海の声

漆湯講義

88.もしかして…

美雨はシラっとした表情で『知りたい?』と答え、横目で俺を見た。

「めっちゃ知りたい!!」

『めっちゃ知りたいか?』

「めーっちゃ知りたい!!」

『ふーん、良かったじゃん。』

っく…このヤローッ、完全に俺を舐めてやがる…

『セイジが教えてくれるなら教えるッ。』

「んまぁそれは構わないけど…だからって一言一句実況なんてしねーからな。」

『…うん。それでもいい。』

美雨はジッと海美の方を見つめている。
まぁ、確かに今は海美の存在を箸とおかずでしか知ることが出来ないんだ、ちょっと可哀想かもな。

俺がそんな事を思って美雨を見ていると、俺の視線に気づいた美雨の顔が仄かに染まった。

『ジロジロ見んな気持ち悪いなぁ!!』

「お前も海美のこと見てんじゃん。」

『だからってセイジは男だろっ!!か弱い少女をジロジロ見るなんてヘンタイだぞ!!』

「わかったわかった、じゃぁ、か弱い少女らしく女らしく振舞ってください。」

『ボク、女らしいもんッ!!』

"ボク"って言ってる時点でいかがなもんかな…

「あーそーだな、"顔は"可愛いもんなっ。」

『…うるさい』

嫌味っぽく言ったつもりなのに何だよこいつ。

『ふふ♪仲良いねっ♪私も美雨ちゃんとお喋りしたいなぁー♪』

「別に仲良くねーしッ、それは…そうだよね。」

ふと横を見ると飼い主の合図を待つような目で俺を見る美雨がいた。

「俺らが仲いーねって、それとお前と喋りたいって言ってる。」

『別に仲良くないよッ!!ボクも海美ねぇと喋りたいッ!!…そうだ!!セイジ何とかしてよ!!』

「無茶ゆーなって…あ…」

俺はふと首から下げたネックレスを美雨の首に掛けた。


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