根暗勇者の異世界英雄譚Ⅲ 〜闇魔法を操る最弱な少年の話〜

雨猫

Ep3/act.8 強大な魔力


「サクラ、物は試しだ。前に話してくれた、レオンとの戦いでやった時のような、自分に向けての【死体吸収デッド インヘイル】をやってみてくれ」

「分かりました」

シンスケさんの提案で僕は自分の周りに黒い円を広げた。
そして、以前のように黒い円は僕を包んだ。

やっぱり、以前ほどの死体はない。
これじゃあ、あまり意味がないんじゃ…。

黒い円は奥の方から僕に近づいてくるように消えていった。
それを見てシンスケさんはガゼルに指示する。

「よし、ガゼル。サクラのステータスを見ろ」

「えっと、
魔4,200 攻1,500 防2,300 総8,000
だね」

「うーん、普段のサクラと比較すれば全然凄いけど、これじゃあ勝てないな…」

「ステータスアップは死体の数も関係してくるので、多くの死体が溜められればもう少しは上がるかもしれません」

「いや、憶測だけど、この前の異常な程のステータスアップはその技とは別と考えた方がいい。事実、ガリア戦でその技は使ってないんだろ?レオン戦の時も、なんなら今も、その技を使用して過大なステータスアップをしても記憶はそのままなのに、ガリア戦では記憶を失ってたんだ。これはサクラがトランス状態にあって、サクラの中で制限されてる魔力が溢れ出したものだと考えられる。何より、ステータスアップすらしていない状態で、アスラが召喚されるのもおかしいんだ。アスラが、『強力な魔力』と言っていたのも頷ける」

僕は何も言えなかった。
しかし、シンスケさんは少しだけ微笑んだ。

「ただ、勝機はあるかも知れない。サクラ、お前が自分でも分からずに掛けている魔力制限さえどうにか出来れば、イフリートはお前が足止めできるんだ。その隙に俺が風魔法を使って瞬足で姫を取り戻せる」

正直、僕は困っていた。
訳も分からずに掛けている魔力制限を解くなんて、どう考えても出来ない。
ただ、僕がイフリートレベルにまでステータスを上げないと、もう手詰まりなのも分かる。

「で、でも…そんなこと僕には…」
「いや、出来るかも知れないんだ。ついでに、アスラの魔力も取り戻せる」

シンスケさんは思い出したかのように勢いよく話していた。

「俺たちの足じゃ遠すぎるから後回しにしようと思っていたんだが、精霊族の国に不思議な力を持つ魔導師がいたんだ。そいつは、失われた魔力を元通りに戻す魔法を使う」

「それならサクラの魔力が跳ね上がれば…!」

「アスラと協力してイフリートですら倒せるかもしれない…!」

全員に希望が見えた瞬間だった。
ただ一人、僕を除いて。

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コメント

  • ノベルバユーザー88435

    おもしろい!更新まってます

    1
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