創造神で破壊神な俺がケモミミを救う

てん

第8話

「どういうことか説明してくれるかな?」

ログハウスを出て自分の家に避難した大地は、額に青筋を浮かべながらルルを椅子に座らせ問い詰める。

問い詰められたルルはまるで小動物の様にプルプルと震えている。

「私もよくわからないんです。大地さんと別れてから爺様の所へ行ったら既にみんなあんな感じになってて。私達は創造主様に仕えることにしたとか急に言われて・・・」

「ルルは大丈夫なんだよな?」

「私は大地さんが違う世界から来たと信じていますから。」

「ならいいんだけど。ちなみに創造主様ってのはなんなの?」

ルルは創造主とこの世界の歴史について説明する。ルルによると創造主とはこの世界における唯一神であり、この世界を作ったとされる存在だそうだ。

創造主が作った世界は当時、人間、魔族、妖精族、小人族等の多種多様な種族が存在し、それぞれに領地を持たせ線引きすることで争いもなく平和の状態を維持していたらしい。

しかし長い年月が経つにつれ、種族間での価値観の違いにより、小さい争いが起こるようになった。その中でも最も仲が悪かった人間と魔族はいつ大きな争いになってもおかしくない一触即発状態になっていった。

その当時、人間は身体能力や魔力が平凡ではあったが、妖精族や小人族から魔法や鍛冶、工芸技術を学んでおり、それぞれの種族に敵わないまでも高いレベルまで独自に昇華させていた。

また他の種族に比べ寿命が短い為、繁殖能力が高くなっており、数だけで言えば他の種族を圧倒していた。

魔族は元々高い身体能力と魔力を有しており、また魔獣を使役出来る能力があった為、戦闘能力だけでいえば他の追随を許さなかった。

しかし寿命の高い魔族は子供が出来にくい体質であり、その数は世界が出来た時の頃とほとんど変わっていなかった。

お互いに牽制し合う中、魔族の一人が人間国の国王を暗殺した事がきっかけとなり人間と魔族の戦争になった。

最初は魔族側が高い身体能力と魔力を発揮し、人間側を追い詰めていたが、物量に勝る人間側が徐々に盛り返し、魔族側を追い詰めていった。

しかし、追い詰めたものの決定打に欠けていた人間側は、長年魔族に匹敵する戦士を作るために行っていた研究を実行に移した。

その研究とは摩族が使役していた魔獣の遺伝子を人間に適合させるというもので、研究途中であったため、安全を保障出来るものではなく、人体実験に近いものだったようだ。

実際に遺伝子を適合させた人間は獣と人の間の様な姿になり、身体能力や魔力は魔族に匹敵するほど大幅に上がったが、精神を壊してしまい、狂戦士化してしまう者ばかりだった。

狂戦士化を防ごうとして適合させる遺伝子の量を減らせば、姿は変化するものの身体能力が少し上がる程度の変化しか見られなかった。

結局何度試しても前者か後者の結果にしかならず、この研究は一度も成功せずに中止となったそうだ。この時の後者側の人達が後に獣人と呼ばれる種族となっていったらしい。

しかし人間側は、戦力だけ見れば魔族に匹敵する狂戦士達を魔族にぶつけ、疲弊した魔族に総力をかけて殲滅する作戦を立てる。

この作戦が見事に決まり、魔族という種は滅びの一途を辿ることになった。

その後魔族を滅ぼした人間達は、魔族の治めていた領地を占領しその勢力を強めていった。

戦闘能力で群を抜いていた魔族を滅ぼした人間に逆らうことの出来る種族はおらず、その後は人間中心の世界となっていった。

その後も他の種族を巻き込みながら人間同士の戦争等が何度も起き、他の種族も数を減らしていったらしい。

また、魔族との戦争で狂戦士として戦っていた獣人を見ていた他の種族は獣人を野蛮な存在だと認識し、人間側もその力を警戒するようになったことから獣人に対しての差別意識を持つようになったそうだ。


「ルルありがとう。長いこと話して疲れただろ?少し休憩しよう。」

ルルにお礼を言いながら、アウトプットにてショートケーキとココアをルルの目の前に再現する。

見たことのない物を目の当たりにして、興味津々にしっぽをゆらゆらと揺らすルル。

「これは何ですか?」

「これはショートケーキという甘い食べ物とココアっていう飲み物。ルル喋りっぱなしだったし、この後もルルに喋らせるようになるから、休憩と話のお礼を兼ねた物だから気にせず食べてみてくれ。」

一口食べるとルルの顔はなんともだらしないものに変わっていく。その顔を見ながら大地も満足気な顔をする。

「こんなの初めて食べました・・・ココアもなんだか優しくてホッとする味です!!」

あっという間に食べ終わったルルは、物欲しそうな目で大地を見つめる。

「わかったわかった!! いくらでも出してやる。そのかわりこの世界についてしっかり教えてもらうからな。」

「ありがとうございます!!それで私は何について説明すればいいですか?」

「とりあえずこの世界の歴史については知れたから、今どんな国があるかと出来ればその特徴かな。」

「わかりました。モグモグ・・それでは・・・モグモグ・・・説明しますね。」

よほど気にいったのか出されたケーキを食べながら説明を始めるルル。

ルルの話によると現在この世界では大きく分けて四つの勢力に分けられ、ディシント密林を囲むように四方に位置しているらしい。

ちなみにディシント密林は元々魔族の領地だった場所にあり、特に強い魔獣が発生するようになったことで人間がやむなく放棄した結果、長い年月をかけて密林となり、魔獣が独自の生態系をなしているとのこと。

「ディシントの北に位置するトーム連合共和国。南に位置するディランチ連邦。西に位置するユーリス皇国、そして東に位置するガドール帝国。この四つが主な勢力になります。」

「他にも国はあるのか?」

「一応、小人族の国であるドワーフ公国と妖精族の集落がありますが、ドワーフ公国はディランチ連邦の庇護下にあるので実質連邦の一部ですし、妖精族の集落は特殊な魔法で結界を張っているみたいなのでどこにあるのかもわからないです。」

「なるほど。じゃあそれぞれの国の特徴を頼む。」

「はい!まずトーム連合共和国なのですが、これは様々な小国が集まって出来たもので、王様みたいなトップがいないのが特徴です。

それぞれの小国にそれを治める領主がいて、定期的に領主会談を行い話し合いのもとトーム連合共和国という国を動かしているようです。

ディランチ連邦はガドール帝国のやり方についていけず離反した者達で作られた国家です。この国にも王様がいないのですが、離反を先導したリーダーが今は将軍としてトップにたっているそうです。

国を創立してから現在に至るまでガドール帝国とは常に争い続けている国でして。」

「ディランチ連邦の人達は何故、ガドール帝国を離反してまで新しい国家を作ったんだ?」

「それは多分、少し前にガドール帝国の王が掲げた人間至上主義が原因だと思います。

人間こそがこの世界の頂点に立つ存在でそれ以外の種族は人間に隷属せよと急に宣言したそうで。

これまで獣人はともかく小人族とはお互い良い隣人の様な関係だったということもあり、それに反発した人達が反旗を翻してガドール帝国の三分の一の領地を奪い取り、国家を作ったと聞いています。」

「そもそも、何故ガドール帝国国王は良き隣人でもあった小人族を巻き込んでまで人間至上主義を掲げたのだろうな・・・。今考えても仕方ないか。」

「三つ目のユーリス皇国は簡単に言えば宗教を元にした国家です。創生教という宗教の信者により作られた国家で、創造主の声が聞こえる巫女と言われる人がいるそうです。正直この国は閉鎖的で情報があまり入らなくて・・・すみませんがこれ以上の情報はないです。

最後にガドーレ帝国ですが、先ほども話したように人間至上主義を掲げており、四つの国家の中で国土、戦力、技術力等あらゆる分野で頭一つ抜けている国力の最も高い国家です。

魔族との戦争があった時代からある最古の国家でもあり。国王も世襲制で決められているそうです。といった感じですか大丈夫でしたか?」

「二つほど質問いいか?」

「はい!なんでしょうか?」

「それぞれの国家を行き来する方法はあったりするか?あと他の国に四方から囲まれた状態でこの村は大丈夫なのか?」

「一応全ての国に冒険者ギルドというのがありまして、そこで登録を済ませれば行き来は可能になりますよ。

あとこの村はディシント密林の奥地に存在します。そもそもディシント密林に手を出そうとする人間はあまりいませんので、密林の奥にいれば比較的安全です。

最近になり帝国の密偵が時折探索に来ますが、そのほとんどが魔獣によって追い払われてしまいますし、運よく抜けられたとしても途中で力尽きるかガラン達により捕まるかですから。」

「そうか密林内は比較的安全なんだな。助かったよ。おかげで色々知れた。」

話し始めた時には上がっていた太陽が沈みかけていたのを見ながら、大地は申し訳なさそうにお礼を述べた後、解散を促そうとしたのだが、何故かルルは頑なに帰ろうとしない。もしやと思い大地はルルに声をかける。

「晩御飯食べて―――」

「いいんですか!!ぜひ頂きます!!」

やはり、さっきのケーキがよほど美味しかったのだろう。ルルは完全に胃袋を掴まれているようだ。

初めは緊張で表情に固さが見えたルルも一日で図々しくも食事をせがむようになった。

大地はルルが自分に慣れてきてくれることを感じ上機嫌になる。

「何か食べたい物あるか?」

「えーと・・じゃあお肉が食べたいです!!」

心の中で魚じゃないんかい! とツッコミを入れながら、薄切りにしたローストビーフを再現しルルのテーブルに前に置いた。

その日の夜大地のログハウスからは歓喜の雄叫びと懇願の雄叫びが交互に響いていた。

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