マルチな才能を発揮してますが、顔出しはNGで
顔出しNGの事情があるのです 1
 誰かに何かをお願いして断られ、それでも諦められない時はどうするのか…
 コイツ、『小畑良介』の場合、人として卑怯な手段を用いて彼の願いを受け入れさせた。
 時は数分前に遡る。
…
……
………
  俺が学校に登校して、まず最初に思うことは「早く昼休みにならないかな~」ということである。
 特に天気の良い日の昼休みが格別で、窓から差し込む暖かい光に包まれながら、ウトウトと昼寝を楽しむのが日課だった。
 もちろん今日もそのつもりだった、小畑良介が来るまでは…
「なあ勇志!」「断る」
「何でだよ!? まだ何も言ってないだろッ!?」
 小畑の特徴は基本“うるさい”ことと、たまに物凄い“バカ”だな思うことがあるというところだ。
 遠くからでもこいつの騒がしさは壁を隔てた隣のクラスからでも分かるほどだ。
「お前が俺に話し掛けるときは、決まって面倒毎に巻き込まれるんだよ」「よ… よくわかったな!?」
「ほらみろ」「いや!違うとにかく話を聞いてくれよー!」
「うるさいうるさい! わかった、わかったからもう少し声のボリュームを落としてくれ!」
「わりぃわりぃ! 最近俺がバスケ部の部長を引き継いだのは知ってるだろ?」「まさかお前が部長とはバスケ部も末だよな」
「本当だよな… って違う!話を逸らすなよッ!」「はいはい、それで?」
「それで3年は引退して、俺ら2年と1年で頑張っているんだけどな、戦績はイマイチ、おまけに人数も少ない…」
 成績は悪く、辞めていく部員も後を絶たない。さらに追い討ちとして、次のインターハイ予選で、県大会出場以上という成績を残さなければ廃部、という形になるということだそうだ。
  まあそんなことを言われても俺は部外者だし、廃部になろうがなるまいが関係ないんだけどな。
「そういうわけだから頼む! バスケ部の助っ人を頼まれてくれ!! 中学ん時、バスケ部エースだった勇志だけが頼みの綱なんだ! 頼むこの通りだ!」
 そう言って頭を下げる小畑だが、そんなのは昔の話だし、何より俺の意思は固い。
「断る」
 何のためらいもないその一言を受け、一瞬たじろいだ小畑だったがすぐに持ち直して、反撃に出る。
「フッ…. 断られることくらいは想定済みだぜ!」「ほぅ… ならばどうするというのだね?」
 魅力のある交換条件でもあれば話は別だが、コイツに限ってそんな話が出てくるわけが…
「俺の宝物、応募者限定20名のプレミアゴールドダンガムプラモでどうだーッ!!?」「なん…だと…!?」
「ほ〜ら勇志、どうした?どうした?」
 ぐぬぬぬぬ、卑怯者め! “限定”攻撃などという卑劣な攻撃をしよって! 貴様も宇宙に夢を抱いた者だろうにッ!!
 いや落ち着け勇志…
 あれは所詮、初期モデルのダンガムの色違いに過ぎん、いくら限定だからとはいえ、喉から手が出るほどでもあるまい。
 ならば!俺の答えは…
「否!! 断じて否!!」
「なッ、なんだと!? お前ほどの男がなぜ….  自分が何を言っているのかわかっているのかッ!?」
 流石に小畑もここまで頑なに俺が拒んでくるとは思ってなかったのだろう、戦慄した表情を浮かべている。
「ああ、わかっている… だがあえて言おう、カスであると!!」
 そうだこれでいい…
そこまでして俺が身体を張る理由はない。
 見ると、小畑は驚愕の表情を浮かべて悔しがっている。
 おそらく限定ダンガムを引き合いに出せば必ず乗ってくると踏んでいたんだろう。
  甘く見られたものだ…
「そう言わずにさ、俺からも頼むよ」
 声の主は後ろの席にいる真純で、ガップレのドラム担当だ。
 もちろん小畑含めクラスの奴はその事実を知らない。
 そう言えば真純もオフの日は助っ人でバスケ部に参加していたな。
 中学時代、俺と真純と小畑は同じ学校のバスケ部に所属していて、3人ともレギュラーだった。
  小畑はその時からの腐れ縁だ、嫌なことに趣味だけは合う
 それにしても真純からも頼まれるとはかなり切迫した状態なんだろうな。
「でもなー、俺忙しいし」
 これは嘘偽りのない真実だ。
ガップレの活動しかり、また最近は《kira☆kira》から頼まれた曲を編曲したりと本当に忙しかった。
 キアラからは毎日のようにメールが届き、何度か返し忘れる度にアキラから電話が掛かってきて、「何でキアラにメールを返さないんだ!」とか、「キアラを泣かせるな!」とか何とか言われていてそうとう参っているしな。
 一応、マリーちゃんにも《kira☆kira》の2人から頻繁に連絡がきている事を伝え、アイドルとアーティストという肩書きがあるから不味いですよねと聞いたところ… 
「別にいいんじゃなーい、あの2人がこんなに人に懐くなんて初めてよ~」
とかなんとか言っていた。 いいんだ、それで…
  キアラはともかく、アキラは懐いているというには程遠いと思いますけどね。
 もちろんガップレのマネージャー、水戸さんにも伝えたが、「あちら様の言うことは絶対だから覚えておきなさい!」ですって、これが社会ってやつなんでしょうか…
 うちの事務所も色々大変なんだなと勝手に思っている。  ちなみに連絡といえば、金髪娘の西野莉奈からもひっきりなしに連絡が来るが、全部忙しいの一言で突っぱねていた。
  ゲームの再戦のことだけならまだしも、近頃は映画のチケットが2枚あるからどう?とか、遊園地のチケット余ってるからいらない? とかそんなメールの方が多かった。
 とりあえず、遊園地のチケットはくれとだけ言ってある。
 最近構ってあげれなくて拗ねている妹の愛美を今度遊園地にでも連れて行って、親孝行ならぬ妹孝行をするつもりだ。
 なんていいお兄ちゃんなんだろうか…
 おっと、全然違うこと考えてしまっていた。
「ならもう奥の手を使うしかあるまい!」「なんだ? 奥の手って… 」
 小畑の身体から発する只ならぬオーラにゴクリと唾を飲む。
「それは… 」「そッ、それは…!?」
「それは勇志、お前の隠している秘密だよ」「なッ!?」
「それを公開されたくなければ、協力してもらう!」
 そう勝ち誇った小畑の肩に、真純が手を置いてニヤリと笑う。
「おい、なんなんだ!? 俺の秘密ってッ!?」
 まさか、真純!? 貴様、小畑とグルか? グルなのか!?
 ガップレの秘密をバスケ部存続の為だけに小畑に売ったのか!? なんていう奴だ、信じていたのに!
「真純… 裏切ったな!」「ん? 何のことだ?」
くそー、 トボケやがってー!
「それで、 どうする勇志?」
 小畑からの最後通告、断れば俺が今まで隠し通してきた努力も全て無駄になってしまう…
「わかった… 協力する」「うっしゃあぁぁああッ!!」
 歓喜の声を上げる小畑とほっと胸を撫で下ろす真純。
 「県大会出場までしか手伝わないからな! 途中で負けても知らないぞ!?」「わかってる、わかってる! じゃあ時間もあまりないし、早速今日から練習頼むぜ!」
 手伝うとは言ったが、真面目にやるとは言ってないからな!
「ありがとな、勇志」「真純、お前今度飯奢れよ」
「それくらいはさせていただきます」「当然だ」
 その後直ぐに予鈴が鳴り、クラスのみんなもそれぞれ席につき始める。 
「じゃッ、勇志! 放課後頼むな!」
 そう言って席に戻ろうとする小畑。
「ちょっと待てぇい!!」「ん? 何だよ?」
「限定ダンガムプラモはちゃんともらえるんだろうか?」
 コイツ、『小畑良介』の場合、人として卑怯な手段を用いて彼の願いを受け入れさせた。
 時は数分前に遡る。
…
……
………
  俺が学校に登校して、まず最初に思うことは「早く昼休みにならないかな~」ということである。
 特に天気の良い日の昼休みが格別で、窓から差し込む暖かい光に包まれながら、ウトウトと昼寝を楽しむのが日課だった。
 もちろん今日もそのつもりだった、小畑良介が来るまでは…
「なあ勇志!」「断る」
「何でだよ!? まだ何も言ってないだろッ!?」
 小畑の特徴は基本“うるさい”ことと、たまに物凄い“バカ”だな思うことがあるというところだ。
 遠くからでもこいつの騒がしさは壁を隔てた隣のクラスからでも分かるほどだ。
「お前が俺に話し掛けるときは、決まって面倒毎に巻き込まれるんだよ」「よ… よくわかったな!?」
「ほらみろ」「いや!違うとにかく話を聞いてくれよー!」
「うるさいうるさい! わかった、わかったからもう少し声のボリュームを落としてくれ!」
「わりぃわりぃ! 最近俺がバスケ部の部長を引き継いだのは知ってるだろ?」「まさかお前が部長とはバスケ部も末だよな」
「本当だよな… って違う!話を逸らすなよッ!」「はいはい、それで?」
「それで3年は引退して、俺ら2年と1年で頑張っているんだけどな、戦績はイマイチ、おまけに人数も少ない…」
 成績は悪く、辞めていく部員も後を絶たない。さらに追い討ちとして、次のインターハイ予選で、県大会出場以上という成績を残さなければ廃部、という形になるということだそうだ。
  まあそんなことを言われても俺は部外者だし、廃部になろうがなるまいが関係ないんだけどな。
「そういうわけだから頼む! バスケ部の助っ人を頼まれてくれ!! 中学ん時、バスケ部エースだった勇志だけが頼みの綱なんだ! 頼むこの通りだ!」
 そう言って頭を下げる小畑だが、そんなのは昔の話だし、何より俺の意思は固い。
「断る」
 何のためらいもないその一言を受け、一瞬たじろいだ小畑だったがすぐに持ち直して、反撃に出る。
「フッ…. 断られることくらいは想定済みだぜ!」「ほぅ… ならばどうするというのだね?」
 魅力のある交換条件でもあれば話は別だが、コイツに限ってそんな話が出てくるわけが…
「俺の宝物、応募者限定20名のプレミアゴールドダンガムプラモでどうだーッ!!?」「なん…だと…!?」
「ほ〜ら勇志、どうした?どうした?」
 ぐぬぬぬぬ、卑怯者め! “限定”攻撃などという卑劣な攻撃をしよって! 貴様も宇宙に夢を抱いた者だろうにッ!!
 いや落ち着け勇志…
 あれは所詮、初期モデルのダンガムの色違いに過ぎん、いくら限定だからとはいえ、喉から手が出るほどでもあるまい。
 ならば!俺の答えは…
「否!! 断じて否!!」
「なッ、なんだと!? お前ほどの男がなぜ….  自分が何を言っているのかわかっているのかッ!?」
 流石に小畑もここまで頑なに俺が拒んでくるとは思ってなかったのだろう、戦慄した表情を浮かべている。
「ああ、わかっている… だがあえて言おう、カスであると!!」
 そうだこれでいい…
そこまでして俺が身体を張る理由はない。
 見ると、小畑は驚愕の表情を浮かべて悔しがっている。
 おそらく限定ダンガムを引き合いに出せば必ず乗ってくると踏んでいたんだろう。
  甘く見られたものだ…
「そう言わずにさ、俺からも頼むよ」
 声の主は後ろの席にいる真純で、ガップレのドラム担当だ。
 もちろん小畑含めクラスの奴はその事実を知らない。
 そう言えば真純もオフの日は助っ人でバスケ部に参加していたな。
 中学時代、俺と真純と小畑は同じ学校のバスケ部に所属していて、3人ともレギュラーだった。
  小畑はその時からの腐れ縁だ、嫌なことに趣味だけは合う
 それにしても真純からも頼まれるとはかなり切迫した状態なんだろうな。
「でもなー、俺忙しいし」
 これは嘘偽りのない真実だ。
ガップレの活動しかり、また最近は《kira☆kira》から頼まれた曲を編曲したりと本当に忙しかった。
 キアラからは毎日のようにメールが届き、何度か返し忘れる度にアキラから電話が掛かってきて、「何でキアラにメールを返さないんだ!」とか、「キアラを泣かせるな!」とか何とか言われていてそうとう参っているしな。
 一応、マリーちゃんにも《kira☆kira》の2人から頻繁に連絡がきている事を伝え、アイドルとアーティストという肩書きがあるから不味いですよねと聞いたところ… 
「別にいいんじゃなーい、あの2人がこんなに人に懐くなんて初めてよ~」
とかなんとか言っていた。 いいんだ、それで…
  キアラはともかく、アキラは懐いているというには程遠いと思いますけどね。
 もちろんガップレのマネージャー、水戸さんにも伝えたが、「あちら様の言うことは絶対だから覚えておきなさい!」ですって、これが社会ってやつなんでしょうか…
 うちの事務所も色々大変なんだなと勝手に思っている。  ちなみに連絡といえば、金髪娘の西野莉奈からもひっきりなしに連絡が来るが、全部忙しいの一言で突っぱねていた。
  ゲームの再戦のことだけならまだしも、近頃は映画のチケットが2枚あるからどう?とか、遊園地のチケット余ってるからいらない? とかそんなメールの方が多かった。
 とりあえず、遊園地のチケットはくれとだけ言ってある。
 最近構ってあげれなくて拗ねている妹の愛美を今度遊園地にでも連れて行って、親孝行ならぬ妹孝行をするつもりだ。
 なんていいお兄ちゃんなんだろうか…
 おっと、全然違うこと考えてしまっていた。
「ならもう奥の手を使うしかあるまい!」「なんだ? 奥の手って… 」
 小畑の身体から発する只ならぬオーラにゴクリと唾を飲む。
「それは… 」「そッ、それは…!?」
「それは勇志、お前の隠している秘密だよ」「なッ!?」
「それを公開されたくなければ、協力してもらう!」
 そう勝ち誇った小畑の肩に、真純が手を置いてニヤリと笑う。
「おい、なんなんだ!? 俺の秘密ってッ!?」
 まさか、真純!? 貴様、小畑とグルか? グルなのか!?
 ガップレの秘密をバスケ部存続の為だけに小畑に売ったのか!? なんていう奴だ、信じていたのに!
「真純… 裏切ったな!」「ん? 何のことだ?」
くそー、 トボケやがってー!
「それで、 どうする勇志?」
 小畑からの最後通告、断れば俺が今まで隠し通してきた努力も全て無駄になってしまう…
「わかった… 協力する」「うっしゃあぁぁああッ!!」
 歓喜の声を上げる小畑とほっと胸を撫で下ろす真純。
 「県大会出場までしか手伝わないからな! 途中で負けても知らないぞ!?」「わかってる、わかってる! じゃあ時間もあまりないし、早速今日から練習頼むぜ!」
 手伝うとは言ったが、真面目にやるとは言ってないからな!
「ありがとな、勇志」「真純、お前今度飯奢れよ」
「それくらいはさせていただきます」「当然だ」
 その後直ぐに予鈴が鳴り、クラスのみんなもそれぞれ席につき始める。 
「じゃッ、勇志! 放課後頼むな!」
 そう言って席に戻ろうとする小畑。
「ちょっと待てぇい!!」「ん? 何だよ?」
「限定ダンガムプラモはちゃんともらえるんだろうか?」
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