根暗勇者の異世界英雄譚Ⅲ 〜闇魔法を操る最弱な少年の話〜

雨猫

Ep(3)/act.8 暴走と真相


シンスケ視点


「よし、エドも戻ったな」
「あ、アルとアカネちゃん!早いな〜!」

アルが最初に戻って来た。これは流石と言うべきか。アカネも克服したみたいだ。

さて、残るは…サクラだけだな。

「サクラくん…大丈夫ですかね…」
「どうだろうな…あいつ感情を爆発させる時あるからそれだけが心ぱ…」

その時、サクラの体から大量の魔力が放射された。

「うう…うわあああああああ!!!」

「サクラくん!?」

アカネが心配そうにしている。

「なんだこの大量の魔力は…!ガゼル、今すぐ数値を読み取ってくれ」

「えっと、
魔500,000 攻90,000 防74,000 総664,000!」

「魔力500,000だと!?イフリートなんか掌で転がせるレベルだぞ!!」

流石のアスラも慌てていた。

「こ、これは成功なのか!?」

魔力姐さんも焦っているようだった。

「いや…これは克服とは違う…暴走だ」

「暴走だと!?早くやめさせた方が…」

「いや、様子を見てみよう。あいつなりに変わってきてるのかもしれない…」



サクラ視点


もういいよ。もういいから。やめてくれ。

何故か分からないけど、笹山くんをボコボコにしていた不良たちは手を止めた。
そして、僕を見て何か叫んでいる。

なんだ。何も聞こえない。なんだ。
笹山くん。笹山くんは大丈夫かな。

「ささ…や…ま…くん…」

「く、来るな化け物!!!!!」

え、化け物?どこに?僕が?あれ?
笹山くんは何を言っているの?

僕は自分の手を見た。
黒くてギトギトした爪の長い手だ。
まるで図鑑で見た恐竜みたいだ。

そうだ。そんなことより笹山くん。

笹山くんを助けないと。

逃げ出す不良たちを見て僕は拳を振るった。
不良の一人の体が、車よりも早い…例えられないけど凄いものにぶつかったってくらいに飛んで行った。

あ、そっか。試練だからこんなになるんだ。
僕は実は無敵だったのに、何をそんなに恐れていたんだろうか。

気持ちいいな。前にもこんな風になったな。
でもなんだか、いつもよりいい気分だ。

「サクラくん!サクラくんもうやめて!」

あれ、この声…誰だっけ…どこかで…。

「今魔力姐さんを通じてサクラくんの夢の中を見てるの!サクラくんは何をしたいのか思い出して!人を傷つけることがしたいの!?」

違うよ。僕は…僕は。



目が覚めたらアカネちゃんが心配そうな顔で僕を覗き込んでいた。

「あれ…これ試練…」

「試練はもう終わったんだ」

シンスケさんが答えてくれた。

「あの…成功でしたか…?」
「半分成功だが、半分失敗だ」

「よかった…元のサクラくんだ…」

「今回はアカネに感謝しろ。アカネがいなかったら確実に失敗…それどころかお前自身が喰われていたかもな」

「えっと…喰われる…?」

「ああ。今回の試練で分かったことが二つある。まず、お前の魔力上限は500,000。今までの転移者では桁違いの数値だ。半分成功って言ったのは上限まで引き出せていないから。魔力が上がったことには上がったから、成功と言ってもいいだろう。現在の魔力レベルは40,000ってとこだな」

「無意味でないだけ良かったです…」

「まあな。イフリートの問題はみんなの上がった魔力レベルで打開策を考えるとして、また一つ問題ができた」

「問題ですか?」

「そうだ。これがもう一つの分かったことなんだが、お前のその魔力はお前のものであってお前のものじゃない」

「僕のものじゃない…?」

「お前の体の中には、この世界の災厄と呼ばれた魔獣が封印してある」

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