自殺を繰り返した俺は異世界転生をした〜最強の俺は異世界で無双する〜

木偶さん

第23話「近くにいるのに会えない少女」

 休日明けにはいつもの、と言われてもまだ数えられる程しか登校していない学校へと足を運ぶ。

 そして、俺はつくづく思う。

 ルイはまだ知り合ってまもない。さらに席が遠い。つまり、会話があまり出来ないのだ。
 ルイに話す気があるかは別だが......。

 メリーは来年Sクラスへの昇級はほぼ確実と言っても過言ではないが、それでも1年かかる。

 セシアに至っては年に3回しかないテストの平均で上位5位に入るのを3回、つまり最低3年はかかる。

 では、誰と時間を潰せばいいのか、いや、言い方が悪かったかもしれない。

 誰とこの若き時間を過ごせるか。

 それは、相席の生徒。
 女生徒だが、入学から一切俺を追ったりしてこないまともな生徒。

 そのような生徒と仲良くしないでどうする。

 しかし、問題点はいくつもある。

 まず1つ!
 休み時間、俺の席の周りにはいつも人が多く集まる。自意識過剰かもしれないが、人気なのだろう。揺るぎない学年1位とはカッコイイものだ。

 そして2つ!
 彼女はいつも勉強に勤しんでいる。実技では見ないので、おそらく勉学を得意とした少女。故に授業中も話しかけづらい。

 さらに3つ!
 昼食時こそチャンスと思ったが、彼女は昼食時にどこかへ行ってしまう。メリーとののんびり昼食を終わらすと休憩も終わりかけている。

 さて、どうすれば良いのだ?

 昼からの授業中に抜け出すか?
 いや、それはまるでただのストーカーだ。

 合法的且つ自然に友達になれるのが1番なんだが......。

 ◇◆◇

 放課後になっていた。

 ......え? ガチで考えてたら授業全て終了していたんだが!?

 こんなに考えても出てこないなら諦めるべきか?
 そんな考えとは裏腹にこの勝負(1人)に負けたくないという感情がふつふつと湧き上がる。

「ねぇ、リューイ? 今日、ずっとボーッとしてたよ? なんかあった?」

「解けない問題があるんだ。単純な思考では答えにたどり着けない。ならば、どうすれば......」

「へ、へぇ......。で、その問題って?」

 若干引き気味のセシアが恐る恐る尋ねてくる。

「友達が欲しいんだ」

 それから沈黙が訪れた。

「そ、そうなんだ〜......。がんばってね〜」

 セシアが明らかに片言なんだが、何か変なことを喋ったか?

「あ、それと......まあいっか、また今度話す」

「なになに? 気になるよ」

「同じ事を何度も説明したくないからまた今度の授業でって意味だ」

 セシアは気になると言えば、理解するまで掘り下げてくる。厄介ったらありゃしない。
 何故これを勉強に繋げられないかねー。

「で、友達作りはどうなったの?」

「それを考えてるんだ。隣の席だから話しかける機会なんていくらでもあると思ったら案外ないんだ」

「ふーん、でその隣の子っていうのは男の子? 女の子?」

「基本相席は異性だろ?」

 何を今更、というのも学園の机は2人で1つ。その1つの机に男と女で使う。たまに人数調整のため男男、女女になることがあるが基本男女である。

 セシアもそのはずだからてっきり把握しているものだと......。

「また、女の子を惚れさせようと......」

「何か言ったか?」

「なんでもないよ!」

「なんで怒ってる?」

「怒ってない!」

 いや、怒ってるじゃん。

 ほんと、セシアの思考回路は全くもって読めないぜ。
 馬鹿なのか鋭いのか......十中八九馬鹿だが。

「そろそろ帰るか?」

「むー......あ、ちょっと待って図書室って場所わかる?」

「ん? 分かるが......」

 学年代表として、学園の施設の配置は覚えておかないとな!

「にしてもなんで図書室だ?」

「本を借りたいんだよねー。正直暇な時間多いし」

 まあ、馬車内なんて何にもないからなー。
 俺は基本、自分のステータスの見直しとか睡眠とか......役に立たないことばかりしてる気が。

 この機会に俺も本を借りるか......。

 と、図書室へは早く着き扉を開ける。

 中の構造は壁から至る所に本があり、中央に向けて下がる段差があり中心には机も配備されている。
 やたら広く造られているこの図書室は生徒に本を沢山読んで欲しいからだろう。

 真ん中の机も多いしな......。

 その時、俺の視界にある人が入った。
 この機会を待ち望んでいた。
 2人で話せるであろうこの空間。

「セシア、勝手に本を探してきてくれ俺の分も」

「え? アタシが選んじゃっていいの?」

「ああ......」

 俺は今、そんな所ではない。
 そこの机にいるのだ。
 ずっと探していた、相席の少女。
 珍しく俺に何の興味も持たない対等に話し合えるであろうこの少女。

 気づいたら俺はその少女の手を握っていた。

「え、貴方は............」

「君の事をずっと探していた」

 今思えばなんて恥ずかしいセリフだろう。だが、この時の俺には激しく湧き上がる達成感のため、そんなとこ微塵も感じていなかった。

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