ラブコメで幼馴染が報われない法則について

和銅修一

第44話 台風が来る前は逆に静かな法則について

 生徒会室の扉を開けるとそこには葵の姿はなく、代わりに新堂が我が物顔で立っていた。
「何でお前がいるんだよ」
「そんなに嫌そうな顔をしなくても良いじゃない。私はただこの前調査した七不思議をまとめた新聞を出そうと思ったからその許可をもらいに来ただけよ」
 新聞のネタとして学園の七不思議は特集を組めるくらい良いものらしく、わざわざここまで来たのだが生徒会室には誰もいなくて困っていたらしい。
「そうか。俺たちは葵に用があったんだが……いないなら帰ったら聞くか」
「あら、さりげなく幼馴染アピールだなんて妬けるわね。後輩にも慕われているみたいだし……」
「別にそんなのじゃないって。それじゃあ、俺たちは行くから」
「そう? なら私がここの鍵を持っていることは内緒にしておきなさいね。誰かに喋ったら容赦しないから」
「知らない振りをしてたのにそっちから話すなよ」
 普段、生徒会室は鍵がかかっている。ここには色々と置いてあるので良からぬ事を考える輩に侵入されないように鍵は厳重に保管されているはずだが……。
 何処からそれを手にしたかは気になるが聞いてしまったら俺にまで被害が及びそうだったから無視していたのにこの先輩はーー。
「それが私のやり方よ。まあ、私と貴方の関係だからどうしてもと言うなら貸してあげても良いけど」
「そんな時は来ないだろうけど気持ちだけ受け取っておくよ」
 こうして勝手に共犯者にされてしまった蓮、そしてそのやり取りをただ茫然と見ていたクリムは生徒会室を後にした。



***



「蓮さん、お帰りなさい。クリムさんとご一緒だったんですね」
「ああ、それにしても最近は忙しいみたいだが何をやってるんだ?」
「協力要請があったのでそちらに。蓮さんの計画も大事ですが、私も天使としての役割を果たさないていけませんので」
 ミカエルではなく、美嘉が言っていた。堕天使の掃討をしていると。その言い方からして相当数いるみたいだが。
「計画のことなら気にするな。今のところ他のことで手一杯だからさ」
「そうですか。それでクリムさんと一緒なのですね。私は動けませんが、クロムさんがいるのなら安心です」
「ど、どうしたのよ。急に煽てても何も出さないわよ」
「いいえ。ただ事実を言ったまでです。クリムさんは優秀な成績を叩き出していましたし、天使としてこの発言はどうかと思いますが他の方よりも信頼が置けますから」
「そ、そう……。まあこの男のことは私に任せなさい」
 動揺しつつも喜びを隠しきれていないクリム。
「なあ、葵は帰って来てるか?」
「はい。一緒に帰宅しましたし、部屋に電気が点いているのを確認しているのでまだ家にいるかと」
 どうしてそこまで見ているんだと疑問に思った方々に説明すると俺がそうするように命令していたからだ。
 俺も四六時中、二人と一緒にいられるわけでもないからリリエルに俺がいない間に何かあったら報告するように言い聞かせている。
「ねえ、もしかして今日聞く気? こんな時間だから変に思われるんじゃない」
「それもそうか。じゃあ、明日さりげなく聞いてみるか」
 あれ以降、ちゃんと喋っていないから本当に元に戻っているか確認出来ていないからすぐにでもこの目で確認したい。
 ここは大人しく、クリムに従って今日はもう寝ることにした。

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