海の声

漆湯講義

86.食べます…

「つってもなにやりゃいーんだろなぁー…」

頬杖をついて考える俺に美雨の体重がのしかかる。

「ってぇ、なんだよ!降ーりろっ。」

『ねぇ!海美ねぇ今何してんのッ?』

「何ってフツーだよ。」

『フツーじゃわかんないだろッ!!もっと詳しく教えろって!!』

「…お前のバカな質問に苦笑いしてる。」

『はぁ?ンなわけねーだろっ!!もっと詳しくッ!!』

ズンズンと俺の上で動く美雨に「だったらまず降ーりーろッ!!」と背筋を伸ばす。
俺の背中をズルズルと美雨が滑り落ちた時部屋のドアが開いた…

『あらやだ!!ゴメンなさいねぇー…』

デクレジェンドのきいたその声と共にスゥーッと静かにドアが閉まる。

「ち、違うって!!勘違いだ!!ってか勝手に開けんなよっ!!」

俺は慌ててドアの向こうに叫んだが、"迷惑なオバサンは"やけにテンションの高い不快な声で『キリになったらご飯おいでぇー♪美雨ちゃんのブンあるからぁー♪』と答え足早に階段を降りて行った。

「おい、美雨…どーしてくれんだよ!!」

『えっ、ナニが?』

「ナニがじゃねーよ!!変な勘違いされちまったじゃねーかよっ!!」

『嬉しいクセにぃー♪』

背中にツンツンと刺さる指が妙にイラつく。
すると海美が引き攣った笑顔で言った。

『あはは♪愉快な…お母さんだねっ!!あ…私もお腹空いたから帰ろーかなぁー!!』

マジあのババァ…そんな怒りが込み上げると同時に、ふと1つの疑問が生まれた。

「あれっ…そういえば海美ってご飯どーしてんの?」

『食べるわけねーだろ、ばか。』

『えっと…ごめん、何でか分かんないけどお腹は減っちゃうから家の冷蔵庫開けてこっそり食べてますッ…』

海美が冷蔵庫を漁る姿を思い浮かべて笑ってしまいそうになるも、グッと我慢した後、俺は振り返り最強のドヤ顔で言ってやった。

「食べるってよ、ばか美雨っ♪」

キーキー言いながら怒る美雨を軽やかにスルーして、「それなら海美の分もご飯持ってくるよ♪」と俺は清々しい気分で部屋を出た。



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