ひつじ、ひつじ。

ノベルバユーザー206812

ひつじ、うまれる。

「どうするの?産むの?」

「産むよ、おろしたらバレるし」

たぶんきっとそんなやり取りがあったんだろうなと思う。

雨が降りしきる日、私は産まれた。

私を見る母の目はぬるく、助産師の祝福の言葉は母の耳にはうっすらとしか届いてないようだった。

母は長いお産に疲れ果てていたのではない。
初めてのお産に戸惑っていたのではない。
私にはすでに兄と姉がいるのだから。

私に触れる手には心がこもらずで、話しかけることはない。

「あぁ、私は望まれない子だったのか」とわかったのは物心ついた頃だったと思う。

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