソウヤはアストの話を聞き、ガルのもとへと向かった。

「ガル、ガル。」

 ソウヤはガルの肩を揺らした。ガルはまだ体が痛むのか少し動くだけで痛そうな顔をした。

「悪いんだが、お前の記憶を貸してくれないか?」

「い、いいが何に使うんだ?」

「まぁ、お前の潔白を証明するためにな。」

 ガルの承諾は受けた。ソウヤはガルの魔王の選抜から自分と会うまでの記憶のコピーを取った。コピーを取るということはソウヤもガルの記憶を受け取るということ。その時にガルがどう思ったのか、どう感じたのかということも受け取る。ソウヤは知らずのうちに涙を流していた。

「ありがとう、ガル。つらかったんだな。」

 ソウヤはガルを寝かせてあげた。ソウヤは勇者たちを並べて寝かせた。最初に全員に回復魔法をかけ蓄積されたダメージを消してあげた。

「さぁ、ガルがどういう思いで魔王になったのか、どういう思いで過ごしてたか感じてもらうか。」

 ソウヤはガルから借りた記憶を勇者たちの夢の中へと流れ込ませた。


 勇者たちは同じ夢を見た。自分たちが魔王と呼んでいた少女の記憶なのだろうか。勇者たちは流れ来るその光景から目が離せなくなった。

「今回の魔王は女か。しかも、温厚派のやつだとよ。」

「全くあいつらはあんな奴にまけたのか。」

 先代が数年前に勇者に殺されて魔王選抜というものが行われた。魔王選抜というものは魔王の座をかけて数年にわたり戦い続けるものである。それが終わるまで十二天星が政治などを取り仕切ることになっている。

「私は、すべての種族との戦いをやめます!」

 ガルが就任あいさつのときに言った言葉。その言葉は多くの温厚派の魔族に希望の光を与えるものであり、また過激派の魔族も温厚派になったのだが。有力の過激派がガルの意思に反してほかの種族を攻撃し始めていた。ガルはそれを止めようと政治的圧力を加えて攻撃をするのを抑えた。

「これで、平和な国が作れるだろうな。」

 しかしそれは長くは続かなかった。抑えられていた過激派が裏から十二天星に手を回し始めた。もともと十二天星は過激派よりのやつらが集まった集団なので協力してもらうのに苦労しなかった。

「なんでだ!お前らはどうして人族を殺した!」

 ガルは過激派がたびたび起こす他種族への攻撃に怒っていた。最初は通りかかった商人たちを殺したり、迷い込んできたやつを殺していただけだったがそれも過激さを増していき、魔族の領土の近くの村の住民を殺していくようになった。おかげで、また勇者一族が勇者を育成し始めたとの報告も受けた。
ガルは過激派の行為の処理に追われていき女らしさを捨て始めて、自分のことを私ではなく俺と言い始めた。魔族の間では事実とは異なる噂が流れ始め、ガルはたまに聞こえてくる自分への悪口が心に突き刺さり一人部屋で悩んでいたこともあったが時がたつにつれてガルの心は固く閉ざされ始めてしまった。
 
しかし、少女の不幸はそれで終わらなかった。十二天星がガルのことを王の間に閉じ込めてしまった。閉じ込めた理由というのが
「勇者が魔王を狙っているとのことなので王の間だけにいてください。」
らしい。しかも、経済から軍の統率まですべてかっさらわれてしまった。そしたらどうなるか、当然過激派ぞやつらが軍を持てば今までのような小規模なものではなく大規模に他国を滅ぼそうと動き始めるだろう。ガルはそれを防ごうと何度も王の間を脱走しようと試みたが幾度と失敗した。

「平和にするなんて無理だったのかな?」

 ガルはいつしか自分の夢をあきらめ始めてしまった。そんなことを考え始めて数年目魔王城に一人の人族の少年がガルの目の前に現れた。ガルは自分を殺すためにやってきた人族かと魔王として堂々とした態度で少年に問うた。

「全く、なんなんだ。俺を倒して英雄になろうというのか?昔の人族、勇者のように。」

 威嚇しながら言ったからその少年は声が出せず体も動かないのだと思った。しかし、全く違った。実力の差がありすぎる。全く勝てるイメージがつかない。圧倒的な強さ、魔力、こんなやつに勝てる奴なんているのか?少年にマウントポジションを取られて顔の横に剣を突きつけられた。

「見ての通りお前の命は俺の手の中にある。だからお前の命は俺のものだ。一緒に来い。今の魔王軍を叩きのめすために手を貸せ。」

 少年は手を刺し伸ばされその手を取った。こいつとなら魔王軍を正せる気がするそんな確信が持てた。

「いいだろう、魔王軍を内側から変えることはできないが、お前と一緒なら外側から変えられるかもしれないな。」

 始めてガルに希望の光が見えた。


「うぅ…何だったんだ今の夢は、あれは魔王なのか?」

 勇者はそんなことをつぶやきながら立ち上がった。ほかのやつらも起き始めた。

「どうだったか、ガルの記憶は。」

 勇者たちの前にはソウヤが仁王立ちしていた。

「俺チート能力で異世界楽しむわ」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く