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海の声

漆湯講義

145.満ちゆく運命

その瞬間、抑えていた不安が涙となって俺の目から溢れ出してきた。

『えっ、どうしたの？？大丈夫ッ…？？』

「いや…ごめん。何でもないから…」

鼻の奥がツンとした感覚に包まれ、止まることのない涙が頬を伝い、顎の先で雫となって落ちていく。呼吸と共に情けない声が外へと漏れそうになる。自分でもどうして涙が溢れ続けているのかが分からない。

海美は居なくならない。そんな事信じる他ないってのに。

『もしかして私の事？？』

俺は"違うよ"と言おうとした。だけど頭の中の何かがその言葉を喉の奥へと引き摺り戻してしまった。この不安はなんなんだろう。確かに今そこに居る"海美の存在"を信じなきゃ。これからだって海美は居なくならない。そうだ、そうなんだよ！！

「約束…だから。」

…何言ってんだよ、俺。
そんなの海美にだって分かりっこないってのに。そうやって海美に責任押し付けて…最低だ。

「ごめん、今の無しッ！！ホントごめん。無責任なこと言って。」

すると海美はニコリと微笑んで『いいよ、約束。私は居なくならない。きっと元の身体に戻ってまた色々なトコ遊びいけるよ、きっと。』と夕陽に染まる髪を靡かせた。


「ごめんッ…ちょっと待ってて…」

俺はそう言って滝のように溢れ出した涙を風に散りばめながら木の陰へと走った。

そしてようやく木の陰へと隠れると、声を押し殺して胸の中の全てを流したのだった。

こめかみがズキズキと痛む。
こんなに泣いたのはいつ振りなんだろう…
海美になんて説明しよう…
俺は腫れた目を服で拭うと木の陰を出た。

「海美、ホントごめんお待た…」

俺は一瞬にして身体中から力が抜け落ちていくのが分かった…目の前の現実に理解が追いつかない。

「海美ーッッッ！！！！」

俺の咆哮にも似た叫び声がオレンジ色の森に響いた。

コメント

  • 漆湯講義

    ！！！！www

    0

  • あいす/Aisu

    ！？！？！？

    1
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