海の声

漆湯講義

143.そしてたどり着く

俺たちは階段を下りると再び元の道を進み出した。と突然美雨が鬱蒼と生い茂る草花や樹々の間へと進路を変えた。

「おいおいどこ行くんだよッ。」

俺がそう声を掛けると『いいからコッチ♪』と手招きをする。

『えぇ?!ドコ行くの?なんかやだー。』

「ったくしょんないよなあいつ。猿だ猿!!」

『ちょっと酷いコト言い過ぎだよー!!ふふ♪否定はしないけど。』

そんな事を話していると、いつのまにかかなり上まで登っていってしまった美雨が『おーい!!早くしてよぉー!!』と叫んだ。

俺たちは渋々美雨の登った道を辿っていく。その道はまさに"獣道"のようだったが、入り口付近の背の高い草を抜けると人の幅ほどの草の無い道が出来ており、足場はそれほど良くはないが、登山道と変わりない程に気をつければ登ることができる道のようになっている。

「大丈夫??」

『うん、けどちょっと私にはキツいかも。』

俺も運動なんてあんまりしてなかったから正直キツい。だけどそんなトコ見せられないから俺は余裕な素振りで海美に声を掛けつつ登っていく。

『もうすぐだからさッ♪これで20分の短縮っ♪』

やっとの事で追いついた美雨は、風呂上がりかのようにサッパリとした表情でそう言う。
やっぱりコイツ猿の遺伝子入ってんだろ…

『海美ねぇは大丈夫??けどコッチの道の方が疲れないハズだよ♪ほらもう元の道に出るからさッ。』

上を見ると美雨の言う通りガードレールが姿を現し、樹々がひらけている。そしてガードレールへと少し登ると舗装された道へと出た。

『あそこがオキワダ神社の入り口だよッ♪』

美雨が指差した先には大きな鳥居が構えており、その下から幅の広い石積みの階段が更に上へと伸びていた。



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