VRMMO生活は思ってたよりもおもしろい
08.初めての二人プレイ
ログアウトした僕は、ばあちゃん達にさっきの出来事を話すと、ばあちゃんは「夕飯にお赤飯炊かなきゃ!」と言い、じいちゃんは「鯛買うぞ、鯛!」と言い出した。
僕は、はしゃぎ出した二人を落ち着かせて取り敢えず、昼御飯を四人が食べに来るから一先ずはそっちに集中してということを言い聞かせ、ばあちゃんに昼御飯の支度をしてもらった。
昼御飯が出来るのを待っていると、インターホンが鳴ったので僕が出ると息を切らした四人が玄関の前に居た。
「なんでそんなに息切らしてんの!?」
「速人が……早く行こうって言って……走り出したから……」
「私達……付いていくのが……精一杯だったわ……」
「疲れました……」
「あれ? なんで桃香だけ大荷物?」
「あ、あの、親に報告したら、今日は泊めてもらってきなさいって言われて……大丈夫、ですか?」
「大丈夫だよ。部屋は幾らでも有るし、ばあちゃん達はたぶん大歓迎するだろうから」
「良いなあ、僕も龍さんの家に泊まりたいなあ」
「速人、空気読め。今日はダメだ」
「それより、早く中に行っておばあさんの料理を食べたいわ」
「あ、ごめん、入って入って。桃香は僕が荷物持つから先に行って良いよ」
「あ、ありがとうございます!」
僕がそう言って桃香の荷物を持つと、さっさと入っていった三人に付いて桃香も中に入っていった。
さて、この荷物はどの部屋にしようかな……。やっぱり隣の部屋が良いかな? うん、そうしよう。そう思った僕は自分の部屋の右隣の部屋に桃香の荷物を置いてリビングに向かった。
リビングに行くと、既にお喋りをしながら食べている三人と、まだ食べていない三人に分かれていた。
しかも、食べていない三人つまりばあちゃん・じいちゃん・桃香は、ダイニングで何か話をしていた。
「今日泊めてもらっても大丈夫でしょうか?」
「大丈夫、大丈夫。何日でも泊まっていってほしいくらいだから」
「そうそう。龍の彼女なんだから遠慮はしちゃいかん」
「あ、ありがとうございます……」
そこまで聞いたところで僕が会話に入った。
「荷物僕の部屋の隣の部屋に置いてきたよ」
「と、隣!?」
「あ、嫌だった? じゃあ他の部屋に……」
「違います! 嬉しいんです……!」
「それなら良かった。それより、早く昼御飯食べないと全部あの三人に食べられるよ」
僕がそう言うと、三人は頷いてリビングへ行き席について昼御飯を食べ始めたので、僕も席について昼御飯を食べた。お祝いを兼ねてと言っておきながら、速人は何もせずに食べ終えて「この後、お茶会が有るので失礼します」と言って帰っていってしまった。
楓季と輝美も食べ終わると、楓季は家の用事、輝美はお母さんとお買い物が有ると言って帰っていってしまった。
三人をそれぞれ見送った後、桃香に「二人でTPOやりませんか?」と誘われたので快く承けたは良いけど、「ゲーム機はどうするの?」と聞くと桃香は「大丈夫です。持ってきましたから」と笑顔で言った。
それからばあちゃん達に伝えて、それぞれ自分の部屋に行ってログインした。
◆◇◆◇◆
ログインすると、ログアウトした時の場所、つまり【英雄の台地】の入り口前だった。まあ、元々そういう仕様だったのとハヤトがさっさとログアウトしたから仕方ないけど、せめて街に戻ってからログアウトした方が良かった気がする……。
そして、僕がログインした数秒後にモモがログインしてきたので、一度街に戻ることにした。
「そうだ、戻る前にシアン出してあげないと」
僕がそう言ってからアイテム欄からシアンを出すと、シアンが僕とモモが一緒に居るこを不思議に思ったのか、地面に『もしかしてデート?』と書いた。
ドラゴンがよくそんな言葉知ってるな! と、そう心の中でツッコミを入れ、ふとモモを見るとモモの顔が真っ赤になって固まっていた。
「モモ、モモ? どうしたの?」
「……ハッ!! あ、いえ! なんでもないです!」
「そう? じゃあ、街に戻ろうか」
「はい」
そして街に戻った僕達に、ゲームの中なのに柄の悪い格好に人相をした人が10人現れて僕達を取り囲んだ。
「あの、なんのつもりですか? 僕達が何をしたんですか? 何もしてませんよね? じゃあそういうことなんで退いてください」
「あっ、はい……じゃねえよ!! 待て待て、可愛い子連れてんじゃねえか。俺達に貸してくれよ」
「ちょっと何言ってるか分かんないです。急いでるんで、さようなら」
「いや待て待て、少し貸してくれるだけで良いんだよ。な? 良いだろ?」
「違う子を誘ってください」
「良いだろ別に、すぐ返すからさ」
「いや、あの、そういう問題じゃないんです。とにかく、お引き取りください」
「ああもう、めんどくせえ!! 良いから貸せや!!」
いきなり怒鳴ってきた上に殴りかかってきた10人の内の一人を僕はサラッと避け、モモの手を引いて空いたところから突破した。
すると、10人が叫びながら追いかけてきた。
「待てコラァ!!」
いやいや、これってゲームだよね? 物凄く展開がラノベ感有るんだけど、僕の気のせい……だよね?
はぁ、なんで今日に限ってトラブルに遭遇するのかなぁ……。やっぱり、リア充爆発しろ的なあれが働いてるのかな……? 良いじゃないか別に、こっちは両親亡くしてるんだ。一人女性が増えたって問題ないだろ……。
ああもう面倒だから相手してさっさと終わらせよう。そう思った僕は、PVPに乱戦というものが有ったのを思いだし、立ち止まり追ってきた10人にこう提案した。
「そんなにこの子を貸してほしいなら、僕と乱戦のPVPをして勝って見せてください」
「えっ、ちょっ、リュウさん……!?」
「大丈夫、すぐ終わらせてくるから」
「! はい!」
「良いぜ! さっさとやろうや!」
それからモモとシアンには離れてもらい、乱戦PVPの申し出の画面を出して申請した。すると、受諾されましたという音声が流れカウントダウンが始まった。
僕は剣を抜き10人と対峙する。カウントダウンが終わり乱戦が始まると、10人が一斉に襲い掛かってきた。
◇◆◇◆◇
それは、一瞬の出来事でした。
10人対リュウさんは、私はさすがのリュウさんでも遠距離のマジシャンが居るので無理だろうと思って諦め掛けたその時、それは起きました。
リュウさんの姿が消え、消えたと思ったら10人の後ろ側に居て10人のHPがもう黄色になっていて、PVPが終わってしまいました。
何が起こったんでしょうか。私には全く見えませんでした。10人も何が起きたのか分からないようで喚いています。
「じゃあ僕の勝ちなので、約束通りお引き取りください」
リュウさんがそう言うと、10人は悔しそうにしながら去っていきました。
10人が去っていった後、私はリュウさんに何をしたのか聞くと答えは物凄く単純に返ってきました。
「ああ、一人二回ずつ斬っただけだよ」
「……えっ? じ、じゃあ、消えたように見えたのは……?」
「ゲームの中だと速く動けるのは最初のPVPで分かったから、全速力で動いてみただけだよ。そしたら思いの外速くて驚いたけど、ちゃんと二回ずつ斬るのは腕も速く動くから間に合ったよ」
「そ、そうなんですか。やっぱり、リュウさんは強くて凄いです」
「そうかな……褒めてくれてありがとう」
そう私の頭に手を置きながらリュウさんは照れ臭そうな顔で私にお礼を言いました。そんなリュウさんを見て、改めてこの人を好きになって良かったと思った私でした。
◇◆◇◆◇
10人を諦めさせ、やっとお邪魔虫が居なくなったので、僕はモモ・シアンと共に一旦ギルドホームへ行くことにした。
ギルドホームに行き、何かすることが有ったような気がするので考えていると、肩に居るシアンを見て思い出した。
「ああ! そうだ、シアンの巣を作らないといけないんだった!」
「キュ?」
「そう、お前の巣だよ」
「それなら確か、巣用の木材が有れば造れたと思います」
「そっか、なら買いに行かないとね。じゃあ買いにいってくるから、モモはここで待ってて。さっきみたいな事になるといけないから」
「すみません、足手まといみたいな感じになってしまって……」
「あ、いや、そういう意味で言ったんじゃなくて……」
「大丈夫です。行ってきてください」
「じゃあ、シアンをおいていくから、シアン、モモの話し相手になってくれるか?」
「キュ!」
「それじゃあ、行ってくる」
そう言って僕はギルドホームを出て巣用の木材を買いに行った。
◆◇◆◇◆
それから巣用の木材を売っている木材屋に足を運んだ僕は、店主にドラゴンの巣を造るのに使う木材は有るかを聞くと店主はこう答えた。
「ああ、そこの隅に有るよ。今まで一度も買われたこと無いから少しばかし値段は張るがたくさん有るから好きなだけ買ってくれ」
「あ、どうも」
値段は張るのに好きなだけ買えって言ったぞ、この店主。隅に有る木材は、長さ1メートルで、値段を見ると3000Uだった。
えーっと、所持金は確か……60万Uか。コバルト売った時のお金結局持ったまま過ごしてたけど、まあそれは良いや。えっと、巣を造るのに必要な本数は……10本か。
「じゃあ10本貰えますか?」
「なんだ、必要数しか買ってくれねえのか? ドラゴンのテイムは難しいから、次何時買いに来る人が居るかわかんねえのになあ」
ここぞとばかりに売ろうとしてるなこの店主……。まあ確かに、店主の言う通りでは有るけど、だからって僕に押し付けようとしなくても良いのに……。あっ、そうだ、ソーキさん達の分も買えば良いんだ!
そう思った僕は店主に40本頼んだ。すると、店主は「そう来なくちゃな!」と言って木材を一纏めにして会計をすると、「まいど! また来てくれや!」と言って僕を見送った。
なんか、乗せられて自分で良いように解釈して買った感が尋常じゃないんだけど……まあ良いか。
それからギルドホームに戻った僕は、早速シアンの巣をものの数秒で造った。どんな風に造るのかと思ったら、ただシアンと木材を一緒に置くと、『ドラゴンの巣を造りますか?』という画面が出てきて【YES】を選択すると光が発生し、光がおさまると共に出来上がる。というものだった。凄く、簡単だった……。
しかも、出来上がったのは、明らかに犬小屋的なあれだった。
「まあ、これでログアウトするときアイテム欄に入れなくて済むから良い……のか?」
「キュキュ!」
「気に入ったのか?」
「キュ!!」
シアンが喜んでくれてるし、これで良いか。
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