腹下したせいで1人異世界転移に遅れてしまったんですが

けん玉マスター

10話 取り引きと仲違い

エトが去った後の会議は特になにか意見が出るわけでもなく、行き詰まっていた。
「本当にいいんじゃろうな?こやつらを信じて。」
クレイサンダーが尋ねる。
「しつこいぞジジイ。不本意だが協力してやるって言ってんだ。ぐちぐち言うならお前から殺すぞ?」
「…ガキが…。不敬だぞ…。」
「落ち着け…クレイサンダー、藤山。」
陸がそんなふたりを制止する。
「創造神に言われた通り…この戦いの指揮は僕に取らせてもらう。」
「小宮…ちっ…わーったよ。」
「ふん!」
「まずは僕から頼みがある。」
陸は優以外の各国の代表に向き直る。
「藤山を…信じて欲しい。」
「!…陸…。」
「ふん!…貴様…いつからこの男を信じるようになったんじゃ?友の仇なのだろう?」
「それは今回のことには関係ない。」
「どうだか…。」
「頼む。」
「ちょ…小宮…」
陸は頭を下げる。
そんな陸に対して優はどうしたらいいか分からないように頭を掻き、席に着いた。
「リク…何故そこまでする?」
ベリアは陸に尋ねた。
「藤山がいないと僕達は勝てない。それに…今の藤山は…信用に値する。」
「何故そう言いきれるのだ?」
ロキア帝国皇帝、バリオスが尋ねる。
「それは…」
「はぁ…分かったよ…。」
優はその場に立ち上がる。
「信じてくれとは言わない…。ただ敵対しないことは約束する。だからと言って俺はこれまでやってきたことに対して謝罪するつもりもないし、後悔も懺悔もない。信じなくてもいいが俺はお前達を信じる。お前らには何もしない。」
「そんな口約束…誰が信じるというのだ…。」
「分かってる。だからこの戦いの間…ミーシェをジジイ…あんたの国で捕虜として預ける。」
「!、ユウ…本気?」
サラが尋ねた。
「ああ…ミーシェにはちゃんと説明するし説得するよ。怒られそうだけどな…。でもこうでもしないと信じないだろ?」
「ほぅ…それは大きく出たのぉ…。」
「だが分かってるだろうな?俺が裏切った時はミーシェをどうしようと構わない。だが俺が何もしていないのにミーシェに手を出したら…」
「出したら?」
「魔神領以外の国を敵とみなし…滅ぼす。」



「そんなこと出来るわけ…!」
「言っておくが本気だ。」

「…いいじゃろう。その条件…飲もう。」

! 

クレイサンダーが答えた。
「クレイサンダー…正気か?」
「ああ。我々タイアリア帝国は藤山優を…信じる。」
「そうか…ありがとう。それからこれはお願いなんだが…ミーシェは寂しがり屋なんだ。一緒にこいつ…」
優はアイテムボックスからマシュマロを取り出す。
「わん!」
「こいつと一緒にさせてやってくれ。鑑定してもらえばわかると思うがこいつは戦う力なんてない…あ、でもルシファーの大罪魔法覚えてるか…でもまあ大丈夫だから一緒にさせてやってくれ。」
「…いいじゃろう。」
「それからミーシェは大食いだからな?飯だけはしっかり取らせてやってくれ。なんなら料理も得意だから雑用として使ってもらって構わない。」
「ふ…いいじゃろう。魔神の妹ミーシェは我が国で預かる。もちろん約束は守る。他の代表も…異論はないな?」

「ないようなら俺はこれで失礼させてもらう。ミーシェに色々説明しなきゃいけないからな。」
「待て…藤山優。少し話がある。」
そんな優をクレイサンダーが引き止める。
「…分かった。」


解散した部屋に残ったのはクレイサンダーとクレイサンダーに控える竜人と優のみとなった。 
「それで?話はなんだ?」
「藤山優…まずは貴様に謝る。」
「なんで?」
「儂は貴様のことを誤解しておった。」
「誤解?」
「貴様のことはただの裏切りの勇者としか思っておらんかった。じゃが、先程の貴様の目を見て分かったんじゃ…貴様の目にはしっかりとした決意とこれまでの苦労や悲しみを背負って来た強さがあった。」
「…魔眼持ちか…。」
「ああ、儂は目で感情を悟ることが出来る。もちろん貴様がやってきたことは許されることではないじゃろう。だが儂は貴様を気に入った。此度の戦い…期待しておるぞ?」
「そうかよ。…ミーシェのこと…よろしく頼む…。」
「ああ。」


魔神領
「ユウ?おかえりなさい。ちょっと話が読めないんだけど…どういうこと?私…約束したよね?ユウを守るって。」
「…ああ。」
「っ…なら捕虜ってどういうことよ…!」
「ごめんな…ミーシェ。そういう約束なんだ…。」
「そんなの…!私は…私はユウと一緒に戦う…!」
「それは出来ない。ミーシェ…お前は捕虜としてタイアリアで待っててくれ。」
「やだよ…。私は…私はユウと…」
「分かってくれ…ミーシェ。」
優はミーシェの方に手を置く。
「俺はお前を傷つけたくない。タイアリアの国王は信頼出来る。」
「嫌だ…!私はユウと戦う…!」
「っ…分かったよミーシェ。」
「ユウ…それなら…!」
「…ミーシェ。お前がいると俺はお前を守りながら戦わなくちゃいけない。」
「…え?」
「はっきり言って


…邪魔…なんだよ…。」

「!…ユ…ウ…?…何…言って…」
「戦いに支障が出る。だからお前はタイアリアで待ってろ。」
「…嘘…でしょ?」
「…」
「ねえ…なんとか言ってよ…ユウ…?」
「…ごめんな…。」
「っ…!」
ミーシェは自室へと走って行ってしまった。


「っ…はぁ…やっぱ…きついな…。」
優は壁に寄りかかり、力なく座り込んだ。
「…ユウ…あなた…そこまでして信じてもらいたかった訳?」
サラが優に尋ねた。
「姉貴…ごめん。ミーシェ…泣かせちまったよな…。…ミーシェには傷ついて欲しくない…本心だ。」
「それでもやり方があるでしょ…?」
「…ミーシェ…」
優は顔を伏せる。
「詳しいことは…姉貴から説明しといてくんねえか?」
「…分かったわ。本当に…馬鹿ね…あなたは。」
「はは…今ならその言葉…すげえ刺さるわ…。」


「っ…うっ…」
ミーシェは自室のベッドで枕に顔を伏せる。
「…ユウ…なんで…!」
(…邪魔なんだよ…)
優の言葉が胸に詰まる。
「っ…う…あ…」
胸が苦しい。
「うう…ユウ…ユウ…」


ミーシェの泣き声を扉越しに聞く優。
「っ…」
優はいても立っても居られなくなりドアノブを回そうとする。
「…あなたが決めたことでしょ?」
「!」
それを止めるベル。
「姉さん…。」
「あなたには色々言いたいことがあるけどまず最初に…」

パンッ! 

「っ…痛てぇ…。」
ベルは優の頬を叩いた。
「当たり前でしょ?本気で叩いたんだから…。」
「姉さん…」
「ミーシェを…泣かせないでって言ったでしょ?」
「…ごめん…」
「…それでも…あなたの選択は間違ってないと思うわ。」
「…」
「…全て終わったら…ちゃんと話すのよ?」
「ああ…分かってる。」

次の日。
魔神領にタイアリアの使者がミーシェを迎えに現れた。
ミーシェは優の方を一瞥するが優は目を逸らす。

「…ごめんな…ミーシェ…。」




作者です。
ちょっと今後の更新についてなんですけど…

…クレイジークラスルーム難しすぎて無理ぃ!

はい…というわけでもう少し時間ください。今週中には最新話出すんで…物語のペース考えてたらこんがらがっちゃって…。そのためこれからはこの「腹下したせいで1人異世界転移に遅れてしまったんですが」を1日1話更新にして、「美少女転校生と始める学園生活」を2日に1話更新で、「クレイジークラスルーム」を週1更新にしたいと思います。
つまり毎日更新です。
でも…24時を過ぎちゃうかもしれないっす。それはセーフにしてください!おねしゃす!
特別な事情がない限り頑張りますのでお願いします。

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コメント

  • にせまんじゅう

    おい優!ミーシェが人間不信になったらどう責任取るんだ?

    1
  • ノベルバユーザー240181

    ヒロインのビンタって俺は嫌い

    2
  • かつあん

    クレイジークラスルーム(クレクラって呼ぼうかな)楽しみに待ってます!
    あーあ、ミーシェ泣かせちゃったー。

    3
  • ノベルバユーザー239382

    無理せずに

    2
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