海の声

漆湯講義

150.ボクらの教室

下駄箱を抜けると夏の日差しを反射する乳白色の廊下が俺の目を細めさせた。

開け放たれた窓からは、蒸し蒸しした潮風がゆっくりと出入りして、廊下の壁に貼られた掲示物をゆらゆらと揺らす。
夏休みが終わったら美雨とこの学校で過ごすんだよなぁ、なんて思うとなんだか不思議な気持ちになる。美雨は階段を足早に駆け上がると、俺が前に来た教室へと足を進めた。

『久しぶりだなぁーッ♪ココが教室だよッ海美ねぇ♪』

楽しげにそう言って並べられた机をポンと叩いては"これがボクの机!!それでぇ、ココが海美ねぇ♪"と美雨は小鳥のように教室を飛び回る。
海美はそれを嬉しそうに見つめ、教室をゆっくりと見回した。

「ん?ちょっと待てよ、お前学年違うだろ??なんで海美と一緒の教室なんだよ??」

すると美雨は"何言ってんの??"と言いたげに眉を上げる。

『なんでって教室ココだけだもん。』

「え…いや、他にも教室あったじゃん。」

『教室あっても生徒いなきゃ意味ないじゃん。』

俺は"あぁ…そういう事か"と妙に納得させられる。
だってここは"島"だもんな…そういえば同い年くらいのやつとか全然見なかったし。

『そんなんいいからちょっと机んとこ座ってみよーよ♪』

『ねぇ!!誠司くんも座ってよ♪なんか楽しくなってきちゃった♪』

「俺の机ってドコだよ…」

『そんなんいーから適当に座って!!』

そんな事をしていると、突然教室の後ろのドアが開いた。

『おぉ…美雨ちゃん、学校来たっとねぇ!!』

その声の主に目をやると、見覚えのある顔がこちらを見て微笑んでいた。




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