VRMMO生活は思ってたよりもおもしろい

夏月太陽

06.再び現実へ


 ログアウトした僕がリビングへ向かうと、既に料理の用意が出来ていて、二人が僕が来るのを待っている状態だった。

 夕飯を食べ終えた僕は、明日の学校のためにというか何時も日曜日は早めに寝るので、さっさとお風呂に入って寝る。

 翌日、朝クラスへ行き席に着くと幸也がやって来たので、約束通りTPOを貰うに至った訳を説明した。

「ふーん、そんなことが有ったのか。まあ、ぶっちゃけ龍なら楽勝だったろ? 不良の相手するの」
「まあ避ける分には楽勝と言えるけど、生身の人を殴るのはどうしても気が引けるんだよね」
「それは龍の性格上仕方ない事だな」
「というかゲーム内で聞いたんだけど、幸也ってあのゲームの中で一番強いんだって? 現実では何時も成績順位が最下位のクセに」
「おまっ、そんな言い方すんなよ! 俺はゲームの事になったらガチるだけだ。それに、勉強はそこそこやってるし、赤点取ってないから良いだろ!?」
「いや、赤点取らなきゃ良いとかそういう問題じゃないと思うけど?」
「お前は良いよな。剣道強い上に学年トップの成績が取れる頭を持っててさ。俺に分けてくれよ」
「無理だよ、科学的に。でも、勉強教えることは出来るから、分からないところが有ったら何時でも聞きに来て良いよ」
「その時は素直にあやかる事にするよ」

 そこまでやり取りをしたところでチャイムが鳴り、ホームルームの時間になったのでまた昼休みに話すことになった。

 そして昼休みになり、再び幸也とTPOについての話をした。

「そうそう、昨日ドラゴンの卵輸送のクエストやったよ」
「ああ、あれな、護衛は簡単だけど報酬の卵を孵化させてテイムするのが難しいんだよな」
「僕的にはそんなこと無かったよ?」
「えっ、お前まさかドラゴンテイム出来たのか!?」
「いや、テイムする前になつかれたからまだテイムしてない状態」
「……えっ?」
「いやあ、本当にあのドラゴンは可愛いよ!」
「いや待て待て、テイムする前になつかれたって、お前本当に動物から好かれるよな」
「そうかな、全然だと思うけど」
「いやお前、全く犬に吠えられなくて会った犬全部になつかれるし、あまり人になつかない野良猫ですら、逃げずに近寄ってきて他に人が居るにもかかわらずお前に擦り寄るじゃねえか! それのどこが全然なんだ!?」
「わかった、わかったから落ち着いて。そう言えば、ドラゴンのテイムは今まで一度も成功したことが無いんだよね?」
「そうだけど?」
「テイム出来なかったらドラゴンはどうなる?」
「野生に返るだけだ。と言っても、何回もテイムは実行出来るから野生に返るとは限らない。まあ、一度も成功してないし、お前は例外だけどな」
「ふーん。テイムって、した方が良いのかな?」
「した方が完全に龍の所持するドラゴンになるから、した方が良いと思うぞ?」
「じゃあそうするよ」

 そんなやり取りをしながら弁当を食べ、弁当を食べ終えるとあと10分でチャイムが鳴る時間だったので、次の授業の準備をした。

 それから5時間目・6時間目と終わり、部活も終わり帰ると時刻は5時45分。あと15分で夕飯になるし、明日も学校が有って早く寝ないといけないのでTPOは出来ない。

 土日にしか出来ないのは辛い。だって、あの可愛いドラゴンに会えるのがその二日間だけしか無いんだから、辛くない訳が無い。

 ――それから4日後。

 土曜日になり、7時ぐらいに速人からメールが来て『また9時から皆でTPOやりませんか?』というのが書いてあったので、『良いよ』と返信した。

 それをばあちゃん達に伝えて朝御飯を食べ終えた僕は、9時まで待つのは退屈なのでドラゴンのテイムと愛でながら待つことに決めて速人達より一足先にログインした。


 ◆◇◆◇◆


「さて、ログインしたことだし、ドラゴンをだしてっと」
「キュ! キュキュ!」

 【始まりの広場】の噴水前のベンチでアイテム欄から出すと、ドラゴンは再会を喜んでくれているのか、僕を見るとすぐ僕の肩に乗って顔を擦り寄せてくれた。

「ごめんな、来るの遅くなって」
「キュキュ!」

 僕がそう言いながら撫でると、ドラゴンは嬉しそうに鳴いて目を細めた。うん、超可愛い!! あっ、そうだ、テイムするんだった。

 肩のドラゴンを膝の上に置いて【テイム】を使うと、なんの障害もなく無事にテイム出来た。すると、急に画面が出てきたので見てみると、説明が書かれていた。

《テイムおめでとうございます。
 テイムしたモンスターは、ログアウトするときにアイテム欄に入れなくても良くなります。
 ドラゴンの場合は、巣を作っておけばアイテム欄に入れなくてもログアウト出来ます。
 また、テイムしたモンスターはクエストとイベントでの戦闘に参加させることができ、レベルを上げる事で後の戦闘に役立ちますので、レベル上げすることをおすすめします》

 へぇ、レベルアップさせられるんだ。どれどれ、ドラゴンのステータスは?

―――――――――――――――――――――――

◆モンスター名:サファイアドラゴン Lv1

 HP:9999/9999

 STR(攻撃力):9999

 VIT(防御力):9999

 AGI(回避力):9999

 INT(賢さ):9999

 MND(精神力):9999

◆称号
 ・<龍王ドラゴンキング>

―――――――――――――――――――――――

 ……へっ? レベル1で全部カンスト? 何これバグ? ハヤトが来たら聞いてみよう。

 というかこの子、王様だったの!? 王様ならどこかの山とかに何千年住んでるみたいな設定で居るものじゃないの?

 そんな事を思っていると、ハヤト達がログインしてきて僕を見るなり大声を出した。

「ああ! リュウさん、ドラゴンをテイムしたんですか!? 良いなあ、触っても良いですか?」
「良いと思うよ? 良いよな?」
「キュ!」
「良いらしいよ」
「いやいや、何を普通にコミュニケーション取ってるんですか!! このゲームのドラゴンは人嫌いなドラゴンだけなんですよ? ドラゴンと仲良くならないとテイムは出来ないんです。それをあっさりクリアして、その上コミュニケーション取れるなんて、リュウさんチート使ったんですか!?」
「使い方知らないのにどうやって使うんだよ。それより、この子のステータス見たらこうなってたんだけど」

 そう言いながら僕がハヤトにドラゴンのステータスを見せると、ハヤトが爆発した。

「リュウさん、貴方なんてものをテイムしたんですか!? このドラゴンは極稀に孵化する伝説の龍王ドラゴンキングですよ!?」
「えっ、マジ!? 見せて見せて!!」
「私にも見せなさいよ!」
「わ、私も、見たいです!」
「あっ、モモ、昨日は大丈夫だった? 結構挙動不審だったから心配だったんだけど」
「は、はい!! 大丈夫です!! 変なこと言って、すみませんでした!」
「いや良いよ、気にしなくて。言われたときはちょっと驚いたけど、間違えることはよく有るから僕は気にしてないよ」
「そ、そうですか……」

 あれ? なんで気を落としてるの? 僕何か変なこと言ったっけ? そんなことを考えていると、モモが気を落としたのを見たヒカリがモモの肩を優しく叩いて「まだチャンスはあるわ」と、意味の分からない事を言っていた。

 まあ、分からない事を考えても仕方ないし、この事は頭から抹消しよう。

 それから四人が順にドラゴンを撫でて、撫で終わるとハヤトに「名前は何にするんですか?」と聞かれた。そう言えば、まだ名前付けてなかったな。

「んー、そうだなあ……。じゃあ、青だしシアンにしよう」
「キュ!」
「気に入ったのか?」
「キュキュ!」
「じゃあ、今日からお前の名前はシアンだ。よろしくな、シアン」
「キュ!!」

 気に入ったようで、シアンは嬉しそうな鳴き声を出してくれた。

「なんでリュウさんはドラゴンのテイムが出来たんだろう……?」
「教えてやろうか?」
「あっ、マクロさん。リュウさんの事知ってるんですか?」
「リアルで知り合いだからな。リュウはな、動物に好かれる体質なんだ。ずっと吠えてる犬がリュウが通るときだけスッとおとなしくなったり、主人以外は必ず噛むという犬もリュウには噛まずにおすわりして撫でてもらったり、野良猫もリュウを見ると近寄ってきて、体をリュウに擦り寄せたりするんだ。それだけリュウは動物に好かれる体質なんだ」
「他には、他には無いんですか?」
「俺も他の聞きたい!」
「私も聞きたいわ」
「私も聞きたいです」
「他か……有るぞ」

 急に現れたマクロのせいで、いつの間にか僕の体質の話になってしまい、四人とも急に現れたマクロに驚く事なく次の話を催促している。

 仕方ないので、僕はシアンを愛でながら話が終わるのを待つことにした。

「これは俺と動物園に行った時の話なんだけど、一番凄かったのは百獣の王であるライオンがもちろん檻は有るけど、リュウの前まで来て檻の隙間から器用に手を出してきて、それをリュウが撫でるとライオンが気持ち良さそうな顔をしたことだな」
「それ本当ですか!?」
「本当だよ。な、リュウ」
「……えっ、あっ、ごめんシアン愛でてたから聞いてなかった」
「お前がライオンの手を撫でた時の話だよ」
「……ああ、有ったね、そんなこと」
「だから、リュウがドラゴンをテイムすることが出来たんだ。ドラゴンは動物だからな」
「リュウさんの人柄ってことですか?」
「さあ? 俺にも分からないし、第一本人が全く自覚してないから分かるわけがない。まあ、強いて言うならそれじゃないか?」
「話終わった? 終わったなら、今日何するか決めようよ」
「そう言えばリュウさん、今レベルは?」
「ん? レベルは32まで上げたよ」
「32!? 何したらそんなに上がるんですか!?」
「いやあ、この前ゲーム内での知り合いの人に【英雄の台地】に連れてかれて、そこで『コバルトスパイダー』を一時間掛けて倒したら一気にこのレベルになっちゃったんだよね」
「『コバルトスパイダー』を倒したんですか!?」
「そうだよ。しかも、一回もダメージ喰らわずに倒すことが出来たんだよ」
「ノーダメ!? 今ステータスどうなってるんですか?」

 ハヤトにそう言われたので、僕のステータスを見せると、ハヤトとハヤトの隣で見たマクロが同時に「はあ!?」という声をあげた。

「<回避の貴公子>ってお前、物凄いレアな称号だぞ!? <【英雄の台地】の英雄>はあそこでモンスター倒せば貰えるやつだけど」
「リュウさんやっぱりチート使ってませんか?」
「しつこい。チートの使い方を知らないって言ってるだろ?」
「そうですよね、すみません。あまりにもリュウさんが良いものばかりを持ってるので、つい……」
「まあ、俺の強さには勝てないけどな」
「あっ、そうだ、マクロの強さが見てみたいから、PVPやらない?」
「すみません、調子に乗りました。それだけは勘弁してください」
「えっ、なんで? まだやってもいないのに、なんでそんなことが言えるの?」
「お前の回避力には何やったって避けられるから、やる意味が無いんだよ」
「あっ、そうなんだ。じゃあ、仕方ないね」
「そうだ、今日はリュウさんの付き添いで【英雄の台地】に行ってレベル上げしましょう」
「俺、賛成!」
「私も賛成するわ」
「私も賛成です」
「俺も行っていいか?」
「リュウさんが良いなら良いですよ」
「良いよ、一緒に行っても。僕一人じゃ荷が重い気がするから」
「じゃあリュウチームと俺チームに分かれてレベル上げってのはどうだ?」

 その一言が波乱を呼んだ。まず、マクロより僕に着いていきたい人が全員という、マクロドンマイパターンになり、四人がもめ始めた。

 終わるのを待つか、僕が助け船を出すべきなのか悩んでいると、ヒカリが何やら男二人に耳打ちをすると何故か男の子二人がマクロの方へ、女の子二人が僕の方へ来た。

 そのまま何故こんな組み合わせになったのか、よく分からずに【英雄の台地】へ向かうことになった。


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