第5話「俺はそろそろこの強さを隠せなくなった」

　ギルドの試験において圧倒的なまでに俺だが、これに関してはギルド側が悪いと開き直った。

「試験はどうだったんだ？」

　今日は父、マースルも付いてきていた。

「当然......って言ったら変だけど大分いい感じかな」

「だろうな。おそらくリューイがほんの少しでも力を出したらここらの連中はイチコロだろうな」

「あは......あははは......」

　もしかしたらするかもしれないな。......なくてもいいけど。

「次は1週間後に学園の試験だがそっちの対策は出来ているのか？」

「うん。座学は日々の読書で補えると思ってる。実技は明らかに......ねえ？」

「ま、そうだな。その調子で頑張れよリューイ」

　そして、俺と父さんは馬車を拾って自宅へと帰った。

　家に着いた途端、待ち受けていたのは母、イリユであった。

「リューちゃん、今日の試験はどうだったの？　やっぱりリューちゃんだし楽勝？」

「うん〜、楽勝とは言えないけどいい結果は残せたと思うよ」

　流石にここで「試験官ぶちのめした」なんて言ったら次は母さんが失神してしまう。

「それは良かったわ。疲れたでしょう？　お風呂に入ってきたら？」

「うん、そうするよ」

　因みに体を洗う係の家政婦などはいない。しかし、元いた世界での風呂よりは格段に大きい。銭湯並みだ。

「ふぅ〜。気持ちいい〜」

　毎日こんなに豪華な風呂に入っているので感覚が狂ってきそうだ。

　この家族は子爵ではあるが事実上はもう少し上らしいし、これぐらいが妥当なのか......。
　じゃあ、もっと上の公爵や侯爵はどんな生活をしているんだ？

　......あっ、そろそろ上がろう。
　そう思った次の瞬間、

「よーし、リューイ。一緒に入るぞ」
「俺もう上がるから」
「ええ!?　ちょっ......」

　父さんは一緒に入りたいのか？　俺は入りたくない。
　因みに俺と父さんの会話が減った事は事実であるが減っただけでほんの少しはしている。それがこれだ。
　まあ、俺が最近父さんとの風呂を拒絶しているからということもあるが。

「ふー、スッキリした」

　新たな服を着て自室へと向かう。自室では魔法の練習をしている事が多い。と言っても、攻撃魔法を使ってしまうとこの家なんて粉々になってしまうので、魔法の根源である体内のマナの操作や強化魔法なんかを使っている。
　それでも一歩間違えたらこの家がなくなってしまう(強化状態の俺が家の壁等を叩いてしまうと......そうなるのだ)。

　強化魔法に関しては光属性魔法が多い。また、それ以外の属性、火、水、風、土、闇についても『属性ブースト』というのがあり、使った属性の一定時間威力を上げる魔法だ。
　例えば『火属性ブースト』をすると全ての火属性魔法の威力が上がる。

　ドクドクドク......
　血液の流れを感じると同時にまなの流れも感じる。足先から手先まで少し火照っているような感覚だ。

　このマナを一点に集中させる。それが強化魔法だ。
　腕、足、腹、背中、目、耳......強化可能部位は案外多い。
　そして俺だから出来るーー全身の強化。
　漲ってくる。普段の何十倍、何百倍、何千倍......もしかするとそれ以上の力が出るかもしれない。

　そして、力を抜くとやってくるものが1つ。

「つ、疲れた〜」

　『疲労』だ。こればっかりは慣れるにはまだ時間がかかりそうだ。
　これだけ鍛錬していれば学園の試験なんて朝飯前だ。

　◇◆◇

　俺は今、テストを受けている。
　問題は簡単なものから難しいものまで様々だ。
　例えば......
【魔法の元となるものを答えなさい】
【全属性を答えなさい】
　この辺りは簡単だ。

【生物Aは5秒間に一度『ファイアボール』を使うとする。この時、いつ魔力がなくなるでしょうか。しかし生物Aは一般的な20代男性の最大レベルとする】
　この問題なんかは『ファイアボール』の消費魔力とこの生物Aのステータスと魔力の時間回復を覚えていないといけない難問だ。
　また、スキルによる状態の変化がないことを仮定しておかないといけない。

　テストが終わると学園前のグラウンドへ行く。そこにはいくつかの的が置いてある。撃ち抜け、ということか。

「今から君たちにはあの的に自分の使用可能の魔法を当ててもらう。外したとしても構わない。挑戦は3回までだ」

　ほとんどの人が後ろへ下がる。やりたくないのか？
　では俺が一番手か。

「リューイ・ファグゼルです。お願いします」

「え？　あの子まだ幼児だろ」
「今回は練習かな？」
「親に無理矢理受けされられたんだろ」

　後がガヤガヤしている。放っておこう。
　じゃあ力を抜いて『ファイアボール』でも......

「それ！」

　次の瞬間、的は消滅し、その上、その先の壁や物まで消滅していた。

「「「「「..................」」」」」

　......ちょっとやりすぎた？