マルチな才能を発揮してますが、顔出しはNGで
顔出しNGが起こす災難 3
 「付き合ってくださいませんか?」
 なんという響きの素晴らしさ、そしてこの言葉に込められた強い想い。
 人生で初めてこの言葉を掛けられたが、ここまで言葉ひとつで心が大きく揺れ動いたのは初めてだ。
  一生、誰からも言われないだろうと思っていた言葉を、まさか出会って間もない女の子から言われることになるとは夢にも思っていなかった。
 あまりも突然な告白に頭が真っ白になり、ぼけーっと『付き合ってください』という言葉だけが、脳内でエンドレスリピートされていた。
 「「え゛ぇぇええーー!!??」」
 その場の全員の驚きが綺麗にシンクロし大合唱となったところで、俺も甘美なる世界の誘惑から解放された。
 危ない危ない… あともう少しでトロけるところだった… 
 「つつつつ、付き合うってどういうことよッ!?」
 直ぐにミュアが間に割って入りキアラに真意を問うが、キアラ自身もその時になって初めて自分が言ったことの重大さに気付いたようで、顔を真っ赤にして慌てふためいている。
「そそそッ、それは… その… 違うんですッ!! そういう意味じゃなくてですねッ!」「え…?」
 俺の中で何かが音を立てて崩れ落ちる。
「つまりですね、ユウさんの作る曲が前から、すッ… 好き、だったので! 今度私たち《kira☆kira》に楽曲を提供して欲しいと思いまして! ですから、曲作りに付き合ってくださいと、そういうことなんですッ!!」
「あ… そう… ふーん、なるほどねー… 」
「なーんだ、びっくりしたー」「キアラがこんなやつに付き合ってなんて言うわけないだろ?」
 胸を撫で下ろす歩美と、さも当然のように言い放つアキラ。
「ユウ大丈夫だ、お前は悪くない… 男なら誰しもあの台詞を聞けば舞い上がってしまうものさ… 」「残念だったね、ユウくん」「3次元のどこがいいのか僕には全く理解できないのですぞ」
 そして、面白そうな顔をして見ていた男性陣はいつの間にか俺の味方に付いてくれていた。
 ありがとう心の友よ… 翔ちゃんはもう少し俺のことを心配してくれてもいいんだよ!?
  かくして、俺への初の告白は、俺ではなく俺の作った曲への愛の告白でしたとさ。
 わかってたさ! そんな都合のいい話があるわけないってことくらい!
 あー恥ずかし、本当に恥ずかしい、穴があったら入りたい。  そしてその穴に蓋をしていなくなりたい。
「これからは紛らわしい言い方しないようにね? うちのユウはそういうのすぐに本気にするような奴だから、襲われても知らないからね?」「おッ、襲われるんですか!?」
「ええ、襲われるわ、だってケダモノだもん」「そッ、それはつまり… おッ、襲われて、えええエッチなことされるということでしょうか!?」
「えッ、ええ! そうよ! 襲われて、ええエッチなことされちゃうわよ?」「それはそれで、何と言いますか… 」
「いや、襲わないわ!!」
 全く、人がショックを受けているというのに、歩美は俺のことを何だと思っているだ!
 あ、ケダモノか…
 え? いや、ケダモノじゃないよ?  なんで真純と義也までそんな疑うような目で見てくるの!?  ちょっと翔ちゃん! ゲームしてないで何とか言ってやって! 二次元から帰って来てーッ!
「襲ってくれないんですね… 」「えッ!? 今なんて…?」
 何か今、良からぬことが聞こえた気がするが俺の空耳だろう…
「い、いえッ! なんでもないです… 」
「とッ、とになく俺はそこまでケダモノじゃないからな!」
 まったく酷い言いがかりだ。 こんな超が付くほどの健全男子は滅多にいませんよ? 絶滅危惧種ですよ、まったく。
「女の子に出会い頭に水をぶっ掛けるような奴が“ケダモノ”じゃないなら一体何なんだよ?」
 アキラが壁にもたれ掛かって、グッと腕を組みながら、目もあわせず毒を吐いている。
 本当に嫌われたもんだな、俺…
 ほぼ初対面の相手にここまで嫌われたのは初めてだな…
 あっ、涙が出そう。
 「ささッ、一通り話しも着いたことですし、時間も時間ですから解散しましょう」
 話も落ち着いたタイミングで水戸さんがいい具合に話をまとめてくれる。
「そちらの楽曲提供のお話ですが、このようなことになってしまったお詫びとして、うちのバ… ユウには必ずやらせますので、また正式に事務所を通してお話をしますね」
  水戸さん? 今もしかしてだけど、バカって言いかけませんでしたか!? バカって!!
「あの、ユウさん!」「はいッ!何でしょう?」
 俺もそろそろ支度を、と立ち上がった所でキアラに呼び止められた。
「その… やっぱり嫌… でしたか?」
「そんなことないよ! もちろん楽曲提供の話は受けさせてもらうし、俺なんかで良ければ喜んでやらせてもらうよ」
「本当ですか…!? 嬉しいです、ありがとうございます!」
 そう言ってまた深々と頭を下げるキアラの姿に心がほんわかする。
 くーッ! 本当にいい子だなー… 愛美にキアラの爪の垢でも煎じて飲ませてやればちょっとは兄に優しくなるかしら?  その後《kira☆kira》の2人はガップレの控え室を出て行った。
 キアラは最後までご迷惑をお掛けしましたと、申し訳無さそうに頭を下げていたが、アキラの方は最後までバツが悪そうな顔をしてソッポを向いていた。
 まあ俺もそう思わせるようなことをしたと反省しているから、アキラをとやかく言うつもりはない。
 楽曲を提供することにもなったことだし、嫌でもまた顔を合わすことがあるだろうから、その時にまたちゃんと謝ろう。
…
……
………
 その後の歌番組の生放送は何の問題もなく終わった。
 《kira☆kira》のトークの時にアキラとキアラが好きな人はいないのかとMCに聞かれていて、アキラは即答で「いません」と答えたのに対し、キアラは物凄く顔を赤くてして慌てていたから、おそらく意中の人がいるのだろう、誠に残念です。
 終わってからもミュアこと歩美の機嫌が悪く、帰りにおいしいケーキを奢ってようやく機嫌を直してくれた。  甘いもの強しだな。
  歩美を送って家に着くと愛美が出迎えてくれたが、その時にはすでに俺の少ない体力は底を尽きていたので、軽くあしらってベッドにダイブした。
 最近、愛美に構ってやれてないから、今度の休みは愛美に構ってやろうと決めて俺は意識を手放したのだった。
 なんという響きの素晴らしさ、そしてこの言葉に込められた強い想い。
 人生で初めてこの言葉を掛けられたが、ここまで言葉ひとつで心が大きく揺れ動いたのは初めてだ。
  一生、誰からも言われないだろうと思っていた言葉を、まさか出会って間もない女の子から言われることになるとは夢にも思っていなかった。
 あまりも突然な告白に頭が真っ白になり、ぼけーっと『付き合ってください』という言葉だけが、脳内でエンドレスリピートされていた。
 「「え゛ぇぇええーー!!??」」
 その場の全員の驚きが綺麗にシンクロし大合唱となったところで、俺も甘美なる世界の誘惑から解放された。
 危ない危ない… あともう少しでトロけるところだった… 
 「つつつつ、付き合うってどういうことよッ!?」
 直ぐにミュアが間に割って入りキアラに真意を問うが、キアラ自身もその時になって初めて自分が言ったことの重大さに気付いたようで、顔を真っ赤にして慌てふためいている。
「そそそッ、それは… その… 違うんですッ!! そういう意味じゃなくてですねッ!」「え…?」
 俺の中で何かが音を立てて崩れ落ちる。
「つまりですね、ユウさんの作る曲が前から、すッ… 好き、だったので! 今度私たち《kira☆kira》に楽曲を提供して欲しいと思いまして! ですから、曲作りに付き合ってくださいと、そういうことなんですッ!!」
「あ… そう… ふーん、なるほどねー… 」
「なーんだ、びっくりしたー」「キアラがこんなやつに付き合ってなんて言うわけないだろ?」
 胸を撫で下ろす歩美と、さも当然のように言い放つアキラ。
「ユウ大丈夫だ、お前は悪くない… 男なら誰しもあの台詞を聞けば舞い上がってしまうものさ… 」「残念だったね、ユウくん」「3次元のどこがいいのか僕には全く理解できないのですぞ」
 そして、面白そうな顔をして見ていた男性陣はいつの間にか俺の味方に付いてくれていた。
 ありがとう心の友よ… 翔ちゃんはもう少し俺のことを心配してくれてもいいんだよ!?
  かくして、俺への初の告白は、俺ではなく俺の作った曲への愛の告白でしたとさ。
 わかってたさ! そんな都合のいい話があるわけないってことくらい!
 あー恥ずかし、本当に恥ずかしい、穴があったら入りたい。  そしてその穴に蓋をしていなくなりたい。
「これからは紛らわしい言い方しないようにね? うちのユウはそういうのすぐに本気にするような奴だから、襲われても知らないからね?」「おッ、襲われるんですか!?」
「ええ、襲われるわ、だってケダモノだもん」「そッ、それはつまり… おッ、襲われて、えええエッチなことされるということでしょうか!?」
「えッ、ええ! そうよ! 襲われて、ええエッチなことされちゃうわよ?」「それはそれで、何と言いますか… 」
「いや、襲わないわ!!」
 全く、人がショックを受けているというのに、歩美は俺のことを何だと思っているだ!
 あ、ケダモノか…
 え? いや、ケダモノじゃないよ?  なんで真純と義也までそんな疑うような目で見てくるの!?  ちょっと翔ちゃん! ゲームしてないで何とか言ってやって! 二次元から帰って来てーッ!
「襲ってくれないんですね… 」「えッ!? 今なんて…?」
 何か今、良からぬことが聞こえた気がするが俺の空耳だろう…
「い、いえッ! なんでもないです… 」
「とッ、とになく俺はそこまでケダモノじゃないからな!」
 まったく酷い言いがかりだ。 こんな超が付くほどの健全男子は滅多にいませんよ? 絶滅危惧種ですよ、まったく。
「女の子に出会い頭に水をぶっ掛けるような奴が“ケダモノ”じゃないなら一体何なんだよ?」
 アキラが壁にもたれ掛かって、グッと腕を組みながら、目もあわせず毒を吐いている。
 本当に嫌われたもんだな、俺…
 ほぼ初対面の相手にここまで嫌われたのは初めてだな…
 あっ、涙が出そう。
 「ささッ、一通り話しも着いたことですし、時間も時間ですから解散しましょう」
 話も落ち着いたタイミングで水戸さんがいい具合に話をまとめてくれる。
「そちらの楽曲提供のお話ですが、このようなことになってしまったお詫びとして、うちのバ… ユウには必ずやらせますので、また正式に事務所を通してお話をしますね」
  水戸さん? 今もしかしてだけど、バカって言いかけませんでしたか!? バカって!!
「あの、ユウさん!」「はいッ!何でしょう?」
 俺もそろそろ支度を、と立ち上がった所でキアラに呼び止められた。
「その… やっぱり嫌… でしたか?」
「そんなことないよ! もちろん楽曲提供の話は受けさせてもらうし、俺なんかで良ければ喜んでやらせてもらうよ」
「本当ですか…!? 嬉しいです、ありがとうございます!」
 そう言ってまた深々と頭を下げるキアラの姿に心がほんわかする。
 くーッ! 本当にいい子だなー… 愛美にキアラの爪の垢でも煎じて飲ませてやればちょっとは兄に優しくなるかしら?  その後《kira☆kira》の2人はガップレの控え室を出て行った。
 キアラは最後までご迷惑をお掛けしましたと、申し訳無さそうに頭を下げていたが、アキラの方は最後までバツが悪そうな顔をしてソッポを向いていた。
 まあ俺もそう思わせるようなことをしたと反省しているから、アキラをとやかく言うつもりはない。
 楽曲を提供することにもなったことだし、嫌でもまた顔を合わすことがあるだろうから、その時にまたちゃんと謝ろう。
…
……
………
 その後の歌番組の生放送は何の問題もなく終わった。
 《kira☆kira》のトークの時にアキラとキアラが好きな人はいないのかとMCに聞かれていて、アキラは即答で「いません」と答えたのに対し、キアラは物凄く顔を赤くてして慌てていたから、おそらく意中の人がいるのだろう、誠に残念です。
 終わってからもミュアこと歩美の機嫌が悪く、帰りにおいしいケーキを奢ってようやく機嫌を直してくれた。  甘いもの強しだな。
  歩美を送って家に着くと愛美が出迎えてくれたが、その時にはすでに俺の少ない体力は底を尽きていたので、軽くあしらってベッドにダイブした。
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