マルチな才能を発揮してますが、顔出しはNGで
顔出しNGの事情があるのです 7
 練習試合の第1回戦、入月くんのチームがまず最初にコートの中でプレーをしている。
 各チームはランダムで決めたけど、入月くんと花沢さんだけは、わざと同じチームになるように分けた。
  これと言って大きな理由があるわけではないけれど、花沢さんとちゃんと向き合うことが出来るのは入月くんだけだと思ったから。
 私も含めて、花沢さんのことをどこかで諦めてしまっているような気がする。
 でも、入月くんだけはどんなに拒絶されても花沢さんのことを諦めていない。
『もっとバスケを楽しんだらいいと思う』
 入月くんは花沢さんのことをそう言っていた。
 彼は花沢さんを上辺だけじゃなくて、もっと深い部分で見ているんだと思う。
「立花さ~ん!」
 同じくコートサイドで試合を観戦している小畑くんが難しい顔をして私に声を掛けてくる。
「この試合、女子バスケ部部長はどう見ますか?」
 小畑くんの視線の先には、今もなお繰り広げられている息つく暇のない攻防をしている入月くんたちがいる。
 まだ前半戦だと言うのに、入月くんの息は荒く、額からは大量の汗が滴り落ちている。
「どうも何もないわ。 花沢さんが足を引っ張っている分、入月くんが2人分の仕事をしてる。 それで互角に戦えているのが不思議なくらいよ」「たしかに。 まあ勇志が本気を出したら、1人でも5人抜いてシュート決めれるだろうけどなー」
「ちょっとそれ本気で言ってるの?」「立花さんも知ってるだろ? 中学の時のアイツ」
 たしかに、中学時代の入月くんは一回り体格の大きい相手からもやすやすとゴールを奪っていた。
「たぶん勇志は、華ちゃんに思う所があるんじゃないか?」
  入月くん… どうして貴方は、そこまで人のために自分を犠牲にできるの?
 優し過ぎるのよ… 誰にでも…
「ピィーーーー!!」 ホイッスルの音が前半戦の終了を告げる。
 それぞれのチームがコートサイドに戻り各陣作戦の組み直しを行っている。
 「アンタいい加減にしなさいよ!!」
 入月くんのチームから2年の女子の罵声が聞こえる。
 見ると、罵声の相手は花沢さんのようで、チームの足を引っ張る花沢さんに堪忍袋の尾が切れたみたいね。
 すぐに入月くんと林田くんが割って入って宥めているが、チームとして後半上手くやれるか心配ね。
「花沢さん、キミは自分のできることを精一杯すればいい。 俺と真純のことは気にしなくていいよ。 ただ目の前のことから逃げちゃダメだ」「…… はぃ」
「よし! じゃあ後半戦も頑張ろーう!!」
 チームメイトを気遣って柄にもなく前向きな発言をしている。本当は引っ張っていくタイプじゃないのにどこまでもお人好しね、入月くん。
 再びホイッスルが鳴り、後半戦の開始を告げると、すぐにまた点数が動き始める。
 入月くんと林田くんのコンビプレーがとにかく凄くて、あっという間に点数を量産していく。
 相手チームに少しづつ焦りの色が見え始めていた。
 試合を焦ったのか、相手チームの男子が強引にディフェンスを突破し、レイアップシュートを決めようとシュートモーションに入った瞬間、マークスマンのラインが下がり、それに対応した花沢さんが、シュートモーションに入った男子の延長上に入ってしまった。
 花沢さんはそれに気が付いていたが、相手が男子だからか、身体が固まっているみたいにその場を動けずにいた。
「危ない!!」
 コートにいる全員が息を呑んだ瞬間、花沢さんの身体が横から割って入ってきた身体に押されてコートの外に押し出された。
 しかし、花沢さんを庇った誰かは、着地モーションの男子と激突し、大きく後ろに吹き飛ばされてしまった。
 「ヤバイ!!」 
 小畑くんが駆け寄っていく後ろ姿を見て、私もやっと脚が動き出す。
 急いで花沢さんを庇って倒れた人の所へ向かうと、そこには脚を抱えて苦しそうな表情をしている入月くんが横たわっていた。
 各チームはランダムで決めたけど、入月くんと花沢さんだけは、わざと同じチームになるように分けた。
  これと言って大きな理由があるわけではないけれど、花沢さんとちゃんと向き合うことが出来るのは入月くんだけだと思ったから。
 私も含めて、花沢さんのことをどこかで諦めてしまっているような気がする。
 でも、入月くんだけはどんなに拒絶されても花沢さんのことを諦めていない。
『もっとバスケを楽しんだらいいと思う』
 入月くんは花沢さんのことをそう言っていた。
 彼は花沢さんを上辺だけじゃなくて、もっと深い部分で見ているんだと思う。
「立花さ~ん!」
 同じくコートサイドで試合を観戦している小畑くんが難しい顔をして私に声を掛けてくる。
「この試合、女子バスケ部部長はどう見ますか?」
 小畑くんの視線の先には、今もなお繰り広げられている息つく暇のない攻防をしている入月くんたちがいる。
 まだ前半戦だと言うのに、入月くんの息は荒く、額からは大量の汗が滴り落ちている。
「どうも何もないわ。 花沢さんが足を引っ張っている分、入月くんが2人分の仕事をしてる。 それで互角に戦えているのが不思議なくらいよ」「たしかに。 まあ勇志が本気を出したら、1人でも5人抜いてシュート決めれるだろうけどなー」
「ちょっとそれ本気で言ってるの?」「立花さんも知ってるだろ? 中学の時のアイツ」
 たしかに、中学時代の入月くんは一回り体格の大きい相手からもやすやすとゴールを奪っていた。
「たぶん勇志は、華ちゃんに思う所があるんじゃないか?」
  入月くん… どうして貴方は、そこまで人のために自分を犠牲にできるの?
 優し過ぎるのよ… 誰にでも…
「ピィーーーー!!」 ホイッスルの音が前半戦の終了を告げる。
 それぞれのチームがコートサイドに戻り各陣作戦の組み直しを行っている。
 「アンタいい加減にしなさいよ!!」
 入月くんのチームから2年の女子の罵声が聞こえる。
 見ると、罵声の相手は花沢さんのようで、チームの足を引っ張る花沢さんに堪忍袋の尾が切れたみたいね。
 すぐに入月くんと林田くんが割って入って宥めているが、チームとして後半上手くやれるか心配ね。
「花沢さん、キミは自分のできることを精一杯すればいい。 俺と真純のことは気にしなくていいよ。 ただ目の前のことから逃げちゃダメだ」「…… はぃ」
「よし! じゃあ後半戦も頑張ろーう!!」
 チームメイトを気遣って柄にもなく前向きな発言をしている。本当は引っ張っていくタイプじゃないのにどこまでもお人好しね、入月くん。
 再びホイッスルが鳴り、後半戦の開始を告げると、すぐにまた点数が動き始める。
 入月くんと林田くんのコンビプレーがとにかく凄くて、あっという間に点数を量産していく。
 相手チームに少しづつ焦りの色が見え始めていた。
 試合を焦ったのか、相手チームの男子が強引にディフェンスを突破し、レイアップシュートを決めようとシュートモーションに入った瞬間、マークスマンのラインが下がり、それに対応した花沢さんが、シュートモーションに入った男子の延長上に入ってしまった。
 花沢さんはそれに気が付いていたが、相手が男子だからか、身体が固まっているみたいにその場を動けずにいた。
「危ない!!」
 コートにいる全員が息を呑んだ瞬間、花沢さんの身体が横から割って入ってきた身体に押されてコートの外に押し出された。
 しかし、花沢さんを庇った誰かは、着地モーションの男子と激突し、大きく後ろに吹き飛ばされてしまった。
 「ヤバイ!!」 
 小畑くんが駆け寄っていく後ろ姿を見て、私もやっと脚が動き出す。
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