海の声

漆湯講義

97.報せ

『いってらっしゃい"1番風呂ッ"』

嫌味ったらしい美雨の声に俺の足が止まる。

「ったくなんだよ!!何か言いたげじゃんかよッ!!」

『べっつにぃー♪レディーより先にお風呂入るとか別に普通じゃん?ふふっ♪』

くそっ、どんだけ性格わりーんだよコイツ。さっき謝って損したわマジで。

「じゃぁ1番風呂どーぞごゆっくり!!」

『おっ、気が効くねぇ♪ありがとっ、そーゆーとこスキだぞッ♪んじゃ海美ねぇ行こッ♪』

『えっ、あはは…いいの?誠司くん?』

「いいよ、別に俺は順番なんて気にしないし。あ、服脱いでってね。…痛っ!!」

突然の腹部への衝撃に視線を落とすと、美雨の拳が俺の腹へ刺さっていた。と同時に美雨の大きな声が耳に突き刺さる。

『なんて事言ってんだよッッ!!セクハラ!!ヘンタイッ!!』

「バカ!!俺はそんな意味で言ってんじゃねーよ!!俺の服だけ脱いでかないと俺の母さんの心臓止まっちまうだろーがっ!!」

『それならそう言わないと分かんないッッ!!』

『仲良いねッ、"キミたち"♪見てて私まで嬉しくなっちゃう。』

自らを"別モノ"と捉えたようにそう言った海美の表情がどこか寂しげだったコトに俺の目が細まった。
気の利いた言葉は掛けられないけど、この時俺は思った。海美や美雨と"普通に遊べられたらな"って。

2人を浴室へと案内し、階段を少し登った時、背後に玄関の開く音がした。

『ただいまー。おっ、誠司、友達か?』

振り返った瞬間、父さんは玄関に並べられた美雨の靴を見て少し微笑んでいたように見えた。

「あっ、うん。そんなとこ。遅かったね。」

『初めのうちはしょうがないよ、それより…』

父さんはガサガサと鞄の中から一枚のコピー用紙を取り出すと、微笑みながら俺へと差し出してきた。
俺は玄関へと戻りその紙を手に取ると、そこには何も書かれていない真っ白なキャンパスが広がっているだけだった。

『裏を見てごらん。』

俺は玄関の照明でオレンジ色に染まった紙を裏返した。 

コメント

  • 漆湯講義

    (゚Д゚≡゚Д゚)!!www
    参考になれるのかどうか…Σ(。°ロ°。)ギモン

    兎に角ッ、私も頑張ります(`・ω・´)ゞ

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  • 漆湯講義

    コメント有難うございます!!(`・ω・´)ゞ全然早くないですよっ!!www
    私は思いついた時にまとめて書いて、定期的に更新できるように小分けして毎日投稿しているだけなので…(゚Д゚≡゚Д゚)
    きっとミツキさんもいざ書き始めればスラスラ浮かびます(。^ω^。)w

    0
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