Red&Wolf

キロ

1話

昔むかしの大昔。
森の中にある小さな小屋。
そこにはお母さんと1人の少女が暮らしていました。
少女はよく赤いずきんを被っていたので皆から赤ずきんと呼ばれるようになりました。
赤ずきんは皆から優しく優しく育てられていました。

事実上は………ですが。


皆…とは言っても特にお母さん、おばあさん、狩人は赤ずきんを人と見なしておりませんでした。
有効活用できるかわいいかわいい人形。
そう。赤ずきんは彼らに操られているだけの…可哀想な人形でした。
それに気づいていても何も言えない…何も出来ない……。
いつだって彼らの言う通りの赤ずきん。
いつしか彼女は自分の意志を捨て始めました。
何をしたって「だめ」「いけないこと」。
命令に歯向かえば、怒られる。
命令に従えば「いい子だね」と褒められる。
それがたとえ……この世では起こってはいけない悪い事だとしても。
そのようにしつけられた赤ずきんは自分の意志を持たない人形となりました。

その時からでしょうか。
昔は素敵な笑顔を見せていたはずの赤ずきんはもう、心から笑うことがなくなりました。
一生断ち切ることが出来ないがんじがらめの糸に永遠に縛られる日々が続きました。
「助けてください…お願いします…」
そんな声は……助けを求める声は……誰にも届きませんでした。
綺麗な瞳はいつしか光を失い…
いつしか彼女は頭巾を深くつけるようになりました。
こうすれば人の目を見なくて済むから…。
昔は綺麗だと思っていた街。
今の赤ずきんには自分を縛る暗い怖い街だと思うようになりました。


「いい?赤ずきん。貴女は凄くかわいいかわいい人形(こ)なの。お母さんの自慢の子よ。」
重圧。
お母さんの過度な期待が赤ずきんを苦しめていました。
それに耐えきれなくなった時は部屋に閉じこもり1人声を上げずに泣き続けていました。
赤ずきんの部屋だけが…彼女の唯一の落ち着ける場所となっていました。

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