VRMMO生活は思ってたよりもおもしろい

夏月太陽

60.僕の誕生日会 2


 食事を終えて、ケーキも食べ終えるとプレゼントを貰うことになった。

 一番最初にプレゼントを渡してくれたのは、桃香だった。

「龍さん、誕生日おめでとうございます」
「ありがとう」

 お礼を言いながら小さい箱を受け取って中を見てみると、竜ではなく龍の彫り物がしてある鍔止めだった。

「んー。嬉しいし使いたいけど、傷つけたくないくらい有り難みが強すぎて結局使わなさそう……」
「そんなの気にせずに、バンバン使ってください。割れたらまた注文するので」

 えっと、その言い方だと、物凄く金にものを言わせてる感じなんだけど……。

「ま、まぁ、有り難く使わせてもらうよ」
「はい!」

 次にプレゼントを渡してくれたのは、じいちゃんとばあちゃんの二人で、二人で一つらしく、代表で渡してきたじいちゃんから受け取った。

「誕生日おめでとう」
「おめでとう」
「ありがとう」

 お礼を言って貰ったプレゼントを確認すると、入っていたのはいわゆる大学ノートと呼ばれるノートだった。

 それも、束で3つも。

「これから受験だから、必要だろ?」
「多めに買っておいたから、しばらくは大丈夫よね?」
「そうだね。これくらいあれば、受験まで保つと思う」

 それを笑顔で言ったのが悪かったのか、速人や幸也なんかが、心底有り得ないといった顔でこう言ってきた。

「うわ、ノート貰って嬉しいとか、お前の頭どうなってんの?」
「そうですよ。ノートで喜ぶなんて、どうかしてますよ」

 からかい気味にそう言ってくる二人にムカついた僕がキッと睨み付けると、二人とも押し黙った。

 次にプレゼントを渡してくれたのは、叔父さんと叔母さんだった。

 二人もじいちゃん達と同じように二人で一つだったので、それを受け取った。

「誕生日おめでとう、龍君」
「おめでとう。龍二のお世話よろしくね」

 ん? なんのこと? ……って、あっ、そっか、5歳になったら僕が親代わりにTPOするんだっけ。

「はい、任せてください」
「それより、プレゼント開けてみて」

 叔父さんにそう言われてプレゼントを開けてみると、図書カードだった。

 これまた、随分と生々しいものを……。

「参考書とか買えるといいかなと思って」
「ありがとうございます。大切に使います」

 お礼を言った後、次々にプレゼントを渡されてはそれを受け取った。

 龍二くんの方はというと、叔父さんと叔母さんからはTPOとVR機器をプレゼントされていた。

 まぁ、それがないとプレイできないからね。

 その後も龍二くんにプレゼントを渡していき全員渡し終えると、誕生日会が一段落ついた。

 そこを狙って、龍二くんが話し掛けてきた。

「りゅうにいちゃん、けんどうやろうよ、けんどう!」
「あ、うん、そうだね」

 そう言われたものの、どこでやるかという問題を考えなければならない。

 さてどこでやろうか、と考えていると、輝美が「私に任せて」と言って電話を掛け始めた。

 誰に電話をしているのかはわからなかったけど、許しが出たようなのでそこでやることになった。


 ◆◇◆◇◆


 輝美に連れられて着いたのは、つい先日来たばかりの隆盛くんの家だった。

「ごめんね、隆盛くん。お願い聞いてもらって」
「いえ、この前こっちのお願い聞いてもらったのでおあいこですよ。それに、猿渡さんの従弟さんの実力も見てみたかったので」

 習い始めたばかりなんだけどね。ただ、入門当初であの上達度だったから、今どうなってることやら……。

 挨拶を済ませた後、龍二くんと一緒にこの前着替えた場所へ行き、着替えて面と小手以外の防具を着けて道場へ入った。

 面と小手を着けて竹刀を持ち、龍二くんと対峙する。

 付いていくと言った全員が傍で見守る中、地稽古をするため隆盛くんに審判モドキをしてもらい、合図を出してもらった。

 合図で両方とも掛け声を出し、攻め合いをしながら相手の機を読んだ。

 少しして、僕が仕掛けて龍二くんの竹刀を僕から見て左に強く抑えた。すると、龍二くんはそれにすぐ反応して僕の小手を打ってきた。

 それを見越して抑えていたので、打ってきたのを竹刀で受け、打たれた勢いを使って竹刀を回して即座に面を打った。

 いわゆる、小手返し面と呼ばれるものだ。

 打った面は、龍二くんの面にヒットし、試合で言えば一本になるものだった。

 大人気ないと言われるかもしれないけど、それを言ったら父さんなんて大人気ないなんてもんじゃなかった。

 前にも言ったけど、大人と子どもで物凄い体格差があるにもかかわらず、見えないぐらいのスピードで面やら小手やらを打たれてたから。

 それに比べたら、返し技をするくらいは序の口だ。

 それに、何もできずにボコボコにされるよりはマシな筈だ。

 そんなことを思っていると、今度は龍二くんが仕掛けてきた。

 連続技で、面を打ったり小手を打ったりしてきた。

 それを竹刀で受けたり間合いを取って外させたりして対処していくと、焦れったくなったのか、龍二くんは一旦間合いを取った後、面を打つと見せかけて小手を打ってきた。

 面を打つ勢いからフェイントということはわかっていたので、小手を打たせないために間合いを取って外させた。

 そして、龍二くんがしまったと止まったところへすかさず面を打つと、パシッという音と共に面にヒットし、これで試合で言えば2本目なので試合であれば僕の勝ちになる。

 それを気にした龍二くんは、僕が2本目を取った瞬間に、「あ~あ、まけちゃった……。りゅうにいちゃんつよすぎだよ」と言った。

 しかもその後、こんなことを言った。

「どうじょうだったら、ももかおねえさんのおにいさんいがいならかてるんだけどなぁ」

 な、なんだって!? もうそんなに強くなってるの!?

 じゃあ、ということで、今度は隆盛くんに龍二くんの相手をしてもらうことにした。

 すると、僕の合図と共に龍二くんが動き隆盛くんに面を打たせて出端なで小手を打ってパシッと音を立てて当たった。

 それには、見ていた全員が「おぉ!」と言いながら拍手した。

 なんだよ、僕の時は僕が取る度にブーイングだったくせに。

 桃香は拍手してくれてたけど……。

 それからしばらく攻め合ったり攻防を繰り返した後、今度は隆盛くんが結構なスピードで面を打った。

 すると、龍二くんは抜き胴をタイミングバッチリで決めた。

 これに対しても、見ていた全員が「おぉ!」と言いながら拍手をした。

 本当に強いじゃん。お義兄さんに勝てないにしろ、無心道場の年上の門下生に勝てるってことは相当な強さだ。

 今でここまで強いなら、今の僕と同じ年齢になった頃には全国大会で良い成績が出せるんじゃなかろうか。

 我が従弟ながら侮れないなぁ……。


「VRMMO生活は思ってたよりもおもしろい」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く