初めての恋
解き明かされる過去47
「ああ、もう終わりかよ?」「自分からきといて根性ねーな」「なんだよその目は? いい加減、偽善者ぶるのやめろよ!」
今日も三バカは威勢だけはいい。昨日と同じ練習場で誰もいないからと暴言と暴力で、反抗する気力も体力もない僕を罵る。その中の高橋が放った一撃が顎に当たり視界が歪んだ。
ああ、これやばいかも。今日も体も顔も痣だらけ、そのうちまた倒れることになるだろう。今ので口内のどこかが裂けたのか血の味がする。少しだけ吐き気がして、視界が霞む。その霞む視界が濃霧の中を強烈な光源で先を照らしているかのように、眩しく光が乱反射したように真っ白になる。
ここが現実なのか夢なのか分からない。確かなのは四人の声が聞こえないことだけだ。もしかしたら、気絶したのかもしれない。朦朧とする意識と視界ゼロの前方。吹雪に巻かれたと表現したほうが似合っているその視界の中、足元に得体も知れないヌメリを感じた。
ふと、視線を落とすとそこには血だまりがあった。誰の血だ、僕のではない。僕の体以外から出た血が僕の足元で円を描く様にジワリジワリと広がっている。まるで日の丸弁当の中央に立っている様だ。
「――! ――!」
かすかに物音が聞こえる。誰かが叫んでる声、誰かが泣け叫ぶ声、けたたましく救急車のサイレンが鳴り響く喧騒、そのすべてが一斉に耳元で騒ぎ出す。
正直何がなんだか分からない。思考が追いつく暇もなく、耳元で何らかの事故現場を想像させる喧騒が鳴り響いている。
「どういうつもりだ! 寺嶋!」
ハッと聞き覚えのある怒号で我に返る。見慣れた後頭部が僕を庇うように四人と対峙している。どこかで見たことある光景だと思ったら、それもそうだ。制服を着た拓哉が右手を僕の前にかざし飛来したボールを弾いたところだった。
「なんで真田がいるんだ、お前入院してるんじゃないのか?」「うっせんだよ! これはどういうことだって聞いてんだ! おい寺嶋! 答えろ!」
無理もないと言えば無理もない。僕は口角から血を垂らし意識もなく気が付いたらフラフラの状態で立っている有様だ。第三者から見たらとてもじゃないが平常心をもって対応するにはいささか過激すぎる。
激高した拓哉が寺嶋の胸倉を掴むのは当然なのだ。
「なにって、ゴールキーパーをやってもらってるだけだが?」「キーパーって、経験もない雅にこれだけのボールを蹴り続けたのかお前ら?」「普通だろ? 俺たちは強豪校の一軍だ。並大抵の練習量じゃ周りの期待に答えられない」
あくまでも平然と答える寺嶋とその背後でなりを潜める三バカ。後ろのやつらは少しだけうろたえている様に見えた。さすがに激高する拓哉と自分たちがしでかしていることに罪悪感を抱き始めているのかも知れない。
「期待? こんなことをして期待に応えているって言ってんの? バカか! いいかこれはイジメだ! イジメ! 校内暴力だ!」「イジメって……そんなつもりは」「校内暴力って言い過ぎじゃね?」「だから、やりすぎだって言ったじゃないか」「なんだよ秋葉、お前だってノリノリだったじゃねーか」
三バカが仲間割れを見せる。やっと自分たちの愚行に気が付いたのか落ち着きを無くす。
「だったらなんだって言うんだよ? 学園に密告するのか? そうだよね、お前はもうサッカー部を退部した身だ、関係ないよな」「ああ、そうだ、俺はお前たちを騙してサッカー部を退部した。本当はケガしたことを隠して、恋に溺れる男子になろうとしたさ」「ケガだと? どういうことだ真田? ケガってなんだ」
ついに拓哉が真実を口にした。あからさまに四人に動揺の色が見る。特に寺嶋が初めて声を上ずらせ少し早口になっている。
「お前の怪我と同じだ。俺もあの時にケガをしたんだよ」「え、嘘だろ……嘘だって言ってくれ! なあ! 嘘だよな拓哉! サッカー出来ない程の怪我なんてしてないよな」「嘘じゃねーよ、ならなんでこの俺がサッカーを辞めなきゃいけないんだよ」
今度は寺嶋が拓哉に詰め寄る。そして拓哉のもっともな反論に言葉を無くし、拓哉が自分からまくり上げたズボンの裾が手術痕の残る右ひざを開放すると、ガクッと膝から崩れ落ちた。
今日も三バカは威勢だけはいい。昨日と同じ練習場で誰もいないからと暴言と暴力で、反抗する気力も体力もない僕を罵る。その中の高橋が放った一撃が顎に当たり視界が歪んだ。
ああ、これやばいかも。今日も体も顔も痣だらけ、そのうちまた倒れることになるだろう。今ので口内のどこかが裂けたのか血の味がする。少しだけ吐き気がして、視界が霞む。その霞む視界が濃霧の中を強烈な光源で先を照らしているかのように、眩しく光が乱反射したように真っ白になる。
ここが現実なのか夢なのか分からない。確かなのは四人の声が聞こえないことだけだ。もしかしたら、気絶したのかもしれない。朦朧とする意識と視界ゼロの前方。吹雪に巻かれたと表現したほうが似合っているその視界の中、足元に得体も知れないヌメリを感じた。
ふと、視線を落とすとそこには血だまりがあった。誰の血だ、僕のではない。僕の体以外から出た血が僕の足元で円を描く様にジワリジワリと広がっている。まるで日の丸弁当の中央に立っている様だ。
「――! ――!」
かすかに物音が聞こえる。誰かが叫んでる声、誰かが泣け叫ぶ声、けたたましく救急車のサイレンが鳴り響く喧騒、そのすべてが一斉に耳元で騒ぎ出す。
正直何がなんだか分からない。思考が追いつく暇もなく、耳元で何らかの事故現場を想像させる喧騒が鳴り響いている。
「どういうつもりだ! 寺嶋!」
ハッと聞き覚えのある怒号で我に返る。見慣れた後頭部が僕を庇うように四人と対峙している。どこかで見たことある光景だと思ったら、それもそうだ。制服を着た拓哉が右手を僕の前にかざし飛来したボールを弾いたところだった。
「なんで真田がいるんだ、お前入院してるんじゃないのか?」「うっせんだよ! これはどういうことだって聞いてんだ! おい寺嶋! 答えろ!」
無理もないと言えば無理もない。僕は口角から血を垂らし意識もなく気が付いたらフラフラの状態で立っている有様だ。第三者から見たらとてもじゃないが平常心をもって対応するにはいささか過激すぎる。
激高した拓哉が寺嶋の胸倉を掴むのは当然なのだ。
「なにって、ゴールキーパーをやってもらってるだけだが?」「キーパーって、経験もない雅にこれだけのボールを蹴り続けたのかお前ら?」「普通だろ? 俺たちは強豪校の一軍だ。並大抵の練習量じゃ周りの期待に答えられない」
あくまでも平然と答える寺嶋とその背後でなりを潜める三バカ。後ろのやつらは少しだけうろたえている様に見えた。さすがに激高する拓哉と自分たちがしでかしていることに罪悪感を抱き始めているのかも知れない。
「期待? こんなことをして期待に応えているって言ってんの? バカか! いいかこれはイジメだ! イジメ! 校内暴力だ!」「イジメって……そんなつもりは」「校内暴力って言い過ぎじゃね?」「だから、やりすぎだって言ったじゃないか」「なんだよ秋葉、お前だってノリノリだったじゃねーか」
三バカが仲間割れを見せる。やっと自分たちの愚行に気が付いたのか落ち着きを無くす。
「だったらなんだって言うんだよ? 学園に密告するのか? そうだよね、お前はもうサッカー部を退部した身だ、関係ないよな」「ああ、そうだ、俺はお前たちを騙してサッカー部を退部した。本当はケガしたことを隠して、恋に溺れる男子になろうとしたさ」「ケガだと? どういうことだ真田? ケガってなんだ」
ついに拓哉が真実を口にした。あからさまに四人に動揺の色が見る。特に寺嶋が初めて声を上ずらせ少し早口になっている。
「お前の怪我と同じだ。俺もあの時にケガをしたんだよ」「え、嘘だろ……嘘だって言ってくれ! なあ! 嘘だよな拓哉! サッカー出来ない程の怪我なんてしてないよな」「嘘じゃねーよ、ならなんでこの俺がサッカーを辞めなきゃいけないんだよ」
今度は寺嶋が拓哉に詰め寄る。そして拓哉のもっともな反論に言葉を無くし、拓哉が自分からまくり上げたズボンの裾が手術痕の残る右ひざを開放すると、ガクッと膝から崩れ落ちた。
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