海の声

漆湯講義

160.見え方

家に戻ると何故か海美は大の字に手足を広げてベッドの上に横に…いや違う。

「何でお前勝手に入ってんだよ?」

『あぁ…おかえり。海美ねぇ寂しいだろーと思って来たんだよ。そしたら眠くなっちゃった。』

俺は無言のまま強風へと変えられたエアコンの設定を弱風へと戻し、部屋の中を見渡した。そして突然、美雨の下の布団を捲ったり、ベッドの下を覗き込む俺に美雨が『何やってんの…??』と目を細めた。

「海美が居ないんだよ!!美雨なんか知ってる??」

美雨は眠そうな目のまま"うーん"と考える素ぶりを見せるも、あまり危機感など感じていないようだ。

「おいっ、海美が居ないんだぞ?!もっと真剣に…」
すると美雨が身体を起こし、自らの足を見つめて、ボソッと言葉を零すように小さく言った。

『セイジはいつも海美ねぇの事ばっか。知らないよ、ボクはいつもと変わらないんだもん…海美ねぇ見えないんだよ??分かるわけないよ。』

その紛れも無い事実に返す言葉が無く、俺は別の言葉を探した。

「でも…もしこのまま海美が帰ってこなかったらどーすんだよ!!」

『ボク達に何か出来るの??ううん、ボク達は何もできないんだよ。こんな現実的じゃない出来事なんてボク達がどうこう出来るワケないもん。ただ、いい結果になるように願うだけ、そうでしょ??』

「だけどさぁ…」

『セイジのキモチも分かるよ。だけど…ね?ボクだって海美ねぇが元に戻って欲しいから。』

そこで俺は美雨との"考えの違い"に気付いた。"海美に目の前から消えて欲しくない"俺と、"元に戻って欲しい"美雨。
俺だって元に戻って欲しいとは思っているけど、どこかで今"目の前に居る海美"に満足していたのかもしれない。
そりゃそうだよな、俺からすればどっちの海美も一緒なんだから…


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コメント

  • 漆湯講義

    皆さん本当に昨年はお世話になりました!!(`・ω・´)
    本年もどうぞ宜しくお願いします(。・_・。)ゞ
    >>フランちゃん大好き@あいす誤字脱字担当さん(超長いのでなんて呼べば???www)
    いつもながら速読有難うございますwww
    >>ミツキさん
    アケオメコトヨロです(。>ω<。)ノ
    一年は本当に早いものですね(´。-ω-)期待していただけるなんて本当に嬉しい限りです(。TωT。)少しでも期待に応えられるような小説を書けるよう、日々勉強です(`・ω・´)ゞビシッ
    >>あいすさん
    アケオメコトヨロです(。^ω^。)ww
    まだ元日ですからきっと遅くないですよww
    というか読んで下さるだけで嬉しいのでそんな事言わないでください(。>ω・。)b頑張りますッ(`・ω・´)ゞビシッ
    ホントたくさん本読んで勉強しなきゃですね(。TωT。)www

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  • あいす/Aisu

    あけおめです〜!(遅い)
    読むの最近遅くてすいません!
    _(:3 」∠)_
    今年も投稿頑張ってください!

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