腹下したせいで1人異世界転移に遅れてしまったんですが

けん玉マスター

26話 眠り姫

神界  世界樹
その頂上に古代兵器ヒュベリオンが近づく。
「ハーディス…今出してあげるよ…。」
「エト様…準備が整いました。」
「ありがとう。ヒュベリオン…行け。」
エトが合図した瞬間光の波動が少女の眠る繭に打ち込まれる。
するとその繭が破れて行った。
「ようやく…ようやくだ…。」
紫色の髪の少女はゆっくりと目を開けた。
「やあ…気分はどうだい?ハーディス。」
「…ここは…あなたは…誰?」
「…この姿じゃわからないか…」
そう言うとエトの体が輝き始める。
「あ…ああ…あなたは…!」
立っていたのは金髪の長髪の青年だった。
「あ…エーテリア…あなたは…本当にエーテリア…なの?」
「今は別の名でやってたけどね…君が目覚めたのなら僕の名前はエーテリアだ。万物神…エーテリア。君が目覚めるのをどれだけ待っていたか…。」
「ここ…は?」
「神界にある世界樹の頂上だよ。」
「私は…あの時…封印されて…」
「50年も待たせて悪かったね。ようやく君を…救い出すことが出来た…。」
「あ…いや…50年…50年も…私は眠ってたの?」
「そうなるね。」
「いやあぁ!!」
「ハーディス!」
「こんなの…やだ…私は…」
ハーディスの周りに邪悪なオーラが渦巻く。
そのオーラは世界樹を一瞬で枯れ木に変えた。
「ハーディス…。」
「!」
エーテリアはハーディスを抱きしめる。
「大丈夫…。僕がついてる。」
「エーテリア…。」
「今度はもう君を離さない。」
「エ、エト様…腕が…」
配下の神が心配そうに伺う。
エーテリアの腕は邪悪なオーラにより真っ黒に染まっていた。
「これくらいどうってことも無い。ハーディス…終わらせよう。この世界を…僕らの復讐をやり遂げよう。この腐った世界を…再構築するんだ…。」
「エーテリア…」



…邪神ハーディス…復活。



魔神領
「…」
「状況は芳しくないね…。」
各国の代表は会議室に集まっていた。
「ハーディスが…蘇ったわ。創造神…エトくんも私たちの敵だった。」
「…私たちに…何が出来るの…?」
「由希…。」
「私たちが諦めたらこの世界は滅びるだけよ。」
ベルが現実を淡々と告げた。
「藤山は?」
「…」
サラは静かに目を閉じ首を振った。
「そうか…。」


「ごめんな…ごめんな…」
呪文のようにブツブツと呟く優。
その目にもはや光などなかった。
コンコン…
「藤山…入るぞ。」
「…」
「ミーシェさんの容態はどうだ?」
「はは…聞かなくてもわかるだろ…。」
「…」
「こんなの…死んでるようなもんだよな…。」
「藤山…。」
「…もう…いいよ…。」
「!」
「涙なんて…枯れ果てて一滴だって出てきやしない…。全部俺が悪いんだ…俺がミーシェを突き放さずにいれば…俺がもっと早くシバを倒していれば…俺がもっと強ければ…。」
「…」
「だけど今更言ったって後の祭りだ…。ければじゃダメなんだよ…!」
「…ハーディスが復活した。」
「らしいな。」
「創造神エトも僕らの敵だ。」
「そうらしいな。」
「!…分かってるのか?この世界は滅びる。元の世界にも帰れないんだぞ?」
「…で?」
「!…藤山…。…君…」
「はははっ!だってそうだろ?!ミーシェのいない世界になんてなんの意味もねえんだよ!!今更この世界を守るためとか言って勝てる見込みもない戦いをしてどうなるってんだよ!!…そうだ…こんな世界…壊れればいい。元の世界にも戻れなくていい…。戦いに勝ったところで…ミーシェが目を覚ますわけじゃない。…生きてたって…なんの意味もない…。」
「っ…藤山…!」
「なんだよ?哀れんでるのか?元々俺とお前は敵同士だったはずだ。…笑えよ…。目の前にいるのは江ノ島やクラスメイトの仇だぞ?あいつらを殺せたのはミーシェの手助けもある。そのミーシェがもう目を覚まさないんだ。お前らにとっては喜ばしいことだろ?ざまあみろって笑えよ。」
「笑えるわけ…ないだろ?」
「…」
「君は…僕らの仲間だ。」
「…どこまで馬鹿なんだよ…。」
優は椅子に座りミーシェの手を握る。
「ユウ様。」
そこにバトラーが入ってきた。
「今後のことについてお話が…」
「いい。姉さんたちの好きにやってくれ。俺はもういい。ミーシェがいない世界には…なんの意味もない。」
「ユウ様…気持ちは分かります。ですが…」
「…なんだよ?これ以上どうしろってんだよ?生きる意味もない世界のために命掛けろってか?」
「それは…」
「気持ちは分かるだと?お前にわかるわけないだろ?姉さんや姉貴だって…俺の気持ちなんて…わからない…。」
「!…なんだと?」
バトラーが尋ねた。
バトラーは優にゆっくり近づく。
「なんだよ?」
「ふざけるな…!」
バキッ!!
ガターンッ!!
「っ…!」
優はバトラーに殴り飛ばされ椅子から転げ落ちる。
「っ…てえな…あぁ?!」
「…あなたは…」
「!」
バトラーは涙を浮かべ訴える。
「あなたにだって…分からないでしょう…!?…妹がこんな状態の中…嘆きたい気持ちを抑えながら…代表として脅威に立ち向かおうとしているサラ様…ベル様の気持ちを…!」
「っ…」
「あのお二人が何も感じていないとお思いですか…?掛け替えのない妹を…守れなかった悔しさ!やるせなさ!あなた以上に感じておられます!それなのにあなたはいつまでもいつまでもグジグジと…!」
「…るせえ…」
「サラ様は前を向いています…。あなたは…」
「うるせえんだよ!!そんなこと分かってんだよ!!このままじゃ行けないってことぐらい!!」
「ユウ…様…」
「だけど…なぁ…っ…」
優の光を失った目から枯れ切ったはずの涙が溢れる。
「ミーシェがいないと…ダメなんだよ…!俺は…!」
「ユウ様…。」



「…くそ…!」





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コメント

  • イルネス

    悲しくてこっちまで泣きそう…

    3
  • LLENN_p

    泣ける(´;ω;`)

    2
  • かつあん

    これは泣く...うわぁぁん

    3
  • らう

    ゆうくんファイト!
    (最近これしか言ってない気がする

    3
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