Red&Wolf

キロ

4話

「赤ずきん。もう、森へ行くのはやめなさい。」


朝から言われたこの一言に赤ずきんは言葉を無くしました。
ようやく広がった世界がまた狭まる…そんな感覚に陥りました。
「ど…どうして…ですか?」
震える声で聞くとお母さんは笑顔で言いました。
「人を食べる狼が出てるのに森に行ったら危ないでしょ?それに食べられちゃったらどうするのよ?」
「狼さんはそんなこと…しない。」
「分からないわよ?いつ食べれるか考えているかも。この街にずっといれば安心よ。皆、貴女を守ってくれるもの。」

束縛と言う方法で……。
それは赤ずきんはよく分かっていました。
なにせ昔からなにかしらの束縛の中生きてきたのですから。
「ね?だから赤ずきん。森に行こうなんて考え……」
「お母さんは何もわかってない。」
お母さんの言葉を遮る赤ずきん。
その目は今まで怯えていた少女だと思わせないほどの力強さがありました。
「お母さんだけじゃない。この街の人、皆私のことをわかってない!!勝手に決めつけないで!!」
感情が前に出ている赤ずきんを見るのが初めてだったお母さんは驚きを隠せませんでした。
「もう私は皆の人形は嫌なの!!私は1人の人間なの!!感情を持つ人間なの!!それなのに皆、都合のいいように私を使う……。そんな人達に守られたくない!!!」
ふと、赤ずきんは狼の事を思い浮かべました。
狼といたあの時間。それが唯一の安らぎだったこと。狼と笑い合ったあの日々…全てが赤ずきんの中では大切な思い出になっていました。
「皆に守られるより……狼さんに守られる方がいい!!!!狼さんはすごく心優しいの!!!私を初めて人間だって言ってくれた人なの!!!!私に感情を教えてくれた人なの!!皆、悪者…悪者って言うけど、みんなの方が悪者だよ!!!!狼さんのこと何も知らないのに……悪く言わないで!!!!!!」

一瞬の沈黙。深いため息をつくお母さんに赤ずきんは恐怖を覚えました。
「人形が…人形をやめるって?バカバカしい。あんたは一生人形として生きていくの。それは変わらない事実なのよ。」
「それは私が決める。もう……縛られるのは嫌。もう…人形は嫌なの。」
「……そう。でもいいのかしら?貴女の大切な狼がどうなっても。」
「え?どういう……こと…です…か?」
お母さんの言った言葉に赤ずきんは急いで森に向かっていきました。
「狩人達が狼を殺しに行くって言ってたのよねー。さて…どうなるかしら。もしかしたらもう……死んじゃってるかもよ?」

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