【実話小説】出会い系シンドローム
現代ドラマ

完結:7話

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【実話小説】出会い系シンドローム

  • あらすじ

     今から約27年ほど前。世の中にはNTTが運営する「伝言ダイヤル」なるものがあった。
     
     携帯が普及していない頃、外出先で連絡を取りたいと思った時にメッセージのやり取りが出来るようにとNTTが始めたサービス。仲間内で共通のボックス番号(6桁から10桁)と暗証番号を決め、自宅や公衆電話からこのセンターにアクセスし、決めたボックス番号と暗証番号をボタンで押して入力するとメッセージを録音したり再生出来るというものだった。
     
     これらは待ち合わせ場所での連絡や親から子供への連絡などを想定して作られたもの。しかし当時は男女が出会う方法が今ほどなかった時代。このサービスは瞬く間に本来の目的とは異なる使われ方をしていた。
     
     「オープンダイヤル」と呼ばれるボックス番号が使われ、この番号を押して自分の自宅の電話番号を吹き込んでは電話を待っていた。
     
     オープンダイヤルとは?
     
     誰とも申し合わせ出来る訳ではないので、みんなそれぞれに想像力を働かせ、6桁から10桁のボックス番号を共有していた。4桁の番号を2回繰り返したり、ゾロ目も人気だった。例えばボックス番号12345678、暗証番号1234など、誰も教えたわけじゃないのに、無い頭をフル回転させてこれらの番号を想像し、共有していたのだ。
     
     面白かったのは語呂合わせ系で、オナニートリプルと呼ばれる番号(ボックス番号07210721、暗証番号0721)や、イクイクトリプル(ボックス番号19191919、暗証番号1919)、いい女トリプル(ボックス番号11071107、暗証番号1107)など、本当にみんな想像力を働かせて良く考えたなと思う。
     
     これらの伝言は吹き込んでから8時間で自動的に消去されるから、8時間はみんなメッセージを聞いてくれるのだ。10件吹き込まれるとボックスがいっぱいになって吹き込めなくなるので、最も古いメッセージが消えるのを待ってから吹き込むのが争奪戦になっていた。いつもメッセージは10件満タンだった。
     
     この話は、そんな伝言ダイヤルに興味を持った1人の男子高校生の話である。

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