腹下したせいで1人異世界転移に遅れてしまったんですが

けん玉マスター

14話 ユウ&ミーシェside 赤子の首をひねるよう

アギリシ王国の闘技祭。
優は2回戦目に備えて控え室で待機していた。
早く終わんねぇかな…ミーシェと遊びたい…。
「ユウ選手出番です。」
「あ、はい…。」
ユウは案内の係に連れられフィールドへと足を踏み入れた。
「続いての試合です!先程圧倒的な強さをみせ2回戦目に進出した、グライン選手!対するは見かけによらず強い、ユウ選手だぁ!」
その紹介の仕方は腹立つな…。
「始めぇ!」
バキッ…
「…」
その場にはグラインが伏していた。
「え?えっと…しょ、勝者、ユウ選手!!」
少しの沈黙の後、観客席は歓声に包まれた。
「なんだ、今の動きはぁ?早すぎる!!優勝候補とまで言われたグライン選手を沈めてユウ選手が3回戦に出場だぁ!!」
「ふう…。」
めんどくせえ…。早く終わんねぇかな…。



「さーて!いよいよ決勝戦です!!これまでのおさらいをしましょう!決勝戦で衝突するのは前回の優勝者、虎殺しのダブー選手!対するは今大会のダークホース、初出場のユウ選手だぁ!!」
再び歓声に包まれた。
「ダブー選手は期待通り圧勝してきましたが、ユウ選手もなんと一試合目を除いて全て5秒以内に倒しています。」
めんどくせえな…。早くしてくれよ…。
「よお?てめぇが何やら騒がれてるユウか?」
「ああ…。」
「ふん…調子に乗るなよ?」
「ああ…。」
「今リタイアすれば許してやるぜ?」
「ああ…。」
「聞いてんのか?」
「ああ…。」
「てめぇ!殺されてぇのか?!」
「ああ…。」
「てめっ…殺す!」
痺れを切らしたダブーが殴りかかってきた。
「ちょっと!開始の合図はまだですよ?!」
審判が止めた。
「ちっ…とっととしてくれ。ぶっ殺す…。」
「で、では気を取り直して行きましょう!ダブー選手対ユウ選手の対決…始めぇ!」
「へっ…最後の警告だ!今謝れば半殺しで許してやる!!」
「ああ…。」
「てめぇ!!」
ダブーは思いきり拳を振り下ろしてきた。
単調な…赤子を殴るような威圧に押されなければ誰でもかわせるような単純なものだ。
バキッ…
優の頬に拳がぶつかった。
「へ?よ、避けねぇだと?!」
「…んあ?…あ、やべ…寝てたわ。」

………

「ええええええ!!??」
実況が叫んだ。それに合わせて観客も叫んだ。

「悪ぃな、寝てた。気を取り直してかかってきてくれ。」
ダブーはプルプルと震えている。
「ん?どうした?」
「調子に乗りやがって…!」
「だからごめんって。」
「死にやがれぇ!!」
再び思いきり殴りかかってきた。
パシ!
拳を手のひらでうち受け流した。
その勢いのままダブーはその場でコケた。
「大丈夫か?」
「てっ…てめぇ!!」
ダブーは立ち上がり突進してくる。
ひらり…
「くそがぁ!!」
蹴りを繰り出してきた。
スッ…
避けたことによりダブーはその場に転がる。
会場は笑いで包まれた。
「クソが!ぜってえ殺す!!」
気迫十分で突っ込んできたが、相手はユウである。
ドゴッ!
蹴りで押し返し壁に吹き飛ばした。
「がっ…はぁ!!」
優は一瞬で距離を詰めた。
「遊びはここまでだな。」
「なん…だと!」
「ほっ!」
優は手の甲でダブーの頬を打ち、吹き飛ばす。
「ぐあ…」
「でも少しミーシェを楽しませてやるか…。」
ダブーの首を掴み持ち上げる。
「ほら、立てよ。もっと熱い試合にしようぜ?」
「で…めえ…!」
そのまま壁に叩きつける。
「ぐあぁ!!」
「せいっ!」
飛び蹴りをし、つま先がダブーの溝に突き刺さる。
「かっ…!」
さらに上に蹴りあげる。
「ミーシェに会えなくてイライラしてんだこっちは。少しサンドバッグになってもらうぞ?ストレス発散だ。」
「やめ…!」


「そ、そこまで!!ダブー選手は既に気絶しています!!」
試合が終わったのはそれから5分後だった。
血だらけで、関節があらぬ方向に曲がったダブーが優の前に転がっていた。
「ゆ、優勝は…ユウ選手だぁ!!」
少しの間が空いたがすぐに歓声が会場を埋めつくした。
「優勝したユウ選手には塩一年分が贈呈されます!!」
いらねえよ。
「闘技祭はこれにて終わりです!では皆さん、また来年!!」


「ユウ!」
「お、ミーシェ。」
優はミーシェが飛び込んできたのを受け止める。
「おつかれー!優勝おめでとう!」
「当たり前だろ?あんなの運動にもならなかったさ。」
「でも決勝戦は気合い十分だったね?」
「ああ…。ストレス発散だ。」
「へえ…。」
「あ、これ塩。」
「あ、うん。ありがとう。」
「…多いな。」
「そうだね。」
「アイテムボックスぶち込んどくか…。」
「よろしく。」
「この後どうする?出店回るか?…てかなんでこんなに見られてんの?俺達。」
「そりゃあユウ…。優勝したからでしょ?」
それもそうだ。
ひと睨みすると皆視線を外した。
「さて…腹減ったよ。」
「何か食べに行く?」
「…ミーシェの手料理がいいな。」
「そ、そう?じゃあ宿に戻ろう?」
「ああ。」


その頃。
アギリシ王国、スコット商会本店。
「オーナー。」
「おや?どうかしましたか?」
「はい、勇者の方が見えております。」
「勇者が?分かりました。通してください。」

「それで?何の用ですかな?」
スコットの目の前の席には勇者、天城光祐が座っていた。
「…あなたがダークエルフを匿っているとの情報が入っています。」
「?…確かに私はダークエルフのカナと行商の旅をしています。それが何か問題ですか?」
「魔神の妹…ミーシェもダークエルフです。」
「そうらしいですね。ですがカナは関係ありませんよ?」
「…あなたが連れているダークエルフを僕達に差し出してください。」
「!…何故ですか?」
「ダークエルフは危険です。一緒にいれば危ない。処刑します。」
「お断りします。」
「!」
「危険など感じませんし。何よりカナと旅するのは私の楽しみなのですよ。」
「…話にならないな。あなたも魔神の味方か?」
「!…何を…。」
「おい、ダークエルフを探し出せ。」
すると数人の兵士が入ってきた。
「!…誰ですか?!あなた方は?!」
「黙れ!!」
天城はスコットを殴り倒す。
「がっ…。」
「ダメぇ!スコットおじさんを虐めないで!!」
「カナ?!逃げなさい!」
「ダメぇ…!」
「探す手間が省けた。捕らえろ。」
「きゃ…!離して!」
「カナぁ!」
「おじさん!おじさん!」
「カナをかえしてください!」
「くどいぞ!」
兵士がスコットを殴り飛ばした。スコットはそのまま動かなくなった。
「そんな…おじさん!!」
「ふん…ダークエルフよ。今からお前を処刑する。」
「ひっ…どうして?」
「お前がダークエルフだからだ…。」
そう言って天城はカナを縛る。
「んー!んー!」
カナは口も閉ざされる。
(おじさん!おじさん!うう…私のせいで…。私が…生まれてきたから?ダークエルフは…生きてちゃダメなの?…そんなの…。ダメ…。そうだ!ミーシェお姉ちゃん…。)
「んー!」
「黙れ!」
カナは後頭部を殴られ意識を奪われる。
(…そん…な。おじさん…ミーシェお姉ちゃん…。…ユウ…お兄ちゃん…。)
カナは気を失った。
「いくぞ。」

―――――――――――――――――――――――――――――――
次回は勇者sideです。
投稿遅くてすいません…。
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コメント

  • ノベルバユーザー515118

    やっちまったなぁ天城さんヨォ

    0
  • ノベルバユーザー30469

    次の回で退場かな?

    1
  • べべ

    天城のいたぶり回まだー?

    1
  • ユーノ

    最後の最後で胸くそ回かよぉぉぉぉぉ!
    天城さっさとくたばれやぁ!

    2
  • 勝長

    は?あまぎ死ねよ

    1
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