創造神で破壊神な俺がケモミミを救う

てん

第35話

宿屋にいたオリジナルの大地はコピー体のペーストを終えると、気持ちよさそうに寝ているルルとメリアを起こす。

「おい。ルル、メリア起きろ!」

「大地さん何ですかぁ~」

「人が気持ち良く寝ているのに何よ・・・・」

「目的の人物が見つかった。今から会いに行くぞ。」

「あぁやっぱりあいつらの一味が来たのね・・・」

「そういえば大地さんがマルタまで来た目的って何でしたっけ?」

ルルの疑問にまだ詳しい説明をしていない事に気付いた大地はジョゼから聞いた情報と覗いた記憶の事について説明する。

「あぁ・・そんな事があったんですね。大地さん全然説明してくれないから・・・」

「それは悪かった。色々考える事があって気が回っていなかったみたいでな。」

「まぁ気にしてないからいいですけどね。それで今からそのスパイと関わりのある可能性がある人に会いに行くってことですね。」

「あぁ多分間違いなく戦闘になると思うから、気を緩めないようにな。」

大地はルルに念を押すと、目的地のある冒険者ギルド隣の酒場へと向かっていった。

南側は北側の商業地区に比べ、あからさまに生活レベルの低下が窺えた。

道路には物乞いが列を成しており、その中には小さい子供達の姿もあった。

大地は獣人だけでなく人間達の中にも獣人と同じように虐げられている人達がいるのだと知り、これがこの世界の現実なのだと感じた。

大地は小さい子供達の姿に後ろ髪を引かれながらも、目的地である酒場まで歩いていく。

南側の冒険者街に入ってほどなくして冒険者ギルド隣の酒場に辿りついた大地達は臆することなく酒場の中へと入っていった。

大地達が酒場に入ると、酒場内にいる冒険者達の視線が大地達に集中した。

「おい。ここがどんな場所か知って来たのか?」

冒険者達の視線を感じながら酒場の中央付近まで大地達が入りこんでいくと、奥の席で飲んでいた幹部と思われる中年の男が冒険者をかき分けながら大地達の目の前までやってくる。

「ここにケンプフと呼ばれる奴がいると聞いてな。そいつに用があってきたんだが。」

「ケンプフさんに? 何の用だ?」

「ただ聞きたい事があるだけだ。それが聞ければすぐにどっか行く。」

「そんな説明で、はぁそうですかってこっちがなるとでも思ったか?」

「まぁならないよな。仕方ないか・・・」

「そういうことだ。出口は後ろにある、死にたくなければすぐに消えろ。」

ため息をつく大地に対して、幹部と思われる男が笑みを浮かべた瞬間、その男の額に銃口が突き付けられた。

「どういうつもりだ?」

「いや口でダメなら実力行使しかないだろ?」

「てめぇ!」

大地の行動にへらへらと馬鹿にしたような表情をしていた周りの冒険者達の顔つきが変わる。

一部の冒険者は既に武器を抜いた状態で大地を睨んでいた。

「それでどうする? このままだとお前の頭が吹きとぶぞ。」

「脅しのつもりか。そんな小さい鉄の塊で何が出来る!」

「じゃあ試してみるか? 責任はとれないぞ?」

「あぁ良いだろう! それで殴るなり、切るなりしてみろ! その瞬間にお前がこいつらに切り刻まれるだけだ!」


幹部の男が大地に吠えた瞬間、大地は躊躇なく銃剣の引き金を引いた。

幹部の男は宿屋の隣の酒場で撃たれたガルダと同じようにえび反りになると、そのまま床に倒れた。

その光景を見ていた冒険者達は頭から血を流して動かない幹部の男を見たまま固まってしまう。

大地はその隙にルルと背中合わせになると、銃剣を両手に持ちだした。

ルルも同じように二丁の銃剣を携えると、二人は背中合わせのまま、時計回りに回りながら銃剣を乱射させた。

冒険者達は抵抗する間もなく身体に銃弾を何発も浴びながら朽ちていく。

銃撃を浴びている間、銃という武器を知らない彼らの中に自分の身に何が起きたのか理解できた者はいなかっただろう。

大地とルルが一周する頃には立っている冒険者は誰一人としておらず、全員が物言わぬ人形となっていた。

そんな中冒険者の死体の中から怒声が響いた。

「あんた達私も殺す気なの! やるなら前もって説明しときなさいよ!」

「あっごめんなさいメリアちゃん! 大地さんがメリアちゃんなら大丈夫っていうから。」

「・・・大地?」

「いやさすがにすまん。お前なら避けるなりなんなりするかと思ってな。」

後ろで黒い霧を全面に放出させ大地達の銃弾を防いでいたメリアは死体に交じりながら、顔を真っ赤にして怒りの表情を大地達に向けていた。

大地は怒りを露わににするメリアを見て、機嫌直しのシェイクを再現しメリアに渡す。


メリアはルルの紹介でシェイクを飲んで以来、シェイクにはまってしまい、ボレアスを出てからは毎日大地にシェイクをせがんでいた。

メリアは渡されたシェイクを奪い取るように取ると、「許したわけじゃないから!」と言い放ち、シェイクを美味しそうに飲みだす。

大地はシェイク一つで機嫌を直すメリアを見て、実年齢六百越えに疑問を感じながら、裏口の方へ向かった。

裏口を開けると狭い路地に繋がっており、そこを抜けると古びた小さな教会が見えた。

小さな教会に入ると古いながらもしっかりと清掃の行き届いている女神像が目の前に姿を現した。

教団や信者が座るであろう長椅子も埃が積もっている様子もなく、毎日掃除をしているのがよくわかる。

大地達が教会内を散策していると奥から男の声が響いた。

「あなた達は誰だ! 何の用があってここに来た!」

教壇の右奥にある部屋から腕にタトゥーのある男が姿を現す。

「おまえがケンプフか?」

「そっそうだが・・・」

「お前に聞きたいことがあってな? トームにいるスパイってのは誰だ?」

「なっ・・・何でその事を。」

ケンプフは驚愕の顔を見せると、すぐさま戦闘態勢を取り出す。

大地はケンプフの能力値を確認すると、ルルの肩にポンッと手を置いた。

「ルル。こいつとやってみるか?」

「えっ! 私ですか!?」

「能力値を見る限り、ルルでも勝てるはずだと思う。もちろん危なくなったら助ける。これから帝国と戦争になるかもしれないんだ。ここらで実践経験を積んでおいたほうが良いと思うんだが。どうする?」
「はい! やってみます!」

ルルは大地の勝てるという言葉を聞いて、大地の信用に答えようと元気良く返事をすると、ケンプフの方へと一歩前に出る。

「大地本当に大丈夫なの!?」

「なんだルルが心配か?」

「何よ悪いの!? 心配だわよ!」

「俺だけじゃなくお前もいるんだ、大概の事は大丈夫だろ。それに相手の能力値も見た。今のルルなら十分戦える相手だ。」

「そう。ならいいのだけど・・」

「知らない間に随分とまぁ仲良くなったもんだな。」

「何よ!ルルと友達になったらいけないっていうの!?」

短い間に随分と仲良くなったルルとメリア。大地がルルの事でメリアをいじると、メリアは怒りながらもまんざらではない様子を見せる。

大地はメリアがルルとの友達になってくれたことに内心感謝しながらも、何故かメリアに対しては素直にお礼を言えず、茶化すような態度をとってしまっていた。

そんな二人を尻目にケンプフとの戦いに向け、銃剣を腰から抜いたルル。

ケンプフは武器を取ったルルを見て、すかさず周囲に水の障壁を展開させる。

「そんな水の守りじゃ弾丸は防げませんよ!」

ルルは銃剣から弾丸を二発放つ。放たれた二発の弾丸はケンプフの頭と心臓に目掛けてピンポイントで飛んで行く。

しかし二発の弾丸がケンプフの展開した水の障壁に触れた瞬間、弾丸の速度が急にスロウ状態になる。

ケンプフは動きの鈍った弾丸を持っていた杖で弾き飛ばし弾丸による攻撃を防ぐ。

「何ですかその武器は・・・恐ろしい速さで金属の玉を放つ武器なんて、見た事も聞いた事もない。」

「めんどくさい障壁を張ってますね。さてどう攻略したら良い物か・・・」

ルルはスキル「昇華敏捷」を使い脚力強化を行うと、ケンプフの周りを飛び回るように走り抜けながら、弾丸を放っていく。

ケンプフは何処から飛んでくるかわからない銃弾を防ぐために全方位に水の障壁を張らざる負えない状態になる。

そのまま戦況が一時膠着状態になるが、徐々にケンプフの顔に焦燥感が出てくる。

魔力消費の少ない身体強化スキルしか使っていないルルは魔力消費がほとんどないのに比べ、常に水の障壁を張っているケンプフは攻撃に魔力をまわすことが出来ないだけでなく、魔力を垂れ流している状態に等しい。

このままでは攻撃を防いでいる間に魔力枯渇を起こすと判断したケンプフは壁際まで移動すると障壁の範囲を狭め、前方に配置する。

障壁を狭めたことで攻撃にも魔力をまわせるようになったケンプフは水弾をルルに向けて乱射した。

ルルは水弾を避けながら弾丸を放ち続けるが、壁際を背にしたケンプフには死角が存在せず防がれてしまう。

攻撃に意識を向けすぎていたルルは動きに精彩を欠いてしまい、豪雨の様に降り注ぐ水弾の一部がルルの身体を次々と掠めていく。

「きゃあ!」

水弾が身体を掠めたことで思わず声をあげるルル。

身体に傷を負ったルルは一度態勢を整える為にすかさず教会の柱の裏に隠れた。

ケンプフは教会の柱にルルが隠れたのを見ると、水弾による攻撃は何故か止める。

ルルはケンプフが攻撃を止めた事を不思議に思いながらも、模擬戦で言われたマヒアの言葉を思い出していた。

『ルルは確かに銃の扱い自体上手いが、銃の生かし方がまるでわかっていない。』

このままでは勝てないと感じたルルはマヒアに言われた銃の生かし方について考える。

大地にもらった銃剣は確かに強力な武器であることは間違いない。大抵の相手はこの武器だけで勝てるだろう。

しかしマヒアのように戦闘技術に優れた敵を相手どった時は、武器の性能を理解しそれを正しい意味で使いこなさないと勝つことは出来ない。

ケンプフは銃の性能を理解しすぐに対策を立ててきた。これまでのルルの力押しのような戦い方では勝てないだろう。

そう感じたルルはこれまで銃のみに頼った攻撃方法ではなく魔法と銃を融合させた戦闘方法を考える。

少しの間思案した後、ルルは柱に隠れながら、銃剣に魔力を込めるとケンプフの方向ではなく銃口を真横に向けて弾丸を発射させた。

「ぐわっ!」

ケンプフとは全く違う方向へと向けて放ったはずの銃弾は、ケンプフの右足を貫通していた。

ルルの銃口が自分の方ではなく明後日の方向に向いているのを見ていたケンプフは焦った様子で全方位に障壁を張る。

するとルルが今度は二発の弾丸を先程と同じ方向へ放つ。

放たれた二つの弾丸は表面に水魔法を纏っていた。ルルは高速で放たれた弾丸を纏わせた水魔法により操作することで、真っ直ぐにしか飛ばない弾丸を、ケンプフを追跡するホーミング弾にしていた。

ルルの水魔法の最大の特徴はその操作性の高さであった。

密林で生活していた時、農作物の水やりがルルの日課だった。

広い畑を歩き回るのが面倒くさかったルルは、出現させた水の塊をそれぞれの畑の真上まで持っていき、シャワーのように水を与えていた。

しかもその時植えている作物によって降らせる水の量まで調節していた。

そんな事を何年も繰り返していたルルの水魔法の操作能力は近距離でなら自由自在に水塊を発現または移動させる事が出来るレベルにまでなっていた。

その操作性の高さを利用して放たれたホーミング弾は寸分も狂うことなく列をなし、なめらかなカーブを描くと、ケンプフ目掛けてその速度を増していく。

先頭の弾丸が水の障壁に着弾するとスロウの効果によりその速度を弱める。

しかしそのすぐ後ろを飛んでいた弾丸が先頭の弾丸に着弾すると、押し出されるように先頭の弾丸の速度が増し、水の障壁を抜けケンプフの左足を貫いた。

「ぐっ!何故!?」

全方位にスロウの効果を持った水の障壁を張り、防御に関しては完璧だと思っていたケンプフは打たれた痛みで魔力制御に意識を向けることが出来ず、水の障壁を解いてしまう。

ルルはそのまま床に座り込んでしまったケンプフが見せた一瞬の隙を突き、昇華敏捷により距離を詰めると、ケンプフの心臓に銃剣を突き立てた。

「私の勝ちです。降参してください。」

「くそ・・ここまでか。」

ドンクレスの一員であったケンプフは勝ち目がないとわかると、自身に仕組まれている自爆魔法を発動させようとする。

それに気づいた大地がルルにセキュリティをかけようとしたその時、教団の右奥から女性の声が響いた。

「止めてください!」

声の主は走って、床に座るケンプフと銃剣を突き立てるルルの間に入ると、両手を広げケンプフをかばう素振りを見せた。

大地はその女性の姿に思わず驚いた表情を見せる。











ケンプフをかばっている女性は、身体に鱗のような物を備えている、蜥蜴の獣人だった。
    

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