創造神で破壊神な俺がケモミミを救う

てん

第11話

「大地殿は?」

「今出てったよ。」

「そうか。ルル大丈夫か?」

「・・・・何が?」

「いや・・・なんでもない。族長が待っている会議場まで行こう。」

ルルが目に涙を溜めながらも気丈に振るまう姿を見て、マヒアはそれ以上の追及を止め、ルルと族長の元に向かう。

「ルルよ、辛い役目を任せてしまったのう。許しておくれ。」

会議場に着くとレイが複雑な表情をしながら申し訳なさそうにルルに話しかける。

ガランは幹部全員が集まったのを確認し現在の状況、作戦について説明を始める。

「全員そろったようだな。それでは今から帝国兵撃退の為の作戦を説明する。まず帝国兵だがやはり数は一万、偵察の情報によると、明日の午後に先発隊として三千がこの村に到着する予定だ。先発隊の後ろに補助隊二千が配置されており。三キロ離れた場所に本隊五千が本陣を構えているようだ。」

「最初に来るのは三千か・・・こちらは全員で百人。いや戦えるという点で言えば八十人程度じゃのう。」

「はい。族長が言われる通り、パーキ達を前線に連れていくことは出来ない。パーキ達子供を含む非戦闘員はゼーレの指示で負傷者の救護に当て、村の中で後方支援に回ってもらう予定だ。そして残りの八十人を四つに分ける。一つ目は俺が率いる前線維持部隊。二つ目はマヒア率いる後方攻撃部隊。三つ目はフィア率いる後方支援部隊。四つ目は族長とルルの前線遊撃部隊だ。」

ランガは机の上にある物を使い簡易的な戦場模型を作り作戦について話をする。

「まず先発隊だが数が違いすぎる為、正面でやりあうには分が悪い。しかし密林での進軍で相手は疲れているだろうし、密林の地理は俺たちが一番よく知っている。それを活かし先発隊がたどり着く前に奇襲にて先発隊を叩く。」

「具体的には私達はどう動けばいい?」

「まず俺の隊と族長の隊が午前中のうちに村より一キロ先にある密林に潜む。先発隊が奇襲ポイントに入った段階でマヒアの隊のライフルでの魔法狙撃を合図に奇襲を仕掛ける。奇襲部隊は狙撃により混乱している間に攻撃を加え、また密林に隠れる。これを繰り返し少しずつ敵の数を減らしつつ、相手の戦意を削いでいく。フィアの隊には先発隊が遠距離魔法を村に撃ってきた場合に備えて欲しい。」

「わかった。先発隊に対してはその案で良い。帝国兵の奴らはたかが獣人だと油断しているはずだから成功する確率は高い。しかし補助隊が出てきた場合はどうする。長時間奇襲を行えば敵も対応してくるだろう。補助隊まで同じ方法では成功するとは考えられんが。」

マヒアが顔をしかめながら、ガランに対して補助隊への対応について聞く。するとガランは少しおかしそうに笑いながらある物を取り出した。

「それは我らが創造主様(笑)の作った武器を使う。」

ガランが取り出した物を見ると重厚感溢れる細長い筒の先端にひし形の弾頭がついていた。

「これは創造主様(笑)いわく魔法を使わず爆発を生み出せる代物でロケランという物らしい。勘のするどい大地が大事をとって置いていった物だが、威力はこの目で見たから間違いない。大地が嫌な予感がしたといって作ったもので十本しかないが、まとめてぶっ放せば二千程度はやれる。それにフィアには小型でピンを抜くことで爆発する物を持たしている。それをフィアのゴーレムに持たせて特攻させれば討ちもらした敵も村に入るまえにやれるはずだ。」

危機的な状況で獣人にとって絶対的な存在である大地がいない中、大地が作ったものが自分達を鼓舞してくれていると気付き一瞬和やかな雰囲気になるルル達。

しかしガランが顔を再度引きしめて話を続ける。

「これで、帝国兵が引いてくれればいいんだが。」

「引かなかった場合は?」

ゼーレが不安そうな顔でガランに尋ねる。ガランはため息をつきながら答える。

「さすがにもう策が思いつかない。奇襲作戦も相手に警戒されては効果が薄い。借りにロケランがあったとしても弾速が遅い為、空中で魔法による狙撃を受ける確率が高い。俺の作戦は全て初見の相手に効果を発揮するものであって、一度見られた相手には通じないだろう。」

ガランの作戦を聞き、もしかしたらという希望を覚えていたゼーレやフィオは落胆した様子を見せる。

そんな様子を見てガランは優しい笑みを浮かべながらゼーレ達に話し始める。

「ゼーレ、フィオ、ルル。もし帝国兵の本隊が来た場合は子供達を連れて逃げろ。お前たちはまだ若い、お前らぐらいの人数ならもしかしたら帝国兵から逃げられるかもしれん。近いうちに大地も帰ってくる。大地なら必ずお前たちを守ってくれるはずだ。」

「何を言ってるんですか!みんなで話し合って決めたじゃないですか!ここを私達の死地にすると。なのに私達だけ逃げろって・・はい分かりましたってなる訳ないじゃないですか!」

ゼーレは興奮した様子でガランに怒気を含んだ声で反論する。後ろでは同じ気持ちだったのであろうフィオとルルはガランを睨んでいた。しかしガランは動じることなく淡々と話を進める。

「パーキ達にも同じ事が言えるのか?」

「え・・・それは・・・」

「パーキ達はまだ九歳の子供だ。出来ればこんな争いに巻き込みたくない。しかしパーキ達だけ逃がしてもこの密林では生きていけないだろう。辛い事をお前たちに任せているのは重々承知の上だ。その上でお前たちには生きてパーキ達を守ってやって欲しい。先に死ぬのは年長者の役目だと思ってくれ(笑)。」

冗談交じりにゼーレ達を説得するガラン。マヒアが後ろで「私もまだ若いぞ」と同じく冗談交じりにガランをからかう。

その後レイからの説得もあり、帝国兵の村への侵入を許した場合と帝国の本隊が出てきた場合は子供達を連れて逃げることを渋々約束したゼーレ達。

最後に細かい動きのすり合わせ、武器、防具の確認を行い作戦会議を終えた。

解散後部屋に残ったレイにガランが神妙な顔つきで相談し始める。

「族長。もし敵の本隊が現れた場合、狂戦士化しようと思っています。私の部下も同じ考えです。」

「そうか。・・・わかった。しかし約束してくれ。それは禁忌の手段じゃ。ルル達の逃げる時間を稼ぐ為以外には使用するな。」

「わかりました。部下にも伝えておきます。」

ガランは一礼すると会議場を後にする。その後各々に明日の戦闘の準備を行い夜が明けるのを待った。

日が照る中、帝国兵先発隊は密林の中、コンパスを見ながら獣人の村を目指し進軍していた。

先発隊を率いるはディーク中尉と呼ばれる男。

ディーク中尉は馬上にて現在の進行状況の報告を部下に命じる。

「現在の場所は?」

「はい。現在獣人の村の一キロ手前のまで来ております。間もなく獣人の村を目視にて確認出来るようになると思われます。」

「進行状況は概ね予定通りか。よろしい。それでは今から獣人の村への襲撃、殲滅作戦を行う。皇帝陛下からは子供や若い一部の獣人は捕虜として捕らえよとの命令が出ている。間違っても殺すな!!それ以外はお前らの好きにしろ!!」

ディークが兵士に檄を飛ばすと「ウォー!」と地響きのような声が辺りに響く。ディークは兵士の士気に満足そうな表情を見せ、進軍の号令を出す。

三千の兵士が隊列をそろえ真っ直ぐに進軍し始めた時、急に前方から降り注ぐように現れた、無数の赤い閃光が先発隊を襲った。

目視では捕らえることの出来ない閃光は無慈悲にも先発隊を貫いていく。

その閃光は着弾と同時に燃え盛る火炎となり、辛うじて貫かれなかった周りの兵士を燃やしていった。

目の前で次々と赤い閃光の餌食になっている兵士を見て、ディークは必死に号令をかけ隊列を立て直そうとするが、油断している中に思いもよらない攻撃に兵士は混乱状態に陥る。

「お前ら、慌てるな! 陣形を組み直し、前方への警戒を強めよ!」

ディークは前方への警戒を強めるように号令をかけ、兵士達は隊列を乱しながらも前方へ精神を集中させる。

ディークは側近の魔法師に命令し魔法師隊を前衛に出すと、土魔法による土壁を全面に展開させる。

赤い閃光は次々に土壁を壊していくが、魔法師も同じ速度で土壁を展開し防いでいく。

一時的にでも謎の閃光を防いだことで、一瞬気が緩むディークと兵士達。しかしそれは致命的な気の緩みとなった。

左右から挟むように密林の繁みから出てきた武装した獣人が、魔法師がいなくなり手薄となったディークに強襲を仕掛ける。

奇襲を仕掛けられた兵士達は浮足立ち、自身の守りで精一杯になる。ガラン一直線に護衛ついていない状況を確認しディークに切りかかる。

「この・・・獣人如きがぁぁあああ!」

ディークも剣を抜き応戦しようとするが、一太刀のもと首を刈り取られ絶命する。

獣人達はディークを討ち取ったのを確認すると再度密林の中に逃げ込んだ。

「ディーク中尉が討ち取られたぞ! 補助隊に通達しろ!」

ディーク側近の魔法師が土壁を展開させながら、部下に命令を出す。その顔は脂汗をひどくかいており顔色も悪い。

魔法師達は多量の土壁を高速で展開させていたので魔力が付きかけていた。

「相手はどれだけの魔力を持っているのだ・・・もう・・・持たんぞ・・・」

段々と土壁の数が少なくなっていく。魔法師達もなんとか踏ん張っていたが、一人また一人と魔力切れになる。

「何なんだ、この魔法は・・・・私達はとんでもない者を相手にしているのでは―――」

側近の魔法師が敵への底知れぬ恐怖を感じた時、同時に魔力が切れ、赤い閃光に貫かれる。

防ぐ物の無くなった赤い閃光は次々と兵士達を貫き、燃やしていく。

混乱に陥り戦意を喪失した兵士達は我先にと逃げ出すが統率も取れていない兵士達は、奇襲を行うガラン達には恰好の餌食となり、その数を急激に減らしていく。

結局赤い閃光の射程範囲から逃れた時には兵の数を三分の一程度まで減らしていた。

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