DREAM RIDE

遥都

6:偽りの理想

その日の夜、俺は今の状況を整理した。

どうやら俺がタイムリープした世界では中学一年生の夏休み中らしい。

もちろん野球もやっている。

しかし変わった点もあり、まずは家族構成だ。

俺の父は営業の仕事をしており、出張ばかりであまり家にいなかったのだが、この世界では自営業をやっている。

それも驚くことにバッティングセンターという今までの仕事とはかけ離れた事になっている。


次に妹の瑠夏ルカの年齢も変わっていた。
元々5歳年下だったのだがこの世界では1つしか歳が離れていない。

それでもこの世界では小学6年生だし、話しづらくなるとは思うが…。


晴矢ハルヤ「ほかは特に変わってはなさそうだな。身長も別に変化ないし。」




晴矢ハルヤ「身長?」



俺は元々身長が182センチあったが中1のこの時期は165も無かったはず。

それも中学3年までは170程度で高校生になってから成長期が来たようなものだ。


晴矢ハルヤ「嘘だろ?」

俺は戸惑いこそあったがそれ以上に、この世界でならやり直せるかもしれないという自信が芽生えていた。


瑠夏ルカ「お兄ちゃん。今から打ちに行くけど一緒に行く?」


晴矢ハルヤ「いやお前は駄目だろ。それに俺金ないし。」


瑠夏ルカ「いつも行ってるでしょ!それにお父さんの所なのにお金いらないでしょ。」

パチンコと勘違いしていた俺はバッティングセンターの話しをしてる事に気付くまで少し時間がかかった。

晴矢ハルヤ「それもそうか!じゃあ行きますか…。」

ちなみに妹はリーブする前までスポーツとは無縁の吹奏楽をやっていたがこの世界では野球をやっているらしい。

兄弟が同じスポーツをしてるなんて、なんとも都合の良い世界だ。


それから二人で家を後にした俺は妹からこの世界のことを色々聞いていた。


晴矢ハルヤ「なんで親父ってバッティングセンターなんかやってるんだっけ。」


瑠夏ルカ「確か、おじいちゃんがやってたお店を引き継いだって言ってた気がする。あたし達が生まれる前だけど。」

確かリープする前の世界でも親父の実家がバッティングセンターをやってたと聞いたことがある。

赤字ばかりで店を閉めたと聞いていたが…。

瑠夏ルカ「ていうかお兄ちゃん昨日までパパって呼んでたのになんで呼び方変えたの?そろそろ恥ずかしくなった?」

妹に笑いながら馬鹿にされていた俺だが、勿論覚えがない反面久々の妹との会話に何故だか笑顔になっていた。

話しをしてるうちに店に着いた俺達はカウンターに居た親父に引き止められた。


父「二人とも打ちにきたのか?」


晴矢ハルヤ「おう親父。メダルちょうだい。」


父「無事に会えて本当に良かった…。」


晴矢「なんか言ったか?」



首を横に振った親父はそのまま俺たちにメダルを渡しカウンターのような場所で休憩している客の接客に戻った。
目が赤かったのが気になるが。

そして久々のバッティングセンターで球速をどれにするか悩んでいたところ。

???「晴矢。」

聞き覚えのある声だった。

そして俺はそのまま、その声の聞こえる方へと向かっていた。


タイムリープをして掴んだ夢のような世界。
やり直すチャンスを得ることが出来た俺の物語はここから始まる。



この日まではそう思っていた。
誰かが犠牲になっていることも知らず。













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