根暗勇者の異世界英雄譚Ⅲ 〜闇魔法を操る最弱な少年の話〜

雨猫

Ep1/act.2 魔族襲来!?


月明かりは地球のものと比べるとひどく明るく感じた。しかし、城の窓は光をあまり通さない仕組みになっているようで、電気をつけなければ真っ暗闇になってしまうほど暗かった。

レオンは、状況整理と今後の計画を立てる為、しばらく城で過ごす事となった。

「ミカエル、少しいいか」

レオンはナビゲーターに選んだ獣人ビーストの少年ミカエルに声をかけた。

「いかがなされましたか?英雄シルヴァ・レオン様」
「ん〜…固いな。レオンでいい。ところでミカエル、君のことを教えてくれないか?」

「それでは今後はレオン様とお声掛けさせて頂きます。私のこと…そうですね。獣人ビーストには、純血種と混血種に分類されます。魔法にも似たようなものが存在するのですが、純血種とは同じ獣人ビーストのみの血が継がれていて、混血種は他の種族の血が混じっております。どちらの方が優れている、とは一概にも言えないのですが、純血種は獣人ビースト本来の五感が非常に優れ、獣人ビーストらしい能力が強化できます。反対に混血種は、魔法が使えたり、竜の尾が生えていたりするのですが、獣人ビースト本来の五感が薄くなり、獣人ビーストらしい能力も強化できません。戦闘向きと言われれば混血種の方になるのですが、純血種の私の方がナビゲーターとしては最適かも知れません」

「そうか。純血種と混血種で差別がないのは素晴らしいことだな。人間としても見習いたい」
「はるか昔は他の種族と結ばれることすら禁忌とされていたらしいのですが、サタン率いる魔族の前に、ここで争っている余裕はないと悟ったのでしょう。それはそうと!私には5つ下のガゼルと言う弟がいまして!」
「ミカエルには弟がいるのか。一緒に旅は出来ないものか明日にでも聞いてみよう」
「いいのですか!ガゼルも光栄でしょう!」

「ところで…」

レオンが言いかけたと同時に、城中の警報がピーーーーっと悲鳴を上げた。

「ん?何事だ」
「た、ただいま確認して参ります!」

ミカエルは慌ただしく廊下を駆けて行った。
間も無くして、ミカエルと共に先程の進行係マルコが慌てて入ってきた。

「英雄シルヴァ・レオン様。緊急事態の為、私マルコがお伝えに参りました」
「なんだ、何があった」
「転移してお時間もない中で非常に厳しいとは思われますが、魔族が攻め入ってきた模様で、今は城内の警備が防衛しているのですが手を付けられない状況でして…」
「何千年も繰り返し同じ儀式を行っているのだろう?なんとなく想定はしていた。魔族の数は」
「私も直接見たわけではないのですが、変化をする魔族一体となります」
「一体…?攻め入ったにしては少数すぎる。が、やられてると言うことは上玉を送ってきたのだろう。すぐに行く、案内してくれ」

レオンは椅子から立ち上がり、マルコに連れられるまま魔族と応戦している城外へ向かった。
繁華街とは反対に位置する花壇の並んだ裏庭。しっかり手入れされている花壇は、戦闘が起こったにしては綺麗な状態を保っていた。

月明かりに照らされる綺麗な花壇の奥、砂煙の中で応戦している警備だろう獣人ビーストたちは静かに、戦闘とは決して言えないほど静かに、パタリパタリと倒れていく。
そしてその奥に一体の…。

「……人間………?」

向こうも気付いたのか、それとも人間の姿に変化した魔族が私を確認したからなのか、動きが止まった。

「お、お前は…!」

レオンの声を遮る声で魔族が叫んだ。

「待って!!僕は人間です!!魔族じゃない!」

「うるさい!ならばその力はなんだ!魔族にしか扱えない力…騙されないぞ魔族!!!」

叫んだ警備が彼に剣先を向けて襲いかかる。
すると、警備の足元から紫色の円が現れ、瞬く間に戦闘不能にしてしまった。

(なんだ、何がどうなってるんだ…。あいつは見るからに俺と同じ人間。しかし魔族にしか扱えない力と言うことは本当に人間に化けただけの魔族なのか…?)

「警備隊は下がってくれ。俺が戦ってこよう。貴様!魔族であるならば欲しいのは俺の命であろう!向こうで戦おう、着いて来い!」

背中から大翼を生やしたレオンは、人里の離れた岩壁地帯まで飛んで行った。
魔族も彼を目指して追いかけて行った。

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