VRMMO生活は思ってたよりもおもしろい

夏月太陽

63.龍二くんの初ログイン 3


 クエスト受注場所に戻りモモとみきさんの二人と合流した後、ドラゴンの卵を輸送するクエストを受けるために業者の所へ向かった。

 業者の所に着いて話をした後、前と同じ青年が卵を乗せた荷車を引き始めたので、それを護るように荷車の左右に二人ずつ付いた。

 しばらく歩いていると、盗賊が10人以上出てきた。

 僕が前へ出ようとすると、その前にリュウジくんがサッと前へ出ていった。

「なんだ? ガキ? はっ、ガキが一丁前に護衛かよ! 笑わせる! 野郎共、かかれ!」

 そう言ったリーダーとおぼしき輩が、仲間と共にリュウジくん目掛けて突っ込んできた。

 これはさすがにヤバそうだと思った僕が刀を抜こうと柄(つか)に手を掛けたところでその心配はなくなったので、柄から手を離した。

 なぜなら、リュウジくんは次々に襲いかかってくる身長が何倍もある男達を相手に、一歩も引けを取らずに戦っているからだ。

 様子見でしばらく見ていると、次々と男達が倒されていき、遂に全員倒したところでリュウジくんがこう言った。

「あんしんいたせ、みねうちだ」

 しかも、刀を鞘にカッコよく納めながら言った。

 時代劇か!? それ、強い人がよくやるやつじゃん!

 そんなカッコつけたリュウジくんは、僕のところまで来て満面の笑みでこう言った。

「ねぇ、みたみた? すごいでしょ! ひとりでぜんいんやっつけたよ!」
「うん、凄いね。驚いたよ」

 僕がそう返すと、リュウジくんは更に嬉しそうにした。

 モモとみきさんは、思考が追い付いていないのか、ポカンとした顔で突っ立っていた。

 リュウジくんが倒した盗賊達は、縄で縛って近くの交番的な場所に預けた。

 その後、上機嫌なリュウジくんを先頭に送り先を目指して歩き出した。

 しばらく歩いていると、今度は『ホールドベア』と実際には初めて見るモンスターが出てきた。

 確か、『ジャイアントビー』とか言う蜂のモンスターだったと思う。

 ジャイアントが付くだけあって、僕より大きい。

 攻撃方法は、針を飛ばしたり針を向けて突進してきたりすること。

 さらに、蜂だけあって集団で来る上に針には毒が付いているため、カスッただけで毒状態になるので厄介。

 これはいくら先程の功績があってもリュウジくん一人では無理だろうと思い、シアンとブランをモモに預け、今度こそ刀を抜いてリュウジくんの隣へ出た。

 すると、リュウジくんがこう言った。

「リュウにいちゃんは、ハチさんのあいてね。ぼくはクマさんのあいてする」

 てっきり僕が『ホールドベア』の相手をすることになるのかと思ったら、逆だった。

「なんで、ハチさんの方じゃないの?」
「ハチさんにがてだから」

 とても可愛い理由だ。いやまあ、結構な人が蜂苦手だと思うけど。

 というわけで、可愛い従弟の要望に沿ってハチさんの相手をすることになった。

 リュウジくんには、『ホールドベア』は抱きつかれると締め上げられることを教えておいた。

 いざというときは回復役のモモとブランが居るから、たぶん大丈夫だろう。

 『ジャイアントビー』と対峙すると、いきなり針を飛ばしてきた。

 驚きつつも、刀で弾いたり避けたりしながら近づいていった。

 ただ、飛んでいる位置が高すぎて、たとえゲームの中でジャンプが強化せれていても届くか心配な高さだ。

 どうしよう? 助走すれば届くかな?

 試しに少し下がって走ってジャンプしてみる。

 しかし、もう少しというところで届かなかった。

 しかも、着地までの間に針を向けて次々に突進されてしまった。

 間一髪で避けて着地したまではいいけど、どうしよう、届かなかったんだよな……。

「キュキュー!」
「ん? シアン?」
「キュキュ!」
「いや、なんで預けたのって言われても……」
「キュキュ」
「えっ? シアンが倒してくれるの?」
「キュ!」
「じゃあ頼んだ」

 お願いすると、シアンは『ジャイアントビー』が飛んでいる高度まで飛び上がって広範囲のブレスを吐いて焼き付くした。

 焼き付くした後、ドロップ品として瓶に入った蜂蜜が大量に落ちてきた。

 その蜂蜜の瓶をすべて回収し終え、リュウジくんの方が気になったので見てみると、ブランが『ホールドベア』を説教しているのが目に入った。

 えっ? なに? どういう状況?

「クゥクゥ!」
「グァ……」
「クゥ?」
「グァグァ」
「クゥ」
「グァ」

 今のやり取りを要約すると、ブランは僕達に手を出したことを怒り、それに対して『ホールドベア』はすんませんと謝り、それをブランが許した感じだ。

 やり取りを終えると、『ホールドベア』は去っていった。

 なんという平和的解決。リュウジくんは納得しているのだろうか。

 リュウジくんの表情を見てみると、物凄く不貞腐れてた。

「り、リュウジくん?」
「ぼくのでばんがなかった……。あのクマさんとたたかってみたかったのに……」
「クゥ!? クゥクゥ! クゥ!」

 リュウジくんの言葉にブランは慌ててリュウジくんのところへ駆け寄り、すがり付いて謝った。

 心なしか、ブランの目は涙目に見える。

「リュウジくん、ブランも謝ってるから許してくれないかな?」
「クゥ?」
「うん。つぎあったらたたかう!」

 おぉ! 普通の子ならここで駄々を捏ねるところだけど、リュウジくんは聞き分けが良いようだ。

 僕がリュウジくんくらいの頃は、結構駄々を捏ねてた気がする。

 それはともかく、障害が無くなったので、再び歩き出した。

 そこからは何事もなく送り先に到着することができたんだけど、リュウジくんは不満そうだった。

 なので、この後違うクエストを受けるということで機嫌を治してもらった。

 そして、クエストクリア報酬でドラゴンの卵を受け取った。

 僕はシアンが居るので受け取らず、モモとみきさんは要らないと言って受け取らなかった。

 そして、一旦【始まりの広場】に戻った後ドラゴンの卵を孵化させることになったので、【始まりの広場】へと戻った。

「いやぁ、ドラゴンの卵を孵化させるのを見るなんて初めてやからドキドキやわぁ」
「そうですね。私もです」

 これは、帰り道でモモとみきさんが話していたことなんだけど、いつの間にそんなに仲良く喋るようになったの?

 モモって、みきさんのこと警戒してなかった?

 まぁ、仲が良いに越したことはないんだけどね。

 さて、【始まりの広場】に着いた僕達は、リュウジくんがドラゴンの卵を孵化させるのを見守ることになった。

 その前に、リュウジくんに【テイム】のスキルレベルを上げることを薦め、MAXの10まで上げて……いざ、ドラゴンの卵孵化!

 そして、産まれてきたドラゴンは黒色だった。

 あれかな? プレイヤーの色によってドラゴンの色が変わるのかな?

 シアンは僕が青色だから青で、リュウジくんが孵化させたドラゴンはリュウジくんが黒色だから黒。

 まぁ、あくまで推測だけど、速人に聞けばわかることだ。

 で、テイムはどうなったのかと言うと、あっさり成功した。

 しかもそのドラゴン、もうリュウジくんにベッタリで、まさかの僕に目もくれない程ベッタリだった。

「やったぁ! ぼくのドラゴンだ!」
「名前はどうするの?」
「えっとねぇ、ドラ!」
「ギュアァ!」
「きにいった? よしよし、いいこいいこ」
「ギュアァ」

 鳴き声が、凄い低い……。でも、なんか、迫力があっていいかも。

 ドラと戯れるリュウジくんを見て、なんか和んだ。

 モモとみきさんも同じことを思っているのか、リュウジくんとドラのことを微笑ましそうに見守っていた。


コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品