マルチな才能を発揮してますが、顔出しはNGで
顔出しNGの休日 3
「ちいッ! 2機目もやられたか!」
 相手の機体を一目見ただけで、並大抵のプレイヤーではないことはすぐに理解できた。
「なんて数の武装を乗っけてるんだ、まるで固定砲台だな」
 最後の切り札として2機目の機体は残しておきたかったが、相手はどうやらそっちがプレイヤー機だと思ったようですべての火力を使って粉砕してくれた。
 どっちを狙われてもいいような布陣をとっておいたが、1番避けたかった展開になってしまった。
しかも、決め手のスナイピングを警戒していた奥の手で無効化されたのが痛い。
「今ので落ちていてくれたら楽だったんだが!」
 まあ、スピードタイプの機体を選んだ時点で、最終的には近接戦闘になるように仕向けるつもりだったから狙い通りなのだが、それにはこっちも大きくリスクを背負うことになるため、それまでに仕留めたかったというのが本音だ。
 しかし、初期装備では火力と射程距離が最低で、先程まで使っていたスナイパーライフルでも、初期装備の中では、高火力で射程も長いが、チャージしないと打てないし、それまでは移動不可と扱いが至って難しい代物だ。
 近接戦闘に縺れ込むのは時間の問題だっただろう。
 ただいくらスピードタイプとはいえ、初期モデルの量産機体だ。やはりどう取り繕っても機体性能に差があり過ぎる。
 装甲をパージして身軽になった相手が、こちらに一直線に向かってきて簡単に距離を詰められてしまう。  重力波の効果時間である30秒の間に決着をつけるつもりらしい。
「だが、そう簡単にはやらせない!」
 全速力で後退しつつ、ライフルを正確に相手機体の中心に撃ち込んでいく。
  ライフルのビームが重力波の中心に弾かれることによって、相手の速度がほんの僅かに減速していく。
 あとはスピードタイプの速度を利用して30秒を稼ぐ。
「スナイパーライフルの高出力のビームを弾くのに7秒、残り23秒…いけるな」
 相手にわざと懐に潜り込ませるように仕向け、逆にそのタイミングでこちらが相手の懐に飛び込んだ!
 すでにグラビティフィールドは消えていたため、サーベルを持つ相手の腕を抑え、ライフルを相手の胸のコクピット部分に押し当てる。
 勝負は決まった!
「これで終わりだ!」
「なーにが終わりですって?」「ファッ!?」
 最後に引き金を引く瞬間、装着していたヘッドギアを外されて『リタイア』になる。
 ヘッドギアを取られた方向を向くと、満面の笑みを浮かべた歩美がそこに立っていた。
「あ… いやッ… これはー…」「随分とお楽しみだったみたいねー、ゆーうーしーッ!!」
「ひッ、ひーッい! ごごご、ごめんなさーいッ!!」
 歩美に引きづられるようにしてゲーム機から出されながら、俺は歩美に謝る。
「その… ちょっとした出来心だったんです! 近くにゲーセンがあったもので、つい血が騒いでしまったといいますか、戦う者の宿命といいますか!」
「じゃあ、この危険な戦場からとっとと出ましょうかー?」
 歩美の腕を引く力がさらに増し、俺の腕があらぬ方向へと捻じ曲げられていく。
 「ぬぬッ、折れる、腕が折れて抜けるーッ!!」「ちょっと!そこのアンタ!」
「歩美! 腕がッ、腕が折れるッ!」「もう!シャキッと歩きなさいよ!」
「だってぇ! 腕が変な方向に曲がって…」
「ちょっとって言ってるでしょーッ!?」
 背後から物凄い大声が聞こえて、歩美と一緒に振り返ると、金髪ショートカットでいかにもスポーツが得意そうな雰囲気をした女子がこちらを睨みつけていた。
 別に胸がすっきりしているから運動しやすいんだろうなーとか、そういうふうに思ったわけじゃないよ?
 学校の制服だと思われるスカートをやけに短くしていて、ちょっと風が吹いたら見えてしまいそうなくらいだ。 なんてけしからん!
 しかし、はて?
 他校の女子生徒に声をかけられるようなことをした覚えはないが…
「さっきのはいったいどういうことよ!?」「え、さっき?」
 さっきって何のことだ? いやまさかこの子がさっきの対戦相手だったのか? 
 こんな男臭いコアなロボゲーをまさかこんな可愛い女の子がプレイしていたとでもいうのか!?
「うちの女たらしが何かあなたに失礼なことでもしたのでしょうか?」
  歩美が締め上げている腕に、さらに力が増し俺の腕が悲鳴をあげる。
「アーッ!! 歩美さん…!? 俺の腕そろそろ本当に折れちゃいますからね!?」「ちょっと静かにしてて!」
 「あの時… 私の腕を掴んで動きを封じておいて、最後の最後でギブアップするってどういうこと!? あんな辱めを受けたの… 生まれて初めてよ…」
 いや、あの… 確かにその通りなんだけど、そんな言い方したら駄目だと思わない?
「ふーん、やけに強引に彼女に迫ったのねー?」「いや、ちがッ! ああぁぁああああ!!!」
 そのまま変な方向へ曲げられていく俺の左腕、ありがとう… 今まで世話になったな、茶碗を持つときもギターを弾くときもお前に頼りきりだったね… お前のことは忘れないよ…  さよなら… 僕のレフトアーム…
「ちょ、ちょっと!? よくわからないけど、それくらいにしてあげたら…?」
 心配してくれるのは有難いが、後半はお前の所為だからなッ!?
「そうね、じゃああなたからも事情を説明してもらいましょうか?」
 歩美がそう言うと同時に、返事も聞かずに金髪女子の右手を掴み、俺と一緒に引っ張っていく。
「え? 何で私まで!? ちょっと待って!」
 いきなり歩美に連れ出され慌て出す金髪女子、だがもう手遅れだ。
「諦めろ、こうなった歩美はもう何人たりとも止められはせん」「元はと言えばアンタが!」
「みなまで言うな、誠意を持って話せばわかってくださる」「なんでこうなるのよーッ!!」
 金髪女子は隣でワーキャー騒いでいるが、歩美様の機嫌を直さない限り、俺たちに明日はない。
  そのまま歩美に引きずられた先は、先程のフードコートだった。
 3人で丸テーブルを囲むように座ると、すぐに俺はゲーセンでの出来事を細かく歩美に説明した。
 何かと言葉足らずな金髪女子が説明すると、またあらぬ誤解を招いてしまうかもしれないため、金髪女子が喋る隙を与えないように話し続けた。
  一通り説明し終わるとどうやら歩美も納得してくれたようで、あの不気味な笑顔はすでに収まっていた。
 「関係がないのに巻き込んでしまったごめんなさい。 えっと… 」「私は『西野 莉奈』神無月学園の2年よ」
「私は桐島歩美、こっちが入月勇志、2人とも六花大付属高校の2年だから、西野さんとは同い年ね」
 自己紹介が終わる頃にはこの場の空気もかなり和んでいた。
「呼び捨てでいいわよ、アンタはダメだけど…!」「はいはい、わかりましたよ“西野さん”!」
 何故かこの西野とかいう奴は、俺のことを目の敵にするような態度をとってくる。
「もしかして、ゲームに負けたのが悔しかったのか?」「うるさいッ!負けてないし! アンタは最後にリタイアしたんだから、私の勝ちなんだからね!!」
「ムキになりやがって! やっぱり悔しいんじゃないか!!」「悔しくなんかありません〜!!」
「はいはい、喧嘩しないの!!」
 歩美に止められて、お互い顔を背けるように反対側を向く。
 一体こいつは何なんだ! 何かと絡んでくるし、負けず嫌いで面倒臭いし…!
「アンタ、もう1度私と勝負しなさい!」「もういいだろ、お前が勝ったんだからもう1度やらなくても」
「あれじゃ私が納得できないのッ! それとも何? 私に負けるのが怖いの?」「はいはい、怖いです怖いです」
「ムッカー! もう許さないんだから!」「わかった、わかった戦うよ、けど今日はこの後用事があるから、また今度な。 次はIDもちゃんと持ってくるから」
 先程までとは打って変わって下手に出てみる。
「わ… わかったわよ… じゃあ後日また再戦しましょう?」「もちろんだ! じゃあまたな!」
 西野に別れを告げ、歩美の手を引っ張って足早にその場を後にする。
 少し離れたところで後ろを振り返ると「約束だからね〜!」と西野が叫んでいた。
「ねえ、よかったの?」
 俺に手を引かれた歩美が心配そうに声を掛けてくるが、これこそ俺の作戦だ何も心配いらない。
「大丈夫、大丈夫」
 なぜなら西野には俺の連絡先を教えていないから、連絡を取ろうにも取れない。だから西野とは2度と会うこともないだろう…
 いや、戦場で再び出会うかもしれん…
 オンライン的な意味で…
 そんなことを考えながら、歩美の手を引っ張って今日の生放送の撮影の会場に移動するのだった。
 なんか歩美の顔が若干赤いような気がするけど気のせいかな?
 相手の機体を一目見ただけで、並大抵のプレイヤーではないことはすぐに理解できた。
「なんて数の武装を乗っけてるんだ、まるで固定砲台だな」
 最後の切り札として2機目の機体は残しておきたかったが、相手はどうやらそっちがプレイヤー機だと思ったようですべての火力を使って粉砕してくれた。
 どっちを狙われてもいいような布陣をとっておいたが、1番避けたかった展開になってしまった。
しかも、決め手のスナイピングを警戒していた奥の手で無効化されたのが痛い。
「今ので落ちていてくれたら楽だったんだが!」
 まあ、スピードタイプの機体を選んだ時点で、最終的には近接戦闘になるように仕向けるつもりだったから狙い通りなのだが、それにはこっちも大きくリスクを背負うことになるため、それまでに仕留めたかったというのが本音だ。
 しかし、初期装備では火力と射程距離が最低で、先程まで使っていたスナイパーライフルでも、初期装備の中では、高火力で射程も長いが、チャージしないと打てないし、それまでは移動不可と扱いが至って難しい代物だ。
 近接戦闘に縺れ込むのは時間の問題だっただろう。
 ただいくらスピードタイプとはいえ、初期モデルの量産機体だ。やはりどう取り繕っても機体性能に差があり過ぎる。
 装甲をパージして身軽になった相手が、こちらに一直線に向かってきて簡単に距離を詰められてしまう。  重力波の効果時間である30秒の間に決着をつけるつもりらしい。
「だが、そう簡単にはやらせない!」
 全速力で後退しつつ、ライフルを正確に相手機体の中心に撃ち込んでいく。
  ライフルのビームが重力波の中心に弾かれることによって、相手の速度がほんの僅かに減速していく。
 あとはスピードタイプの速度を利用して30秒を稼ぐ。
「スナイパーライフルの高出力のビームを弾くのに7秒、残り23秒…いけるな」
 相手にわざと懐に潜り込ませるように仕向け、逆にそのタイミングでこちらが相手の懐に飛び込んだ!
 すでにグラビティフィールドは消えていたため、サーベルを持つ相手の腕を抑え、ライフルを相手の胸のコクピット部分に押し当てる。
 勝負は決まった!
「これで終わりだ!」
「なーにが終わりですって?」「ファッ!?」
 最後に引き金を引く瞬間、装着していたヘッドギアを外されて『リタイア』になる。
 ヘッドギアを取られた方向を向くと、満面の笑みを浮かべた歩美がそこに立っていた。
「あ… いやッ… これはー…」「随分とお楽しみだったみたいねー、ゆーうーしーッ!!」
「ひッ、ひーッい! ごごご、ごめんなさーいッ!!」
 歩美に引きづられるようにしてゲーム機から出されながら、俺は歩美に謝る。
「その… ちょっとした出来心だったんです! 近くにゲーセンがあったもので、つい血が騒いでしまったといいますか、戦う者の宿命といいますか!」
「じゃあ、この危険な戦場からとっとと出ましょうかー?」
 歩美の腕を引く力がさらに増し、俺の腕があらぬ方向へと捻じ曲げられていく。
 「ぬぬッ、折れる、腕が折れて抜けるーッ!!」「ちょっと!そこのアンタ!」
「歩美! 腕がッ、腕が折れるッ!」「もう!シャキッと歩きなさいよ!」
「だってぇ! 腕が変な方向に曲がって…」
「ちょっとって言ってるでしょーッ!?」
 背後から物凄い大声が聞こえて、歩美と一緒に振り返ると、金髪ショートカットでいかにもスポーツが得意そうな雰囲気をした女子がこちらを睨みつけていた。
 別に胸がすっきりしているから運動しやすいんだろうなーとか、そういうふうに思ったわけじゃないよ?
 学校の制服だと思われるスカートをやけに短くしていて、ちょっと風が吹いたら見えてしまいそうなくらいだ。 なんてけしからん!
 しかし、はて?
 他校の女子生徒に声をかけられるようなことをした覚えはないが…
「さっきのはいったいどういうことよ!?」「え、さっき?」
 さっきって何のことだ? いやまさかこの子がさっきの対戦相手だったのか? 
 こんな男臭いコアなロボゲーをまさかこんな可愛い女の子がプレイしていたとでもいうのか!?
「うちの女たらしが何かあなたに失礼なことでもしたのでしょうか?」
  歩美が締め上げている腕に、さらに力が増し俺の腕が悲鳴をあげる。
「アーッ!! 歩美さん…!? 俺の腕そろそろ本当に折れちゃいますからね!?」「ちょっと静かにしてて!」
 「あの時… 私の腕を掴んで動きを封じておいて、最後の最後でギブアップするってどういうこと!? あんな辱めを受けたの… 生まれて初めてよ…」
 いや、あの… 確かにその通りなんだけど、そんな言い方したら駄目だと思わない?
「ふーん、やけに強引に彼女に迫ったのねー?」「いや、ちがッ! ああぁぁああああ!!!」
 そのまま変な方向へ曲げられていく俺の左腕、ありがとう… 今まで世話になったな、茶碗を持つときもギターを弾くときもお前に頼りきりだったね… お前のことは忘れないよ…  さよなら… 僕のレフトアーム…
「ちょ、ちょっと!? よくわからないけど、それくらいにしてあげたら…?」
 心配してくれるのは有難いが、後半はお前の所為だからなッ!?
「そうね、じゃああなたからも事情を説明してもらいましょうか?」
 歩美がそう言うと同時に、返事も聞かずに金髪女子の右手を掴み、俺と一緒に引っ張っていく。
「え? 何で私まで!? ちょっと待って!」
 いきなり歩美に連れ出され慌て出す金髪女子、だがもう手遅れだ。
「諦めろ、こうなった歩美はもう何人たりとも止められはせん」「元はと言えばアンタが!」
「みなまで言うな、誠意を持って話せばわかってくださる」「なんでこうなるのよーッ!!」
 金髪女子は隣でワーキャー騒いでいるが、歩美様の機嫌を直さない限り、俺たちに明日はない。
  そのまま歩美に引きずられた先は、先程のフードコートだった。
 3人で丸テーブルを囲むように座ると、すぐに俺はゲーセンでの出来事を細かく歩美に説明した。
 何かと言葉足らずな金髪女子が説明すると、またあらぬ誤解を招いてしまうかもしれないため、金髪女子が喋る隙を与えないように話し続けた。
  一通り説明し終わるとどうやら歩美も納得してくれたようで、あの不気味な笑顔はすでに収まっていた。
 「関係がないのに巻き込んでしまったごめんなさい。 えっと… 」「私は『西野 莉奈』神無月学園の2年よ」
「私は桐島歩美、こっちが入月勇志、2人とも六花大付属高校の2年だから、西野さんとは同い年ね」
 自己紹介が終わる頃にはこの場の空気もかなり和んでいた。
「呼び捨てでいいわよ、アンタはダメだけど…!」「はいはい、わかりましたよ“西野さん”!」
 何故かこの西野とかいう奴は、俺のことを目の敵にするような態度をとってくる。
「もしかして、ゲームに負けたのが悔しかったのか?」「うるさいッ!負けてないし! アンタは最後にリタイアしたんだから、私の勝ちなんだからね!!」
「ムキになりやがって! やっぱり悔しいんじゃないか!!」「悔しくなんかありません〜!!」
「はいはい、喧嘩しないの!!」
 歩美に止められて、お互い顔を背けるように反対側を向く。
 一体こいつは何なんだ! 何かと絡んでくるし、負けず嫌いで面倒臭いし…!
「アンタ、もう1度私と勝負しなさい!」「もういいだろ、お前が勝ったんだからもう1度やらなくても」
「あれじゃ私が納得できないのッ! それとも何? 私に負けるのが怖いの?」「はいはい、怖いです怖いです」
「ムッカー! もう許さないんだから!」「わかった、わかった戦うよ、けど今日はこの後用事があるから、また今度な。 次はIDもちゃんと持ってくるから」
 先程までとは打って変わって下手に出てみる。
「わ… わかったわよ… じゃあ後日また再戦しましょう?」「もちろんだ! じゃあまたな!」
 西野に別れを告げ、歩美の手を引っ張って足早にその場を後にする。
 少し離れたところで後ろを振り返ると「約束だからね〜!」と西野が叫んでいた。
「ねえ、よかったの?」
 俺に手を引かれた歩美が心配そうに声を掛けてくるが、これこそ俺の作戦だ何も心配いらない。
「大丈夫、大丈夫」
 なぜなら西野には俺の連絡先を教えていないから、連絡を取ろうにも取れない。だから西野とは2度と会うこともないだろう…
 いや、戦場で再び出会うかもしれん…
 オンライン的な意味で…
 そんなことを考えながら、歩美の手を引っ張って今日の生放送の撮影の会場に移動するのだった。
 なんか歩美の顔が若干赤いような気がするけど気のせいかな?
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