創造神で破壊神な俺がケモミミを救う

てん

第5話

「え・・違う世界からって・・」

「どういう事どういう事!!」

「なっ・・・・・・・・」

「大地さすがに冗談が過ぎるぞ!!」

少しの沈黙の後、ゼーレは困惑し、フィアは興味津々に、マヒアは驚愕し、ガランは冗談だと言い張る。

その中でルルだけは納得している表情でうなずく。

「おっお前たちまずは落ち着け。だっ大地さん・・・もし可能であればあなたが違う世界から来たのだという証を見せてくれまいか?疑うつもりはないんじゃが、違う世界から人来たなんて話今まで聞いたこともないからのう。」

レイ自身も混乱しながら、なんとか他の獣人達をなだめながら、大地に異世界人である証拠の提示を求める。

『やっぱり証拠を求められるよな・・・』

大地は自分が異世界から来たことを説明すれば、当然そんな話になるだろうと予想はしていた。

最初は地球にある便利グッズをアウトプットで再現しそれを見せればいいとも考えていたが、人間に追われてこの密林に住んでいる彼らに便利グッズを見せても、人間世界のものだと思われてしまう可能性もある。

魔法という物がこの世界で存在している以上、自分の持っている能力も魔法の類だと思われてしまえば異世界人の証とはならない。

それに最初のガランの様に自分に不信感を持っている獣人もいる。大地は異世界人であることの証明より、まずは敵ではないことの証明をするべきと考え、慎重に話を進める。

「俺が異世界人である証とは、例えばどのように証明したら良いのでしょうか?話を聞く限りですが、みなさんは人間に住処を追われこの密林での生活を余儀なくされているのだと俺は理解しています。もちろん俺が自分の世界にある物を見せることで証と出来るなら良いのですが、人間との関わりがないみなさんにそれが僕の世界の物なのか、それともこの世界の人間達が作った物なのか判断出来るでしょうか?」

「確かに密林での生活も長く、人間との関わりもない。出された物を見てもそれが本当に大地さんの世界の物か判断は難しいじゃろうな。」

「そこで俺が異世界人である証明の代わりといってはなんですが、一つ提案があるのですが良いですか。」

「提案とな?なんじゃ?」

「実は道中ガランから、村の状態が貧しいという話を聞きまして。」

「・・・・そうじゃのう。このディシット密林は魔物も多く、それに木々は生い茂ってはいるがこの密林には食べられる作物も少なくてのう。それに土地も痩せているせいで自分たちで作っている作物も満足に育たない状態なんじゃ。それに食料だけでなく身を守る為の武器や防具、住むところも満足に作れておらん。これも族長である私が至らないからじゃ。」

レイが頭を掻きながら、苦笑いをしながら答える。

周りのゼーレ達も申し訳なさそうにうつむく。

実際に今話をしているこの場所も木で囲いをつくり上から大きな葉と藁をかぶせ蓋をしただけの場所だ。

四方を密林に囲まれた状態ではいつ魔獣が村を襲うかわからない状態では警備を立てているとしても安眠は難しいだろう。

自分の大好きなケモミミ達が不当な理由で住処を追われ、貧しい生活を強いられている現状に少なからず憤りを感じていた大地は、自分たちの置かれている現状を再度突き付けられ、暗い表情をしているレイ達に穏やかに話しかける。

「もし俺がその全てを解決出来たとしたら俺を異世界人だと理解してくれますか?」




「「「「・・・・え?」」」」




「さてまずは食料関係から解決しましょうか、ゼーレさん、作物を作っている場所への案内と食料事情の説明お願いしますか?」

レイ達はいまだ大地の発言を理解できていないのかポカンとした表情をしている。

ゼーレも急に案内と説明を求められ、自己紹介の時とは違いうろたえている様子が見てとれる。

混乱しているレイ達を置き去りにしながら話を進めようとする大地。

「大地!!そんなこと出来るのか!?」

「解決してくださるのですか!!」

「本当に解決できるのか大地殿!!」

「大地君ほんとにほんとに出来るの?」

ゼーレ達幹部は期待に満ちた懇願にも似たような声で大地に問う。

「多分大抵の事は問題なく解決できると思うよ。」

淡々と答える大地に、なんとか落ち着きを取り戻したレイが真剣な顔つきになり、静かな中にも威厳を感じさせる雰囲気をまといながら大地に問う。

「その話は本当か?本当に解決できるというのか? この場から逃げたい為の嘘じゃったらやめてくだされ。大地さんに敵意がないのはもうわかっておる。この村の事を秘密にして下さると約束して頂ければ、密林より外へ出ることへの手助けもさせてもらうつもりじゃ。しかし甘言で村の者達を惑わし、期待させた挙句裏切るようなことになれば話は変わって来ますじゃ。さすがに私も黙ってはいられなくなりますぞ。」

これまでレイ達も村の生活を維持、向上させる為に様々な事をしてきた。

しかし思うように行かず、今ではその日その日を生きていくので必死な状況だ。

そんな中獣人を差別していた人間が獣人を好きだと言い、あまつさえ村の環境問題の解決をしたいと言ってきた。

レイは人間に対してそこまで敵対心というものを持っておらず、数は少ないが何人か人間の友人もいた。

しかし獣人を助けようとする人間は初めてであり、完全に信用しても良いのか悩んでいた。すると大地がそっと口を開き始める。

「急に来て、この世界の人間ではないからそれを証明するために村の問題を解決させてくれと言われても信用できないのはわかります。もし俺が解決出来なかった場合はどのように扱ってもらっても構いません。俺の行動を不信に思うなら見張りをつけてください。」

「一つ聞いても良いか?あなたにとってこの村は何の関わりもない寂れた村じゃ。なぜそんな村の為にそこまでしたいというんじゃ?」

「それはさっきも言ったと思うのですが、俺が獣人を好きだからですよ。」

大地は笑顔で無邪気にケモミミのすばらしさについて語りだす。しかし獣人の耳には残念ながら入っていない。

長年人間による差別を受けていた獣人である彼らは人間の侮蔑を込めた表情しか知らない。そんな彼らに初めて向けられる人間の笑顔。

もはや言葉はいらず、それだけで大地という人間が信用出来ると確信したレイは頭を下げ、声を絞るようにして大地に伝える。

「もし・・もし本当にこの村を救えるのであれば・・お願いですじゃ。この村を助けてくだされ。」

長い間、ディシット密林という過酷な環境の中生きて抜いてきた彼ら、長い密林生活で魔獣に襲われて死んでいった者達も少なくない。

その度に自分達がいかに無力な存在であるかを突き付けられ、もういっそのこと全てを諦めてしまおうかと考えた事もあった。

そんな中彼らに笑顔を向け、さらにこの村の解決してくれると言ってくれる人間が目の前に現れた。彼らの胸中はとても推し量れるものではない。ゼーレ達もレイが頭を下げたのを見て一緒に頭を下げていた。

「大丈夫です。俺に任せてください。」

気負った様子もなく笑顔のまま気持ちの良い返事をする大地に対して、レイは頭を下げたまま何度もありがとうとつぶやいた。

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